ローズの回想2
私、ローズがメイドとしてお勤めする日が来ました。
行くな!としがみつく弟たちを何とかなだめて振り切り、この前お家へいらしたお役人のネス様と、馬車に乗せて貰ってお城へやってきました。
よくわからないですけど、近くで見るお城は遠くから見えたお城の雰囲気とは違って、優美で綺麗なお城というより、ゴツゴツとした石を組み上げた、戦うためにできた要塞という感じです。
大きな城門をくぐり、また大きな正面扉を迂回して、裏口まで来ました。
裏口を開けて待ってくださっていたのは、メイド長のマーガレット様でした。
マーガレット様のメイド服にはプリーツ以外の皺はなく、背筋はピンと伸び、切れ長の目は鋭く、髪の毛は一本もこぼれることなく後ろに纏められていました。
第一印象はこの人は「怒らせてはいけない人」だってことでした。
「ローズさんですね。良くいらっしゃいました。私がメイド長のマーガレットです。よろしくお願いします。」
マーガレット様は私に静かに丁寧なお辞儀をしてくださいました。
私も慌てて
「ローズです。よろしくお願いします。」
と、お返事し、勢い良くお辞儀しました。
「元気でいいですね。ご挨拶もとてもお上手です。ご両親の躾が良かったのでしょう。」
そう言うと、マーガレット様の唇が少しだけほころんだように見えました。
私はお父さんとお母さんが褒められていることに嬉しくなり、ニッコリ笑ってしまいました。
マーガレット様は私を連れてきたネス様に向き直り
「ネス様もご苦労様でした。ヨハン様より、お帰りになられたら、旦那様の書斎まで来るようにとお言付けを承っております。」
それを聞いたネス様は
「おっと、ヤバい。」
と、言って急いでお城の中へ入っていきました。
「それでは私たちも行きましょうか。これからあなたの先輩になる方々にご紹介しなければね。そして、あなたの部屋にもご案内しますよ。」
そう言って、私を先導しながら、マーガレット様は廊下をしずしずと足音を立てずに歩くのでした。
裏口の使用人用の廊下は石で囲まれ重厚でそして薄暗く、私はただでさえ緊張しているのに圧倒されてしまいます。
大きめの扉の前にマーガレット様が立つと、静かに素早く扉を開きました。
部屋の中には私より十歳は年が上のように見えるメイド姿のお姉ちゃんたちが、休憩時間なのかお茶を飲んでいました。
その中に私と年が変わらないように見える子もいました。みんな綺麗なおそろいのメイド服を着ています。
「今日からあなたたちと同じくメイドとして働くことになった、ローズさんです。ローズさん、あの子たちが、あなたのお仕事の先輩になる方々ですよ。皆さんにご挨拶を。」
と、マーガレット様はおっしゃいました。
「今日からメイドとして働かせていただきます、ローズです。皆さんよろしくお願いします。」
そう言って、私は勢い良くお辞儀をしました。
「皆さんローズさんの面倒をよろしくお願いしますね。では、リサこっちに来て。」
マーガレット様がそういうと私と同じくらいの年の子が
「はい。」
と、返事をしてトコトコとこちらにやって来ました。
「リサ、ローズさんをローズさんのお部屋に案内して。そしてメイド服の着方を教えてあげてね。最初なんだから、着る手伝いもしてあげるのよ。あなたはこれで一番下のメイドではなくなったのですから、先輩としてしっかりね。」
それを聞いたリサと呼ばれた女の子は引き締まった顔で
「はい」
とうなずいていました。
そしてマーガレット様は先輩方に向き直り
「それでは解散です、各自の仕事に戻ってください。」
と言い、そして私に
「さあ、リサについてお部屋に行きなさい、部屋の使い方や分からないことはちゃんとリサに聞くのですよ。きっと答えてくれます。着替えが終わったら、またリサと私のところへ来なさい。私はこの談話室で待っています。」
そう言ってリサさんと私を送り出してくださいました。
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