234.アベル君と、キメラ生物の構造。
234.アベル君と、キメラ生物の構造。
みのさんの解剖は済んだので、次は鵺に取り掛かろうか。
けど、あれの解体って、大きさからいって一仕事だぞ。
サルの頭、狸の胴体、虎の足、蛇のしっぽ。
しかし、頭と胴体と4本足がくっ付いているのは分かるんだ。
頭が付いている蛇はしっぽになっているのは、どういう構造なんだろう?
思考する機能が、二つあるのは便利なのか?
でも、人間でもシャム双子って例もあるからな。
そうだな、別に不思議でもなんでもないのか。
内臓を共有していますよ、ってだけだからな。
神経系統は片方が司り、自分に近しい部分だけ他の頭脳が司る。
こんな感じなのかね?
知らんけど。
さて、とりとめのないことを考えてないで、魔石を取り出さんとな。
俺は動物園で見たアフリカゾウくらい鵺の身体に近づく。
鵺は足を俺の方に向け横たわっている。
んでば、やりますか。
俺は鵺の胸にナイフを差し込み、一気に腹まで掻っ捌く。
腹から内臓がでろでろと流れ出てくるのを眺めていると、さすがに気分はよろしくない。
すると、「シャッ!」と言う音と共に、しっぽの蛇が俺に襲い掛かってきた。
俺はとっさにブレインブーストを掛け、すんでのところで蛇の牙を避けることが出来た。
とは言っても、もう蛇自体、息も絶え絶えといった感じのゆっくり具合、俺は剣を抜いてサクッと頭を切り落とした。
瀕死の状態で、蛇は虎視眈々と復讐の機会を窺い、俺が来るのを待っていたわけか。
大したものじゃない。
でも、ここの魔物はシャレにならんて。
頭良いもの。
食い物が良いのか?吸っている魔素が良いのか?
事実は謎のままなんだろうけど、他のダンジョンと魔物たちの差異がハッキリしているのは、原因が何かあるんだろうな。
ホント、分からんけど。
たしかに実入りはいいけどさ。
でろでろの内臓をかき分け、腹の中を覗く。
生臭いから嫌なんだが、やらなければ目的のものが手に入らない。
俺はポケットの中から、小型の明かりの魔道具を取り出し、腹の中を照らした。
胸に近い肺の入口の軌道あたりに目的のモノがきらりと光る。
俺は肺の近くまで体を移動し、肋骨をガストーチ魔法で切断して排除し、目的のモノに手を伸ばす。
やはり、図体のデカい魔物は魔石もデカい。
手袋をはめた拳よりも大きいものが取れた。
ああ、肋骨を切断するのに、剣やウォータジェットを使わなかったのは、剣だと取り回しが悪いし、ほかの臓器を傷つけると、またでろでろ出てくるでしょ。
ウォータジェットはこういうのに持って来いなんだけど、水浸しになってしまうし、体液と混じって身体も汚れてしまうんでね。
ナイフ持っていたでしょって?
あのナイフじゃ、切れないんだよね。
物は良いものだけど、大型動物の肋骨だからね。
鋼で出来た普通の小刀程度じゃ何ともならんのよ。
え?他のパーティ?
そりゃそれぞれ創意工夫してやってんじゃない?
ダンジョンに入れば、アマゾンが宅配してくれるわけでもないだろうしさ。
取り回し悪くても、剣で切ったり、戦斧で折ったり。
限られたリソースを最大限まで生かす、これよ。
他のパーティの道具を見て、便利そうだなって思えばその時考えればいい。
ただそれを仕入れれば、自分で背負って歩かなければならない、そこまでちゃんと考えなきゃね。
さてドロップさんは有りますかねぇ。
俺は肺付近を照らし、また腹部の方まで照らしてみる。
なんか、ゴツゴツしたモノが腹の上、背骨あたりにあった。
「胆石かな?」
俺は軽口をたたきながら、その塊を引っ張り出す。
何だろう?黒光りしているこれ?金属だよね。
「リーサ、これなんだかわかる?」
「あらっ!アベル、良いの拾ったじゃない。なにかはお楽しみに取っておいて、もう一個くらいほしいわね。」
何か含みを持たせるな。
「そう?ならここらへんのを狩らなきゃな。」
「そうね、借りつくしてしまいなさい!」
「そこまではしない。めんどいし。」
「あんたって、ときどき冷めて乗り悪くなるわよね。」
「お前も極端なんだよ。」
「あら、そうかしら?私はあんたの知的好奇心を刺激してやっているだけだけど?」
「ああねぇ~、さようで。でも、もう一個で何かできるなら、やっぱ狩らなきゃ駄目か。」
「そうしなさいよ、良い事あるわよ。」
「よっしゃ!魔法を解禁したんだ、それが何処まで通じるかも含めてやったるか!」
「その意気よ!」
そう言って、俺とリーサはダンジョンの中を、魔物の姿を探し彷徨った。
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