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225.アベル君とギルドの裁定。

225.アベル君とギルドの裁定。




 フレイさんがいつものように腰を揺らしながら入ってくる。

 いつ見てもキモい。


 「アベルちゃんたち、いらっしゃい。あら、今日はアンネちゃんたちがいないのね。」

 「騎士団の診療所で、怪我した騎士に治癒魔法をかけて人体実験さ。」


 「あら、酷い言い草。アベルちゃんらしいわね。でもあながち間違ってないかも。」

 フレイヤさんはいつもの鉄扇で口を隠して薄く笑った。


 「これでそろったな。ソフィア、部屋の周りは?」

 「誰も居ません。」


 「よし、いいだろう。初心者ダンジョンでの出来事だったな、坊主。」

 「どこから話をする?段階踏んで全部?」


 俺がそう言うと、ギルおじさんが口を開く。

 「その方が分かりがいいわな。たのまぁ。」


 「うん、それは馬車を降りたところから始まったんだよ。」

 俺はそう話し始めた。


 「って、アレックスにあとは任せて、僕達は城に戻ったのさ。」

 俺はこう言って発言を締めた。


 「うん、よくわかった。タグも持ってきたんだろ?それを広げてくれ。」

 そう言われたので、俺はポーチに入っていた強盗達のギルドのタグをテーブルに並べた。


 「ホンモンだな。ソフィア、これ持って行ってこいつらの書類を持ってきてくれ。」

 「はい。」


 そう言ってまたソフィアさんは出て行く。

 忙しいね、痩せそうだ。


 「裸で縛っておいてきた。ふふ、私好みの復讐の仕方だけど、なかなかできるものじゃないわよ。流石化物のアベルちゃんね。」

 フレイヤさんがとんでもない言い草を放った。


 「なんだよ、さっきから異常者とか化物とか。」

 「受け入れろ。本当の事だろ?10歳でこの手際なんてないんだわな。」


 ギルおじさんが口を挟んできた。

 「まあ、僕の人格否定はいいからさ、ギルドとしてはどうなの?冒険者になるのに審査とかはないからこういう問題が起こるんじゃないの?」


 「審査があると、冒険者のなり手がいなくなる。ノヴァリス王国がそれでいいならそうするんじゃないか?」

 「なるほどね、そういう言い草か。そしてギルドも組織として成り立たなくなるってわけだ。国営で魔石掘りすればコストは下がるかもしれないね。」


 「いや、そういう事言ってんじゃないんだよ。現実問題のこと言ってんだ。坊主はすぐ大人を脅すから質が悪いぜ。」

 「脅されるようなこと言うからだろ。でもさ、これも実際問題だけど、領主の嫡男パーティーが襲われるって、大問題じゃないの?僕が口にするのもはばかれるんだけどね。」

 

 「だから、こうして膝突き合わせて状況の打開策を考えようってんじゃないか。」

 「それはギルドの仕事でしょって。僕らは報告だけだよ。」

 

 「ギルマスぅ、こういうの口説くにはアベルちゃんじゃ勝ち目ないわよ。頭良いし口は立つし。」

 「分かってんだよ、でもここで坊主に引き下がってもらわなきゃここの存続も危ういだろ?」


 「あの、そういうの僕がいないところでしてくんない?」

 「坊主よう、ローランドたちはどう言ってんだ?」


 「父さんは理性的だよ。でもギルドの責任については何も言っていなかったかな?」

 「そうか。」


 ギルおじさんは露骨にほっとした顔をした。

 「でも母さんがね。」


 「アリアンナがどうした?」

 「殺ったんでしょ!?殺ったのよね!?アベル!!ってすごい剣幕だったんだよ。僕が裸でおいて来たって言ったら、呆れていたけどね。」


 「あー、アリアンナの気性ならそうだろうな。」

 ギルおじさんは天井を仰いでそう呟いた。


 「そりゃそうよ、そいつが言ったのは全世界の女性への冒涜よ」。

フレイヤさんも憤っている。 


 「書類をお持ちしました。」

 ソフィアさんがそう言って入ってきた。


 「あら、いいとこに来たわね。アベルちゃんたちが、例の盗賊にこんなことを言われたんだって。」

 そういうと、フレイヤさんはソフィアさんに俺が話したことをなぞって教えた。


 「アベルさん、なんでその場で殺ってしまわなかったんですか?」

 ソフィアさんが話を聞いてすぐの発言がこれだ。


 「即、殺してしまったら、アンネやローズが感じた恐怖や恥辱に割りが合ないと思ったんだよ。裸に剥かれたという恥辱にまみれ、魔物のエサにされるかもしれない恐怖。それくらいかなって。あとは生かしても仕方ないけど、俺たちが始末するよりはね。って感じで。自分でも気違いじみているとは思ったけど、あの時はどうしてくれよう、しか考えていなかったからね。で、連中帰ってきた?」


 「いや、二日経って帰って来たという報告はないわね。アベルちゃん、おたくの騎士からの報告もないんでしょ?」

 フレイヤさんが俺に尋ねる。


 「入り口も出口も一本で、うちの騎士が見たとは報告が無い、しかも担当は切れ者アレックスだから抜かりが無いとなると、もう逝っちゃってんじゃないかな?」

 俺がこう言うと、ギルおじさんが口を開いた。


 「坊主、さっきお前は僕たちが始末するよりはって言ったよな。しかし、結果はこれだ。それだけは肝に銘じておけよ。領主家は人の血で手を汚さなければならないことも多くあるだろう。しかし、人の命は軽い物じゃないんだからな。」


 「ありがとう。僕にはそう言って叱ってくれる大人が必要なんだよ。僕は城で決して甘やかされて育っていると感じたことはないんだけれど、爺ちゃんも父さんも母さんも、みんな心も体も強くてね。僕もその気になってしまうんだ。フレイやギルおじさんの様な楔を僕の行動や思考に掛けてくれる人が居るのは、本当に助かるんだよ。」

 「なんでぇ、しおらしいことを言いやがって。」


 そう言ってギルおじさんは鼻を掻いた。

 「あら、私はその楔にはならないの?」


 フレイヤさんは腰を捻って横座りの様になり、俺に流し目をする。

 やめろ、キモイ、だからだろ。


 「フレイヤさんは、フレイのお兄ちゃんだからね。なるんじゃない。」

 俺はそう言ってごまかした。


 「でだ、今回の連中、せっかく書類を持ってきて貰ったが、話を聞いて読む気もしなくなった、この連中のことな、アベルのパーティーを強盗しようとして襲い、逆にアベルたちに返り討ちになった。ダンジョン内の窃盗、強盗行為は厳罰ということに基づき、アベルのパーティーは正当防衛によりペナルティは無し。強盗達はダンジョン内で行方不明なった、ということでこの話は締めだ。」

 ギルおじさんがいきなり裁定を下した。

 それを聞いて。


 「いいの?」

 俺はおじさんに聞いてみた。


 「なんだ、ペナルティが欲しいのか?」

 「うーん、そう言うわけじゃないけどね。」


 「なら、もう黙っとけ。この話はこれで終いだ。ダンジョン内の面白い話でもしていけよ、坊主。」

 「そんな面白い話はないかも。中級ダンジョンはいろいろあったよね、フレイヤさん。」


 「そうねぇ…」




そうしてしばらく俺たちは談笑してから、ギルドを後にした。

 


読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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