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224.アベル君といつものギルド長室。

224.アベル君といつものギルド長室。




 もう一つ報告を行わなければならない場所がある。

 そう、冒険者ギルドだ。


 もう会話劇は飽きたころだろうと思うけど、付き合ってもらおうか。

 あらかじめ先方には先触れは出しておいたから、ギルおじさんが不在ということは無いと思う。

 

 自惚れるわけじゃないけど、領主の嫡男を無碍にできるほど、この領地においてギルドの力はヴァレンタイン家より強くはない。

 ま、敵対することもないけどね。


 いつものように馬車に乗ってギルド前までやってきた。

 一緒に来たのは、フレイとローズだけ。


 3歳の頃は、乳母のマリアさんも一緒に来たけど、俺も大きくなったものだ。

 馬車が停まり下車すると、これも何時もの様にソフィアさんが駆け寄ってくる。


 「アベル様、ようこそおいで下さいました。」

 そう言って丁寧にお辞儀する美人のエルフ。


 

 ギルおじさんはまだ手を出してないのかな?

 エルフは若いままだと言っても、自分は歳を取るんだからさ。


 色々と使い物にならなくなってからじゃ遅いんだっての。

 って、フレイヤさんの方が好みとか言ったらそれはそれで怖いね。


 「こんにちは、ソフィアさん。ギルおじさんは元気?」

 「それはもう、アベル様の手助けもあって、ギルド内の改革も進みましたから、元気が有り余ってるみたいですよ。」


 「そう、さっき思ったことは杞憂だったかな?」

 「はい?」


 100歳オーバーのエルフが可愛く小首を傾げてこちらを見る。

 「ううん、なんでもないよ。行きましょう。」


 俺は慌て言葉を捻り出した。

 「むっ!」とか言う音が近くで聞こえたような気がするが、無視だ。


 ソフィアさんは一瞬怪訝な顔をしてから、すぐに笑顔になり

 「はい、ではこちらにどうぞ。」


 そう言って、ソフィアさんはギルド長室まで案内を開始した。

 周りは冒険者ばかり。


 当たり前だ、ここは冒険者ギルドだからな。

 そして相変わらず人混みは酷いし騒がしい。


 だから、俺たちの周りの俺たちに関わる騒音も酷いものだ。

 もう慣れつつあるけどね。


 俺が至宝だったり、ローズが可愛かったり、フレイが凛々しかったりって話はもう聴き慣れたよ。

 ギルド長室に行くのも慣れてしまった。

 

 実際はソフィアさんの案内もいらないくらいに。

 もう何回も来ているしね。


 ソフィアさんだってそれは知っているだろう。

 しかし、俺たちをちゃんと迎えに来る、それが大人の仕事と言うものだ。


 冒険者たちの並ぶカウンターの脇を抜け、いつもの昇降機に乗ってギルド長室のある階へ。

 位の低い冒険者には敬意を、高い冒険者には愉悦を与える赤い廊下の絨毯の上を歩き、重苦しい観音扉の前に来た。


 ソフィアさんが扉を開け、一言。

 「お連れしました。」


 そう言って俺たちの入室を促す。

 相変わらず金がかかっているにも拘らず、地味な部屋だ。


 その地味な部屋の主が、その大きい体躯に似合ったデスクに収まって、似合わない事務しごとをしていた。

 「おう!坊主!ちぃっと待ってくれ。これだけ上げるから。」

 「こんにちは、ギルおじさん。ごゆっくり。」


 俺はそう言うと、通されたソファに座った。

 ローズはその後ろに用意された簡易な椅子をソフィアさんに差し出されたので、それに座る。


 フレイは起立しっぱなしだ。

 「護衛は立っているのが当たり前です。」


 だってさ。


 「よし!ソフィア、ここのは上がったから持って行ってくれ。」

 そう言うと、重厚な椅子からギルおじさんは立ち上がり、俺たちを見て相好を崩す。


 「おう、待たせたな。ソフィア、ついでにフレイヤも呼んでくれ。」

 「はい、畏まりました。」


 そう言うと、ソフィアさんは部屋から出て行った。

 「ダンジョン攻略はどうだ?聞くとやるとは違うだろ?」


 「そうだね、襲ってくるのが魔物だけじゃなかったからなおさらかな。」

 「今日は、その話だったな。まあ、フレイヤが来るまでの話は待てや、な。」


 「うん、そうだね。」

 「そこの二人も入っているんだよな?嬢ちゃん、慣れたかい?」


 「そうですね、戦闘はなんとか。解体が…」

 「ああ、そうか。でもそれも仕事だからな。こなさないと冒険者として、報酬も栄誉も得られない。頑張んないとな。」


 「はい。」

 ローズは静かに返事をした。


 「おう、おめぇはフレイヤの弟だったな。フレイだっけか?」

 「はい、そうです。」


 フレイは直立のまま返事をする。

 緊張しているようだ。


 あまり関わりがないとは言え、相手は元A級冒険者の有名人だ。

 緊張するのも仕方がない。


 「タンクなんだろう?坊主には盾持ちはいらないと思うが、嬢ちゃんと組んでるのか?」

 ギルおじさんの質問に、フレイが答える。


 「アベル様が臨機応変にフォーメーションを組みますので、どちらが中心という事はありません。」

 そつのない、優等生の答えなんだろうが、俺もそんな臨機応変ではない。


 どっちかって言えば、行き当たりばったり。

 「そうか、坊主の指令におめぇも臨機応変に対応できているってこったな。大したもんだ。」


 「いえ、私はそのような者では決して。ご隠居様の指導もやっとという体たらくで。」

 俺は3歳から爺ちゃんに師事して優しく教わったけど、フレイはいきなりキツイ指導だったからな。


 「おめぇ、何言ってんだ。エドワード様の指導なんて誰でも受けられるもんじゃないんだぞ?そこの坊主を基準に考えているから、そんな考えになるんだな。」

 などとギルおじさんは失礼なことを言う。


 「また僕を異常者のように言って。」

 「違うのか?」


 「他人よりちょっと魔法と剣が使えるだけさ。」

 「それが異常ってんだよ。魔法と剣を一緒に使える奴なんて、どこの世界にもいなってんだ。」


 「ここに居るじゃないか。」

 「異常者がな。」


 「ちぇっ。」

 俺は歳相応の舌打ちを打った。


 「なに?楽しそうじゃないの。」




 よし、役者がそろったな。



ここまで読んでいただき、有難うございます。

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