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223.アベル君と冒険者の裁定。

223.アベル君と冒険者の裁定。




 俺が口を開く前に食事しながら父さんが口火を切った。

 「アベル、初心者ダンジョンはどうだった?」


 父さんの声は穏やかで、顔はいつものとおりハンサムな笑顔だ。

 「ダンジョンの魔物自体は何とかメンバーだけで対処できるよ。僕も魔法を使う必要が無かった。アンネも援護しなかったしね。」


 「そうか、それは重畳。」

 果実酒を飲みながら、爺ちゃんが頷く。


 言うならここか。

 「でもトラブルはあったんだ。」


 「そうだろうね。僕も今日はアベルたちは泊りだと思っていた。それが帰ってこうしている。何があった?」

 ご領主様はさすが鋭い。

 「アベル、気負うことはないわ、言ってごらんなさい。ダンジョン内でのトラブルはよくあるもの。それが魔物相手か人間相手なのかに状況は変わるけど。」


 母さんが俺の発言を促した。

 この人たちはいつもそうだ。


 俺のことは全肯定、決して甘やかしているわけじゃないんだけどね。

 「実は、強盗に遭った。田舎から来たと思われる、若者たちのはねっかえりだったよ。ただ、そいつらの素行と発言があまりに悪くて、許せなかった。食事中に話すのも嫌な内容なんだけど、聴いてね。」


 俺がそう言うと、大人三人は一斉に頷いた。

 「はじめ、ダンジョンの入口前で絡まれたんだ。ヴァレンタイン家の紋章が付いた馬車から降りてすぐだったのに、僕らが領主の一族だってことも知らなかったんだろうね。俺が名乗りを上げたら、担当の騎士が来てすぐにとりなしてくれたんだ。あの騎士の名前、僕は知らないんだけど、なんていうんだろう。凄く有能だったよ。」


 「30前くらいの男だったかい?」

 「うん、そう。切れ者って感じのハンサムさんだったよ。」


 「ああ、それはアレッサンドロだよ。通称アレックス。今度名前を呼んであげるといい。きっと喜ぶよ。」

 父さんが俺に教えてくれる。

 「アレックスね、覚えておくよ。でもなんで初級ダンジョンの警備なんてやらせてんの?」


 「チャールズが決めたんだけど、奴は有能だからね。器用貧乏とも言えるが、使い勝手がいいみたいなんだ。それで、チャールズもついついいろんなところに回してしまうようだ。うーん、やっぱりチャールズを止めさせないとな。」


 「そうだね、その方が良いよ。でね、その時はそれで終わったんだけど、ダンジョン内部でまた絡んできてさ。その時の言い草が、装備と女をくれ。ガキでも穴があればいいって抜かしたんだ。」


 ガン!!

 爺ちゃんが、テーブルを盛大に叩いた。


 「アベル、其奴らは処したのか?」

 爺ちゃんは怒りを抑えつつ俺に聞いてきた。


 「その時、僕は手出ししなかった。一番怒っていたアンネに、ファイアーボールで攻撃させて撃退したんだ。」

 「あなたがやればよかったんじゃないの?」


 母さんが聞いて来たので

 「アンネも連射が使えるからね。連中に数発当てて、這う這うの体で逃げ出していったんだよ。これで終わったと思った僕の認識が甘かったんだけどね。」


 「まだ絡んできたのか。」

 ポツリと父さんが言った。


 「そう、僕らは大ネコと戦っていたんだ。初級ダンジョンでは強敵だったから夢中だったよ。倒してホッとしたところを狙ってたんだろうね、アンネは頭を掴まれ押さえられた。」


 「うむ。」

 爺ちゃんは腕を組み、目を閉じ唸った。


 「またその時の言い草が酷かったんだよ。言いたくないけど全部言うね。」

 「大丈夫だ、全部言っていいよ。こう言う奴は一定数居るんだ。驚くことじゃない。」


 父さんは、俺が言いやすい様に促してくれた。

 「分かった、言うね。母さん気分悪くしないでね。」


 「いいわよ、私も冒険者だったんだから、それくらい目の当たりにしたわよ。」

 「うん、アンネが捕らえられた時に、ローズが暗器の投擲のモーションに入ろうとしたんだよ。それを見た奴がね、このガキの首の骨くらい折れる、殺しても温かければ犯れるって言ったんだよ。もう、僕はその時点で駄目だった。」


 「なんですって!!アベル!!あんた、そいつ等どうしたのよ!殺った!?殺ったんでしょうね!?」

 母さん、冒険者に戻っていらっしゃいますよ。


 「最終的にはそうなったんじゃないかな。」

 俺が言うと、父さんが聞いて来る。


 「最終的にはとは?」

 「うん、酸素の魔法で気絶させて、装備全部剥いて裸にしてさ、手足を縛ってダンジョンに置いてきたんだよ。」


「はぁ。」

俺の話を聞いた母さんは、小さくため息をついた。


 「あなたたちが手を下さず、ダンジョンに任せたのね。まったく、あなたらしいわ。」

 さっきまでの怒りが一瞬で抜けたように、あきれたような声で母さんが言った。


「まだ生きているかもしれないし、ことによったら他の冒険者に助けられるってことも考えられるのか。」

父さんは、ネガティブな要素の発言した。


領主だからね、僕らにとって悪い状況も考えるさ。


 「と、言うことで、奴らがもし生きて這い出てきたら、アレックスが捕縛するって言っていたから、その後の処置はお願いしますね、父さん。」

 「アベル、それも見込んでいたんだな?」


 爺ちゃんが楽しげに言った。





 そして父さんは渋い顔をするのだった。




ここまで読んでいただき、有難うございます。

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