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221.アベル君と欲と悪意。

221.アベル君と欲と悪意。




 「すげぇえなぁ、大猫やっちゃうなんてよぉ。金持ちの青瓢箪と違うんだなぁ、おめぇはよぉ。」

 ああ、もうこいつらは既に冒険者ではないな。


 呼称:強盗、次からこれだ。

 強盗はアンネの頭を鷲掴みにしたまま、俺に汚い言葉を投げかける。


 俺はそれに答えようと前に出た。

 それを見たアンネが、大きく汚い手をはずそうと藻掻くが、10歳の女の子の力ではかないようがない。


 しまいには、頭から手を外し、アンネが逃げようとしたところを狙って、髪の根元を掴みやがった。

 痛みに引っ張られ、たたらを踏んだアンネは、そのまま野郎の腕の中にすっぽり収まってしまった。


 リーサは!?って、思うだけ無駄だ。

 あいつは人間のこの手の争いには一切手出ししない。


 なぜなら、神だからだ。

 どちらの見方もしない。


 ただ、気まぐれで助けてはくれるけどね。

 だから、この状況も俺たちだけで打開しなきゃな。


 「要求はなんだ?」

 俺は強盗に向かって問いかけた。


 「なんだよう、案外バカなのかぁ。ダンジョンの入り際に行っただろうよぉ。女と装備だ。いや、さっき怪我させられたからよぉ、ここまでの魔石と、財布も貰おうか。」

 この言葉に後ろにいた仲間たちの下品な笑い声をあげる。


 俺の後ろで、ローズが構える。

 「おっと、綺麗な姉ちゃん、妙な真似はするなよ。このガキの首ぐれぇ、あっという間にポキッ!よ。あとで楽しんでやっからよぉ、まあ、殺しても温っけぇうちなら犯れねぇこともねぇけっどもよ。はっひぃひっひぃ!」


 

 何かを思い出したのか、気持ち悪い笑い声をあげる強盗首領とその手下たち。

 こいつ!!もしかして死姦もやったことあんのか!?

 

 クソが!だとしたら、やはり生かしてはおけない。

 「わかった、もうしゃべるな。ほら、これが欲しいんだろ?」


 俺はそう言って、ミスリルの剣を連中に良く見せる。

 「良い剣だろう?ミスリルだ。」


 「ああ、やっぱよぉ、領主ってぇのは金があんだなぁ。ちっとバカ短けぇがだいじだろう。」

 ミスリルの剣に引き付けられた強盗がしゃべりやがる。


 手で振り回して見せてから、鞘にしまった。

 「よ、よし!それをこちらによこせ。他の2人も、武器をこっちに投げるんだ!!」


 物欲に支配された強盗は、性的興奮から解き放たれ、俺たちの武器を欲しがった。

 俺は鞘を留めていたベルトを外し、それごと強盗の方に放り投げた。


 強盗は、アンネを抱いたまま剣に手を伸ばす。

 しかしそれでは地面に近づけないので、アンネの髪だけ掴んで手を伸ばした。


 アンネと、強盗の頭の距離は俺が思うよりも開いた。

 今だな。

 

 俺は強盗の頭部周辺を魔力固定により囲む。

 そして、酸素を充満させた。


 下卑た笑いを浮かべた奴は何も気づかない。

 そして俺の剣に手を伸ばしたその時、奴は苦しみだした。


 奴の仲間たちは何が起こったかわからない。

 なぜならそいつらも苦しんでいるからだ。


 俺は連中の頭部周辺を一旦酸素で満たし、その酸素を消した。

 そして連中の頭部周辺は真空になったのだ。

 酸素を俺は作れる。

 ならば消すことも可能だ。


 そして10秒もかからず連中は皆失神した。


 なぜ殺さなかったかって?

 あまり肯定的に言いたくはないんだけどさ。


 あそこで殺したら、つまんないだろ。

 ドSとかじゃねーし。


 連中の言葉で分かったじゃん。

 今までも碌なもんじゃなかったんだよ。


 殺さないのかって?

 いや、殺すけどね。


 それは俺たちじゃないって話。

 いや、間接的には俺たちかな。


 「フレイ、ローズ。こいつらの装備全部むいて一か所に固めて。」

 俺の言葉を聞いて、フレイもロ-ズも一瞬固まったが

 

 「はい。」

 と返事をしてすぐ行動に移った。


 「それが済んだら、手足全部縛ってね。」

 それからしばらく過ぎ、ローズとフレイが連中を裸に剥いて手足を縛り転がしていた。


 俺はその間アンネを抱きしめ、メンタルケアだ。

 連中の装備品もギルドのタグ以外は纏めてある。


 一応タグだけは回収して、ギルド長に報告しようと思ってね。

 俺はその装備品に向けて、トーチ魔法で火をつけ続け、しまいには装備品自体が勢いよく燃え始めた。


 「どうしようかな?」

 「どうなされたのですか?」


 俺の不意な言葉に、フレイが聞き返してくる。

 「なんだか疲れちゃって、先に行きたくなくなってさ。」


 「ああ、そうですね。余計な気を張ってばかりでしたから。」

 「私もなんだか嫌な気分です。」


 ローズも話に入ってきた。

 「アンネも休ませたいし、ここは一回出ようか。」

 

 俺がそう言うと

 「そうしましょう。」


 「そうですね。」

 と、二人は思い思いに返事をした。


 そんなときに、ごそごそと音がした。

 「ああ、目を覚ましたか。」


 「こいつら、どうするんですか?」

 フレイはまともでいい奴だね。


 「ここに置いていくが?」

 「裸で、ここにですか?」


 「そうだ、ネズミも猫も、新鮮なエサが欲しいだろうからな。」

 「アベル様…」


 そう言ってフレイは頭を振る。

 「フレイ、これはお願いでもあり、命令でもある。よく聞いてくれ。」


 「はい。」

 フレイは神妙な顔つきになり、俺の言葉に聞き耳を立てた。


 「俺は自分の力を持て余し、これからもこのようなことをするかもしれない。その時の行いが外れているときは遠慮なくいってくれ。俺には抑止力が必要だ。それをお前に頼みたい。」

 「私に、そのような勤めが全うできるとお思いで?」

 

 渋い顔をしながらフレイは俺に聞いてきた。

 「全うして貰わなければ困る。他に頼めないしな。」


 「ご両親や、ご隠居様は如何なんですか?」

 「あの人たちは駄目だよ。忙しいもん。爺ちゃんもダメ。年齢がな、ネックなんだよ。そこはドラスティックに考えないとな。寂しい話だが。」


 「坊っちゃん!坊っちゃん!縄といてくれよぉ!もう、何もしねぇからよぉ。おねげぇだよぉ。」

 急に縛り上げていた強盗が騒ぎ出した。


 エサがしゃべるなよ。

 でもまあ、仕方ないから仕上げに行くか。


 「お前ら、そこに居ろ。聞き耳も立てるな。」

 俺は残った3人と、いつの間にかいた一柱にも言って、エサ共の方に向かった。


 「どうした?さっきの勢いはどこ行ったんだよ。」

 「悪かったよぉ。助けてくれよぉ。ここに置いて行くなんてことはしないんだろぉ?」


 「助けてほしいのか?」

 「うん、うん、なんでもするよぉ、助けてくれよぉ。」


 「お前、今まで襲った相手で、助けを乞うた者を助けたことがあったか?」

 「それはよえぇやつが悪いんだよ。俺は悪くねぇ。」


 「そうか、俺はお前より強いから、置いて行っても悪くないな。」

 「そんなこと言わねぇでよぉ、おらぁ強えぇぜぇ、マジでよぉ。役に立って見せるよぉ、子分でもなんでもいい、頑張るからさぁ。」


 「ああ、そういうのいらないんだ。騎士団ていう、強い連中がうちにはいるから。」

 「なんでぇ、人が下手に出れば、この野郎!!どうせおめぇらなんて鬼や悪魔の類なんだ!!」


 「死姦もやったことのある外道に言われる筋はないがな、これだけは言っておく。貴族の血は青いんだぞ。鬼や悪魔の類と言われればそうかもしれぬ。覚えておけ。地獄でも必要になる知識かもしれんからな。」

 俺は奴にそう言って、背を向け歩き出す。


 何か喚いていたようだがもう聞く気も起きなかった。

 俺が戻ると、アンネが抱き着いて泣きだした。


 俺も抱き寄せ、しばらくなすがままにしておいた。

 その間に、ローズがお茶を出してくれたり、リーサが居なくなった言い訳をしたり、まあちょっとは賑やかだったかな。


 すると、さっき来た方角も騒がしくなっていた。

 何があったんだろうね。


 アンネも落ち着いたようだし、こちらに害がないうちにお暇しようか。




 「みんな、帰ろう。」



ここまで読んでいただき、有難うございます。

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