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218.アベル君と魔物の血肉。

218.アベル君と魔物の血肉。




 「まあ、そんなことは起こらないから安心しなよ。今までだって可能性は書物に書かれていたけれど、一度もなかったんだから。」

ああ、俺は今とんでもないフラグを立ててしまったのではなかろうか。


「まあ、あったとしても僕の酸素爆発で木っ端みじんさ。」

フラグをへし折ろうとあがいて、さらなるフラグを立てる、一級建築士は俺のことなんじゃないのか?


 「考えない。こういうことは考えないことに限る。よし、ローズさっき言ったところに魔石がある。いいね。」

 ローズの顔はあからさまにぶーたれていた。


 「ほら、そんな顔をしてもダメ。さっき刺したんだろ。そこから掻っ捌くのは延長線上のことじゃないか。」

 俺の言葉に、ローズは更に露骨な不満を顔に表した。


 「お前!いい加減にしろ。命令にするぞ。お願いで済んでいるうちに覚悟は決めろよ。」

 ローズは俺の言葉を聞いて、ムッツリ顔のまま背嚢から作業用の手袋を出した。


 厚手のしっかりした奴だ。

 それをはめて、うつ伏せになっているネズミを仰向けにひっくり返す。


 そして覚悟を決めたように、のど下の部分にこれも作業用のナイフを突き立てた。

 そこから一気にのどから肺の方にナイフを引く。


 すでに心肺停止しているので、血が噴き出ることはない。

 引き裂いた部分を両手で広げ、肺の上部あたりにローズは手を突っ込んだ。


 ローズは何かを見つけ、俺に嬉しそうな笑顔を向ける。

 しかし、俺の顔を見た途端、また不機嫌な顔になった。


 女性は実に難しい。

 なんてアホなことはいい、魔石はどんな塩梅だ?


 ローズが俺に見せた魔石は、前回行った中級ダンジョンのローチが体内に宿していたものの半分程度の大きさだった。

 強さもね、ダンチなんだわ。

 ローチは、フレイが押さえて、ローズが止めを刺すというセオリーだった。


 それが、今回ローズは一人で急所一突きでやっつけた。

 この差は大きい。


 マンパワー一人分違うのはね、二分の一の労力って意味だからね。

 「よくやった。ほら魔石ごと手袋を前に出して。水で流してやるから。」


 「いいです、魔道具を持ってきましたから、そちらでやります。」

 「魔道具を出す手間考えたら、今手を出した方が早いだろ。強情張んないで早く手を出せ。」


 俺がそう言ってやっとおずおずと手袋をはめたままの手を俺に差し出した。

 「よろしい。」


 俺は魔法でその手袋の血を流してやる。

 ついでにその手のひらに置いてある魔石も綺麗にね。


 裏面も綺麗に流してやって、ローズは手袋を外し、紐で背嚢に引っ掛けて吊るした。

 もっとメンテしないとすぐ痛んじゃうんだけど、ダンジョン内はこれで精一杯だ。


 「今回はローズ一人で倒した。倒せたともいえるかな。これが初級ってことなんだと思う。ローズ本人はどう思う?」

 「私も一人で、しかも一撃で倒せたので拍子抜けしました。けど、これは団体出来ますよね?ネズミですもん。」


 流石メイド、目の付け所が良い。

 「そう、ネズミだからね。団体行動が主らしい。斥候を立ててね。ということは、みんな分かるね。」


 俺はそう言って皆を見渡す。

 そのパーティーメンバーは俺の意図が分かってか、真剣な眼差しで頷いた。


 「よし、そろそろ来るだろうから、ローズ頼む。」

 「はい。」


 そう返事をし、ローズはまた影の中に隠れた。

 8歳のころからヨハンに就いて学び、見事に間諜の技を習得しつつある。


 それもこれも、俺が殺された所為だったな。

 悪いことをした。


 もっと違う人生もあったろうに。

 そんなことを考えていたら、ぺチン!と頬を叩かれた。


 「ほら、余計なこと考えない。ダンジョンなんだから、前だけ見なさい。」

 リーサが俺に檄を飛ばす。


 こういう時だけお姉さんぶるんだからな、この神は。

 「よし、ローズが来るまでちょっとだけリラックスだ。ずっと緊張していると、持たないからな。」


 リラックスしているつもりでいるが、じれったい時間だけが過ぎると自ずと剣を握る力が入る。

 それは他の二人も同じようだ。

 

 一柱はほっとけ。

 「アベル様!5!」


 そういうローズの切迫した声が前から響いた。

 「フレイ、ローズをカバー!二人で当たれ!俺はお前らを囲む奴らをやる。」


 「承知!」

 そう言ってフレイはローズのもとに走る。


 「アンネとリーサは後方から順次確認。異常が有ったら知らせてくれ。」

 「はい!」

 

 「はーい。」






 あー!リーサめ!緊張感がなくなるだろ!



ここまで読んでいただき、有難うございます。

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