23.アベルくんと草。
23.アベルくんと草。
なんだったんだろうね。まったく。
真っ暗な子供部屋で一人考える。
難題な神託を受けちゃったな。
アンネローゼをトレーサ教は間違いなく狙ってくるよな。
そして、たとえトレーサの巫女であっても他の教会も放っておいてはくれまい。
聖女なんて偶像は便利に使えるだろうから。
回復スキル使い放題とか、馬鹿じゃねーの。トレーサめ。
3歳、4歳くらいになったら、とりあえず家族に相談しよう。
一旦、辺境伯の権力でアンネローゼの存在を眩ませるのが一番かな。
うちの両親や、エドワード爺ちゃんは悪いようにはしないだろう。
そうなると俺が転生者だってのも話さなきゃならんよなぁ。
田中信一郎からアベルに完全に変われたかもしれなかったのに。
待てよ、トレーサがこの城で顕現したってのも争いの火種にならないか?
おいおい、聖王国の唯一神が敵国の、まして辺境伯の城から顕現したって、今考えりゃ不味いよ。
いや、まだ時間はある、対応はゆっくり考えられるさ。トレ-サが捕まらなければな。
さて、寝ようかな。
ああ、その前にやっちゃうか。
隣を見ると、トレーサが顕現した時のまんまの状態でアンネローゼが眠っていた。
口を開きっぱなしにしていきやがって、新生児は大切に扱えとトレーサが来たら叱らないとな。
何とか身体をアンネローゼに寄せて、手を取った。
そして、自分の体内の魔素をアンネローゼの体内に流し込むイメージを作る。
すると、自分の身体に溜めてある魔素がスルスルとアンネローゼの身体の中に入っていく。
俺の手から、アンネローゼの手を伝って魔素溜りに入る。
手と魔素溜まりに通路があるように感じる。
なにこれ、おもろ。
順調に魔素を注ぎ入れ、魔素溜りが一杯になる。
さあ、ここからが本番。
魔素溜りの魔素を圧縮させつつ魔素を可能な限り入れてゆく。
もうそろそろかな?と思ったその時、「グツッ」という感触がこっちまで伝わる。
というわけで、アンネローゼ全身魔素タンク化、終~了~
ふと、アンネローゼの顔を見ると、今にも泣きそうな顔をしている。
まあ、そんな顔すんな。
これは、お前にとって大事なことだったんだ。
分かるよな、な。
「ぎゃーーーーー!」
ああ、だよな。
草。
これだだ一章が終わりです。
次回からはローズの回想が始まります。
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