211.アベル君と女性陣。
211.アベル君と女性陣。
俺はそのまま食堂を後にした。
何故かその後をミーが付いてくる。
なんで?
「ミー、どうかした?」
「さっきのはにゃしが気にぃなって。」
「何の話?」
「ローズのねぇす。」
「なんでミーが気にすんだよ。」
「だって私はアベル様の妾にぇになりたいから。」
ファッ!
ああ、そうだった。
以前もそんなこと言っていたな。
お手付きにしてもらうとか。
「俺は妾を増やすつもりはないよ。」
「増やすつもりはにゃいって事は、妾を囲う気持ちはあるってこでしょう?」
おっと、言葉が漏れたしまったか。
「うん、たぶん妾にするだろうと思う人は一人いるんだ。」
「楼閣主のリラ様でしょう?」
あらよく知っているね。
「みんなよく知っているね。誰に話したわけじゃないんだけどな。」
「それはリラ様が来れば、アベル様は甘々な雰囲気出してるのにょ。」
ホントかぁ?俺そんな雰囲気出てんのか?
そりゃ不味いな、自重しなきゃ。
「まあ、それがどうかした?リラは僕にとってスペシャルな存在だからね。そう見えても仕方ないさ。」
と、開き直ってみたわけだ。
「私もアベル様のにょスペシャルににゃりたいにょです。」
と言ってもなぁ。
ミーは13も上だし。
「ごめんなミー、歳が合わないでしょ。俺よりもっといい男がいるよ。さっさと見つけな。母さんに頼んでみようか?」
「リラ様だって、600歳も違うでしょ!」
エルフの血が入った人と自分を比べちゃダメだよ。
「ミー、僕のどこが良いのさ。明らかに年下過ぎるだろ?僕はまだ子供だよ。」
「アベル様は強いから。」
「ん?それだけ」
「それだけにゃ。獣人の女は強い男にぇ引かれるにぇす。ローズもきっとそうなにゃ。いや、あの娘はもっと複雑かも。」
「そこらへんは野生の動物と同じなのな。」
「そうですにゃ、もう一つ言えば家に帰りたくにゃい。ここに居たいにょです。」
「なんでさ?」
「実家は大家族で私のいる場所にゃんてもうにゃいですから。それにここのみにゃさまはお優しくて居心地が良くって仕事も大好きだし、アベル様も大好きで言うことにゃいです。」
「でも僕が成人するのはあと五年だからね。その時にならないと何とも言えない。あまり言いたくはないけど、女性の5年は長いんじゃないかな?」
「ううう、今お手付きしても良いですにょ?」
「あははは、ダメだよそんなん。自分を大切にできない人は家族に出来ないよ。」
「うっ…うう。」
呻いているミーの目に涙が浮かんだ。
でもここで折れていちゃ、これから先とんでもないことになりそうだからね。
ハーレムものみたいに全部受け入れるなんて無理なんだから。
女同士は中良さそうに見えても、色々大変なんだからさ。
その渦中に入るのは御免被るよ。
話をしていたら、俺の部屋の前にローズが立っていた。
こちらを向いたローズは、涙ぐむミーを見てローズが早足でこちらにやってくる。
そして
「ミー姉ちゃん!どうしたの?アベル様、ミー姉ちゃんに何かしたんですか?」
俺に対して、困惑した目をしながら質問してきた。
まあ、こうなるわな。
テンプレみたいなもんだ。
辟易だが、誠意を持って対処しないと、あちこちに火の粉が飛ぶからな。
「話はした。ただ、それがお互いの人生にかかわる話だったからね。ミーも感情が入っちゃったんだろう。僕の言い方も強かったかもしれない。でもそうしなきゃいけなかったんだ。」
「何の話をしたんです!?何を言ったんですか!!」
お前、俺の話聞いてた?
俺の口から言うと、お前も傷つくから言わないでいたのに。
「ミー、ローズに話していい?」
「駄目です。私がはにゃします。ローズ、ここじゃ話せないから下に行こう。」
そう言ってミーはまだ疑問符の浮かんでいるローズの腕を引っ張り、下の階に行った。
「ふう。」
俺の口から大きいため息があふれ出す。
10歳の少年に嫁だの妾だの。
俺のモラトリアルはどこに行ったんでしょうかね。
そう毒づきながらドアを開けた。
「あんた馬鹿ねぇ。」
赤いプラグスーツを着た女の子が言いそうなセリフを、もっとも「ねぇ。」は付かないが、クソ生意気な顔をしたフェアリーが言ってきた。
「なにが馬鹿かな?」
「どっちも貰っちゃえばいいのよ。猫と犬で丁度いいじゃない。」
「なにが丁度いいのか俺にはわかんないんだが。」
「クソ面倒なこと考えなくてもいいでしょって言ってんの。あんたはそれだけの甲斐性があるんだから。」
「金銭的にはな、精神的に俺が疲れると予想できてしまうんだ。」
「そこは鍛えなさいよ。私が思うに、あんたはあと三人娶らなければならないはずよ。」
「三人?正室だろ。リラ。あと誰?」
「私ぃ。」
「馬鹿なのか?」
「あら、本気よ。あんたが大人になったら、ヒューマンに受肉してあげるから。子供作るのよ。」
「馬鹿なのか?」
「いいじゃないの、事例が無いわけじゃないし。」
「ここの世界でか?それとも前の世界で…あるなぁ。」
「アフロな女神やギルドのオカマと同じ名前の女神なんかは淫乱よね。」
「お前も?」
「私は節度くらいあるわよ。あんたが干からびるほどやらないわ。」
「それ節度じゃないからな。」
「そしてあんたが老衰で死んだら、魂を高次元まで運んであげるわよ。妻として。」
「いや!お前神じゃなく悪魔の方だろ、メフィなんとかって言う!」
「詩人が書いた物語と一緒にしないでほしいわね。」
「いや待て!3人じゃ足りないんじゃないか?正室と妾二人だと色々とあるだろう。側室が必要なのでは?」
「だから私が側室になるわよ。どこかの伯爵か侯爵あたりの令嬢になればいいんでしょう?簡単よ。」
「ゲスイな、お前。ああ、もういいや。なんか疲れた。完全オフに城の中を徘徊していただけなのに、なんでこんなに疲れるんだ?」
「自分では徘徊しているだけと思っても、あんたは自然と色んなことをやらかしてんのよ。それが分からないところが、あんたという人間のすべてよね。」
リーサの言葉を後ろに聞きながら、俺は着替えもせずにベッドに飛び込み、意識を放り投げた。
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