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209.アベル君と城の面々。

209.アベル君と城の面々。




 「ジョージ、おなか減った。」

 俺は扉を開けるが早いか、空腹の旨を料理長のジョージに伝えた。


 「なんでぇ、坊っちゃん、藪から棒に。夕飯まで我慢できねぇのか?」

 筋肉だるまのジョージが奥から顔を出し俺に聞いてくる。


 「さっき、アルたちと遊んでね。ちょっと小腹が減ったのさ。」

 「アルと?うちの息子と遊んでくれて腹が減ったんじゃ、何か出さざるを得ないか。で、その後ろの二人は?」


 「さあ?知らない。」

 俺がそう言うと、エレナが指で俺の背中を突く。


 「アホか!止めろ!」

 「アベル様ぁ。」


 ローズまで、上目使いで甘えてきやがった。

 「お前らなぁ。」


 俺がそういって二人に向き直り、お説教を言おうとしたとき、もっとお説教言うのにぴったりの人影が来た。

 「エレナ!ローズ!こんなところで何をしているんです!」


 その声を後ろから聞いた二人は、ビクッ!と肩を上げ途端に硬直した。

 「アベル様!お夕食まで待てないのですか!と言っても、アルの面倒を見てくれたそうですね。ありがとうございます。エレナ、アリサの面倒もアベル様は見てくれたそうですよ。お礼は言いましたか?」


 そう言って俺にお礼を言ったのは、メイド長のマーガレットだ。

 「いえ、その話は聞いておりませんでしたので。アベル様、ありがとうございます。」


 エレナが珍しく恐縮しながら俺にお礼を言った。

 「マーガレット、エレナ、いいんだよ。あの二人は大事な弟と妹なんだ。遊び相手くらいするさ。だけど、そのおかげでお腹が減ってここに来たんだけど、その間にエレナとローズが付いてきちゃってね。」 


 「ローズ、あなたはなんです?アベル様のお付きだと言っても、どこまでもついて言ってよいというものではないんですよ。」

 「分かっています。」

 「それでは、仕事に戻りなさい。」


 そう言われたローズとエレナは、すごすごと退散した。

 「坊っちゃん、止めなくていいのかい?」


 「たまには社会の厳しさも知らないとね。ねぇ、マーガレット。」

 「そうですね。アベル様は皆に優しいですから、たまにはこれくらいの厳しさは有ってしかるべきです。」


 「じゃ、ジョージ、3人でお茶にしようか。」

 俺がこう言うと


 「私もですか?」

 マーガレットが驚いた顔で聞いてきた。


 「マーガレットは逆に気を張り過ぎなのさ。たまに息抜きしないとね。」

 俺がそう言うと、ハンカチをポケットから取り出し目頭を押さえた。


 え!?そこまで!!

 「坊っちゃん、ありがとよ、うちのまで気を遣ってくれて。」


 「いいんだって、母さんとマリアさん、マーガレットはこの城のお母さんなんだから。」

 それを聞いたマーガレットは号泣。


 やべ、言いすぎたか。

 俺は困った顔をしてジョージの方を見た。


 ジョージは大きなため息をついて

 「ほら、マーガレット、嬉し泣きでもあまり泣いていると、坊っちゃんが困るだろう?」


 そう言って、うずくまって泣いていたマーガレットを抱きかかえ、椅子に座らせた。


 「ジョージ、お茶を入れて。一杯飲めば落ち着くだろう。」

 「はいよ!」


 ジョージは勢いのある返事をすると、厨房の方に引っ込んだ。

 「アベル様、申し訳ありません。みっともないところを見せてしましました。」


 「マーガレット、いいんだよ。僕らは家族なんだ。感情くらい表に出してもいいさ。正式な場では僕も我慢するけどね。」

 俺はそう言って、苦笑いを作る。

 そして、ジョージが更に大盛りのクッキ-と、お茶お茶の入ったティーカップをを三つ運んできた。


 「さあ、一服しよう。」

 そう言って、ジョージはお茶お並べてくれた。


 そして僕らは、たわいのない話をしながらお茶を楽しんだのだった。

てなわけで、お茶とクッキーでお腹を満たした俺は、中庭へ足を運んだ。


 母さんがお茶しているかもしれないけれど、まあその時はその時。

 だが、中庭のテーブルには、優雅な辺境伯夫人の姿はなかった。


 「学校かな?」

 と、呟いたら


 「坊っちゃんどうした?珍しいのぉ。」

 と、声を掛けてきたのは、庭師のビル爺だ。


 「やあ、ビル爺。たまには中庭を見たいと思ことだって僕にもあるんだよ。」

 「まあ、そう言うことにしてやるわい。ガハハ。」


 ビル爺は豪快に笑った。

 「相変わらず綺麗にしているね。」

 

 「それが儂の仕事じゃからなぁ。」

 「姉さんもこの庭が好きだった。」


 「シャーロットお嬢様も気に入ってくださった。元気にしておいでじゃろうか?」

 「元気みたいだよ。リサと二人で、仲良くやっているみたい。」


 「そうか、リサも元気か。」

 ビル爺もリサもドワーフだ。


 かわいがっていたからね。

 何か思う所が有るのかもしれないな。


 「さて、もう行くよ。」

 「なんじゃ、つれないのぉ。」


 「あまりビル爺の仕事の邪魔は出来ないだろ。」

 「うむ、じゃあな、坊っちゃん。どうせ図書室行くのだろう?」


 「バレたか。」

 「ガハハハハ」


 二人で笑ってその場から分かれた。

 そして俺は図書室に向かう。


 用事もないんだけど、最近行っていなかったからさ。

 ロッティーが居なくなって、すっかり足が遠のいてしまった。


 俺は重い図書室の扉を開けた。

 3歳の頃は、これを開けるのが大変だったんだよ。


 今はまあ、大丈夫。


 いつものドーム型の室内の中央にカウンターがあり、そこに一人の司書が本を読みながらたたずんでいた。

 その本に虫が顔を上げ、こちらを向いて微笑んだ。


 「やあ、ハンス元気かい?」

 「ご無沙汰しております、アベル様。シャーロット様がいらっしゃらなくなってから、すっかり足が遠のいたようで。」


 「言わないでよ。今はダンジョン攻略の方が忙しいんだからさ。」

 「そうでございましたね。立派な冒険者になったとお聞きいたしました。」


 「へー、誰から聞いたんだい?」

 「ご領主様からでございます。」


 「父さんが?父さんに立派とか言われると、なんだか気恥ずかしいね。父さんと母さんとは足元にも及ばないのに。」

 「ご謙遜する必要は無いと思いますよ。アリアンナ様から魔法を習い、さらにご自分で新たな魔法を作り出すその頭脳と才能、そしてご隠居様から剣技を授かり、騎士団の騎士をも上回るその剣の鋭さ。城内はもとより、領内でも噂になっておいでですので。」


 「止めなさいって、僕はまだ物知らぬ小僧でしかないんだよ。」

 「またご謙遜をなさる。いいではございませんか。皆アベル様のご活躍が我が事のように嬉しいのです。それは私にとっても。小さい身体で、大きな本をめくりながら、シャーロット様と意見交換をなさっていたアベル様が、こうして立派に成長なさっている。嬉しい限りでございますよ。」


 「褒め過ぎだ。むず痒くて仕方ないよ。」

 「もう世間の評価はそう固まっているのですよ。ヴァレンティアの至宝様。」


 「それが一番嫌いなんだがな。」

 「いえ、お似合いですよ。それで、今日はどういったご用件で?読みたい本でもございますか?」

 

 「いや、ハンスの顔を見に来たんだよ。しばらく来なかったからね。そしたらやけに褒められたんで、早々に退散したい気分だ。」

 「それ嬉しいですね。是非いつでもおいで下さい。」


 「ああ、そうだ、ダンジョンの魔物の本てあるかい?」

 「ございますよ。とびっきりのが。」


 「へーとびっきりねぇ。どんな本なの?」


 


 「それは見てのお楽しみでございます。」





ここまで読んでいただき、有難うございます。

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