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207.アベル君とオフの一日。

207.アベル君とオフの一日。




 今日は何も用事がない。

 最近はダンジョン行ったり、爺ちゃんたちと剣の修練やったり、官僚学校の様子を見たりと、俺だって色々やることがあるんだよ?

 

 スローライフを楽しむ、領主のドラ息子になりたかったよ。

 ついつい口を出してしまう馬鹿な性格の所為だ。


 というわけでね、こういう日はつまみ食いに行くに限るのさ。

 いや、あそこに行ってみるか。


 顔を見せないとうるさいからな。

 というわけで、懐かしの子供部屋までやってきた。


 「あっ!!アベルさま!!」

 そう言って駆け寄りまとわりついて来たのは、ジョージとマーガレットの息子、アルフレッド、通称アル、5歳だ。

 

 「アベルさまはダンジョン入ったんでしょ!?お話聞かせて!」

 そう言って、俺の腕をつかみ、子供部屋へ引っ張り入れる。


 「わかったよ、そう引っ張るな。あ、マリアさん、こんにちは。元気でしたか?」

 「ええ、お陰様で。でも普通は私の方が、ご機嫌を聞かなければならないんですけどね。アベル様は、すっかりまた大人になられて。」

 

 マリアさんはそう言うと、美しい顔に穏やかな笑顔を湛えた。

 「そうでもないよ、まだまだ子供さ。母さんにうるさく言われているしね。」


 俺は自嘲気味に笑う。

 「あべるしゃま。」


 そう言ってトコトコ歩いてくるのは、エレナとユーリの娘、アリサ、2歳だ。

 「アリサも元気そうだね。」


 そう言って抱っこしてあげる。

 10歳の筋力では結構大変なんだけどね。


 アリサを抱えたまま、片方の足を使って靴を両方脱ぎ捨て、部屋の隅に敷いてあるカーペットの上にぺたりと座った。

 「こうやって座るのも久しぶりだね。」


 俺がそう言うと

 「アベル様は、三歳で自立してなさって自分で椅子に座り、ご飯もお一人で食べていましたから。こうやって大人が面倒を見なければならない、この子たちが普通なのですよ。」


 「姉さんと僕が人とは違う話はもういいよ。」

 「そうでしたね。アベル様は、もうどこへ行っても何をしてもそう言われますもの。」


 そう言って、マリアさんは笑みを深める。

 「マリアさん!アベル様のダンジョンの話を聞くの!」


 そう言って、俺とマリアさんの間に割って入り、アルが俺の話を急かす。

 「わかったよ。ダンジョンにはね、僕とローズ、フレイとアンネ、そしてリーサとフレイのお兄ちゃんのフレイヤさんて人が入ったんだ。」


 「フレイさんだけじゃなくて、ローズ姉ちゃんと、アンネ姉ちゃんも?」

 「そうさ、ローズは斥候って言って、当たりを見渡す大事な仕事をしてくれたんだ。アンネは、得意の治癒魔法で僕らを助けてくれたし、魔法を使って魔物を地面に落としたりもしていたよ。」


 「へー!あのお姉ちゃんたちが!」

 そう言ったあるは驚きを隠せない。


 「そうだぞ、女の子は優しそうに見えても、強くて怖いからな。アルも気をつけるんだぞ。」

 俺はついそのようなことを口にしてしまった。


 「アベル様!」

 と、マリアさんに窘められるわけだ。


 「それで、どんな魔物がでたの!?」

 「一番初めに戦ったのはゴキブリだった。」


 ※作者からの注。 作中でゴキブリと言っていますが、この世界でゴキブリに似た生物の事ですので、あしからず。

 ほかの虫たちも同じになります。


 「ゴキブリって黒くて平べったい?」

 そう言って、アルは目を丸くする。


 「そうだ、このカーペットよりちょっと大きいくらいのが、カチカチ口を鳴らして襲ってきたんだ。」

 俺がそう言ったら、マリアさんが「ヒッ!」と声を漏らし、俺に抱っこされていたアリサが暴れ出した。


 「あべるしゃま、こわい!こわい!」

 ローチを想像してしまったんだろう、涙目になっている。


 俺は暴れるアリサをマリアさんに預け

 「怖いだろ?」


 そう言って、目を見開き俺の顔を見ているアルに向かって言った。

 あるは無言でうなずく。


 こいつ、結構度胸があんのな。

 「だけど、僕の魔法であっという間にやっつけた。」


 「すごい!!どんな魔法!」

 さっきの恐怖の表情はどこへやら、魔法へ興味が移行してようだ。


 「これさ。」

 そう言って俺は手のひらからファイアーボールを連続で生成させ、お手玉してやった。


 実際に掴んでお手玉はしないからね。

 火傷しちゃうし。


 魔力操作で、そういうふうに見えるだけ。

 これは、母さんが上手なんだよ。


 一回りしたファイアーボールはまた手のひらに集まり、俺が手を握ると、ポンと音を立てて消えた。

 アルと、アリサは何故か拍手し始める。


 ちょっと気恥ずかしい。


 「これをゴキブリに連続して当ててやっつけたんだよ。」

 「アベルさま、スゲー!」


 アルは大興奮。

 俺も純粋な子供で、こんな話を聞けばそりゃ興奮しただろうな。


 そこからは、クリケ、強敵マーティー、ラーノとコルピ。

 これらの戦闘の話をしてやった。


 コルピ戦で死にかけた話をしたら、マリアさんに怒られ、泣かれそうになって、辟易してしまった。

 「最後に出てきたのが、大ムカデさ。足が沢山あってウネウネ動き、長くて牙が鋭く毒がある。」


 俺がミルパの話をするとまたアリサが暴れ出した。

 まあ、見た目はホント、キモイからな。


 「殻が硬いんだ。だからそれまで剣で戦ってきたんだけど、この敵は魔法で倒したんだよ。」

 「またファイアーボール!?」


 「違う、これさ。」

 俺は顔の前に伸ばした人差し指から炎を生成させる。

 

 それを魔力操作で10cm程度伸ばし、酸素生成で赤い炎を青く変えた。

 ボー!と勢のいある音をたて、まっすぐ立ち上がった。


 アルは

 「わぁ!」

 

 と感嘆の声を上げ、その炎を見入る。

 そしてもう片方の手で炎を握りこむように見せて、生成を止めた。


 熱いから、すぐ消さなきゃ。

 指の先から無くなった炎を見て、また子供たちは声を上げた。


 「この炎で、焼き切って倒したんだ。」

 「アベル様は凄いなぁ。ご領主様やご隠居様とどちらが強いの?」


 「あの二人と比べられるとは光栄だけど、全く歯が立たないね。」

 「そうなの?魔法を使えば?」


 「あの二人は、こちらが魔法を使おうと思っただけで、刃がこちらに届くんだ。ちょっとした気持ちを父さんと爺ちゃんに向けただけで、あの二人にはわかっちゃうんだよ。」


 「ご領主様とご隠居様は凄いんだね。」

 「そうさ、でももっと怖い人がいる。」


 「え!?だれ?」

 「か…」


 「アベル様、それ以上は言わない方が良いかと。」

 「まりあさん、ありがとう。そうだね。」


 



 そこからは、4人で他愛のない話を楽しむのだった。


ここまで読んでいただき、有難うございます。

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どうかよろしくお願いします。


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