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22.アベルくんといい加減な神様。

22.アベルくんといい加減な神様。




 「願いを聞き入れました。善処いたします。」


 善処かよ!

 でも却下されるよかいいか。

 

 「それに、あんたまだ新生児でしょ!貿易とか何とか、そういうのはもっと大人になって威厳と権威を持ってからにしなさいよ。新生児の時から空手形切るもんじゃないわよ。」

 

 ああそうだな、そのとおりだ。

 担保もないようなことは言うもんじゃねぇよな。

 だから担保もねぇ神託与えてんじゃねぇぞ。


 「はいはいわかりました。もう極力変なことは言わないわよ。」


 それなら助かるよ。

 でさ、もう一つ聞きたいことがあるんだけど。


 「何かしら、いいわよ。」


 アンネローゼさ、巫女とか聖女とかって、聖王国の教会とかに狙われたりしない?


 「あーーーーーー、あるなぁ、それ、あるわぁ」


 あるんかい!

 やっぱトレーサ、お前の顕現中止。

 聖王国行き観光中止。


 「なんでよ、観光くらいいいじゃない。」


 だって聖王国へ行ったら、教会に行っちゃうだろ?

 挨拶に来たとか言って。

 そうすると、巫女から顕現したってバレるじゃん。

 駄目だよ、そんなん。


 「大丈夫よ、あんたがここでこの娘を守るんでしょ。嫁でしょ、嫁。」


 ちげーよ、乳兄弟。

 それ以上でもそれ以下でもない。

 マジで。


 「ふーん、そうなの?でもこの娘すごく綺麗になるわよ。もったいない。エルフの血を引いているから胸はあれだけど。そういえばあんたさ、英雄王みたいに体中魔素でいっぱいにしているけど、自分でやったの?」


そっか、胸はあれかぁ。

じゃない、英雄王って、英雄王ノヴァリスのこと?


「そう、1500年前にエルフとこの国を作った男ね。彼も魔素をいっぱい入れた身体にしていたわ。そういえば、あのヒューマンも・・・いやなんでもない。」


何だよもったいぶって。俺の場合は実験していたら偶然見つけた。

そのお陰でお前も顕現できたんだろ。


「そうね、そのアンネローゼちゃんも今のうちにあんた同じ身体にしちゃいなさいよ。さっきと同じ様に手を繋いで魔素を送り込んで魔素溜まりの出口を開ければ完了よ。」


へー、外部操作できるんだ。

他の人にも出来るのかな?


「出来るけど5歳までね。それ以降になると、魔素溜まりの出口が癒着して開かなくなるのよ。大昔の人は、塞がる前に親が子どものを外部操作で開けてやっていたんだけどね。いつしかそういう技術も廃れたのね。」


あー、そうか、5歳までか。

ロッティー残念。

なんで技術が廃れたんだろう?」


「廃れたのは、あまり戦いをしなくなったことが大きいかな。今よりずっと昔の世界は、もっと戦争が多かったの。そのお陰で急激にヒューマンたちも減ってね。争いも少なくなったってわけ。大規模戦闘が少なくなって、技術伝承するヒューマンたちも減ったんでしょうね。2000年前くらいには魔素溜まりだけで十分て感じになっていたのよね。だから1500年前に英雄王を見たときは驚いたわ。技術が廃れたのに、まだ身体を魔素でいっぱいにしているヒューマンがいるんだもん。その1500年後にあんたが居たのも驚いたけどね。」


へー、魔素を貯める必要がなくなったから、伝承もできずに退化したって感じね。

その廃れた技術をアンネローゼに施せってのはなんでさ?


「私のせいであんたとその娘が大変なことになりそうじゃん。私だって気にすんだよ。この娘の体内に入ったときだって、この子の母親の身体の不調を治してあげたり。神様らしいことやってんだから。」


普段から神様やりなさい。


「はい。」


ああ、マリアさんがマーガレットに女性特有の機能の不具合が治ったとか言っていたのは、トレーサのお陰だったのか。


「そうよ、他の種族と交じり合うのは見えないリスクがたまにあんのよね。ああ、それからアンネローゼには特殊なスキルが付いているから。回復スキルなんだけど、そこらの教会の坊主たちよりメチャクチャ強烈なやつね。あんたみたいに身体を魔素でいっぱいにすれば、際限なしに回復できるでしょうね。」


へぇ、それは、それは、トレーサ教団ではない他の教団にも狙われそうな情報ですね。


「そう言うつもりで付けた訳じゃないのよ。ほら、聖女って言ったら、回復でしょ。ね。」


ね、じゃねぇよ。

もう、トレーサ、お前やること裏目ばかりじゃん。

今まで大丈夫だったん?

聖王国もよくお前を一神教として崇めているよな。


「そこまで言わないでよ。大昔、まだ聖王国が国じゃなかったころ。網の編み方教えてやってさ、魚を捕れるようにしたり、畑の耕し方を教えてやったりしたことがあるだけなのよ。メインは死んだ後の魂を高次元に送ってやったりね。そしたらいつの間にか大々的に担ぎ上げられちゃってさ。人の信仰は結構強くて、信者が増えれば増えるほど、私たちを縛りつけようとすんのよね。で、500年前の戦争で、縛る力が弱くなったからさ。」


逃げたと。


「正解。」


そんなんで聖王国行って大丈夫なのか?

また信仰心に縛られるんじゃないの?


「あの頃のような信仰心を感じないのよね。まあ、それを見たくって行くんだけどさ。ヤバいかな?」


どうだろうな、俺も聖王国のこと知らんし。

ヤバいようなら逃げろとしか言えんな。

信仰に縛られて、言ってもない神託を引き出されるとかあったら怖いしな。


「それ嫌ね。そうならないように気を付けるわ。そろそろ行くわね。アンネローゼを守ってあげて頂戴。」


神託?


「そうよ。アベル、また会いに来ていい?」


ああ、アンネローゼの口の中から出ないならな。


「もう顕現しているから、そんな手間踏まないわよ。じゃ、またね。」


ああ、捕まんなよ。

じゃあな。



そしてトレーサは光の粒へと変わり、闇の中へ消えていった。



ここまで読んでいただき、有難うございます。

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