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204.アベル君と玄室での一夜。

204.アベル君と玄室での一夜。




 俺たちは一晩を最終の玄室で過ごした。

 まあ、ここの主は俺がぶつ切りにしちゃったしね。


 安心して泊れるんだ。

 時間の感覚は、魔道具の時計が頼りだったけどね。


 これ高級品なんだよ。

 金貨8枚は下らないんだそうだ。


 それをあっさり貸してくれる辺境伯って、どうかしてるよね。

 俺の父さんの事なんだけどさ。


 まあ、そんな話は良くて、ネコでダンジョンに入ってきて何が良かったって、桶とか持ち込めたってことだよね。

 風呂は入れないけれど、清拭が出来るものな。


 女性陣にお湯の魔道具で出した、桶一杯に張ったお湯を提供した。

 ちょっと高い岩の陰で二人は身体をキャッキャ言いながら、拭いていたらしい。


 なぜキャッキャ言わねばならんのかは知らん。


 困ったのはフレイヤさんの存在だ。

 「私はあなた達と一緒でいいわよ。」


 などと言うが、俺が嫌なのだ。

 「桶はお前たち兄弟で使っていいよ。俺は自分でお湯を生成してシャワーするから。」


 「嫌だ、アベルちゃんばかりズルい!私もシャワーがいい!」

 「兄さん、アベル様の言うことは聞こう。兄さんにとってのクライアントなんだから。」


 「フレイは自分ばかりいい子になるのね!」

 「そりゃそうだよ、俺はアベル様の従士だし。」


 なんと言おうがノーサンキューだ。

 前世のトラウマの一つ、ホモのストーカーの恐怖はぬぐい切れない。

 「アベル様、私が清拭して差し上げますよ。」

 などと言いだしたのはローズである。


 まあ、それこそ赤ん坊のころから俺の面倒を見てきたのだ、俺の裸など今更どうってことはないのだろう。

 しかし俺が嫌なのだ。


 なぜなら、ローズがやけに女っぽくなってきたからな。

 ローズの奴は、大分前から好き好き光線出してきたからな、意識するなという方が難しい。


 そんなローズが清拭とかでお互い薄着や、素肌をさらすような行為をされると、10歳とはいえ、おっきしてしまうのだ。

 さすがにそれを見られるのは中身40過ぎのおっさんと言えど、恥ずかしい。


 あと2、3年すれば、普通に精通もするだろう。

 もうアベル・ヴァレンタイン君もそんな年なのだ。


 リーサに何言われようと平気なのに。

 まあ、あれはサイズが人間サイズじゃないってのが大きいかな。


 皮剥けだの、清潔にしろだの平気に行ってくるからな。

 まあ、リーサのことはいい。


 「いいよ、自分で出来るから自分でする。ローズに見られるのが恥ずかしくなったんだよ。俺もそんな年頃なんだ。」

 こういうものは、正直に言うのが一番だ。


 ただ、それが通じない者たちがいる。

 俺の母親及び、母親のつもりになっている連中だ。


 もちろん、ローズもその例に漏れない。

 「そんなに恥ずかしいんですか?今までずっとしてきたじゃないですか。」


 そう言って、ローズは薄着でにじり寄ってくる。

 「馬鹿、そんな恰好で来るな!」


 「これから寝るのに、寝巻を濡らしたくないんです。私の事も見慣れているでしょう?」

 「お前も俺も、小さいころと違うんだ、ちょっとは考えろ!」


 「私は平気ですけど。」

 「俺は平気じゃない、ほら、こうなってしまうんだよ!」

 俺は直接見せてやった。


 まあ、おっさんだからね、見せるくらいは実は平気なんだよ。

 ただローズの信条を考えると、そうはいかんだろ?


 「キャア!」

 一瞬両手で顔を押さえ、羞恥を見せるローズ。

 

 しかし指の間からしっかり見ているのはバレバレだからな。

 「だから、向こうへ行け。もうこの手のことで、俺に絡むなよ。」


 そう言って、ローズを岩陰から追い出した。

 これが切っ掛けで、ローズが性欲を持て余すことになるのだが、今は二人ともそれを知らない。


 変なモノローグ入れんな!!

 ローズの性欲とか知るかってんだよ。


 俺は使用人には手を出さない。

 こらえられなかったら、プロに任せる。


 このスタンスは崩さないからな。

 公営娼館は、病気も子供の心配もいらない。


 素晴らしく整備されたところなのだ。

 ただ入場は15歳以上であるんだよなぁ。


 ローズを首にするか。

 それも視野に入れなければならないかもな。


 母さんとマーガレットに阻止されるんだろうな。

 むしろ、抱けって言われそうな気がする。


 貴族は妾に寛容だからな。

 セントクレアの爺ちゃんと婆ちゃんは、むしろ父さんの方が変わっていると認識していた。


 まあ、この歳で女のことに頭を悩ますリソースがあるなら、修業しろってことだな。

 よし、サッパリした。

 そう思って着替えを済ませた俺は皆のところに戻った。

 「なに痴話げんかしてんのよ。」


 フレイヤさんの第一声だ。

 まあ、言われるだろうと思っていたから。許容範囲内だ。


 「僕とローズの性差の話をしただけだよ。そんな難しい話はしていない。」

 「あら、っそ。」


 そう言ってフレイヤさんはニヤリと笑い、口を鉄扇で隠した。


 「痴話げんかとか、性差とかって何ですか?」

 なんと、ここでとんでもない質問がアンネの口から洩れた。


 「アンネは知らなくていい事だよ。アンネはずっと清らかにいてね。」

 俺は彼女にそう諭し、リーサも珍しく

 

 「アンネ、あんたにはまだ知らなくていい言葉だわ。私の魔法をちゃんと使えるようになってから、好奇心を発揮しなさい。」

 アンネはリーサにそう言い包められてしまった。





 「さあ、寝よ寝よ、明日はすぐ起きて帰るよ。」

 俺はそう言って、シュラフに潜った。



ここまで読んでいただき、有難うございます。

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