202.アベル君とパーティーの危機。
202.アベル君とパーティーの危機。
ぶっちゃけどう対処していいか全然わからない。
六畳一間分くらいあるクソデカい甲殻類なんて出てくんなよ!
そんな心の声もむなしく、奴は近づいてくる。
「俺とフレイで前衛を受け持つ。ローズは足の関節を狙え!尻尾に気をつけろ!」
前世の蠍と同じならば、尻尾には致死性の高い毒が仕込んであるはずだ。
一回当てて、解決策が見つからなければ、魔法を使うしかないか。
近づいてきたコルピは、威嚇するように大きな鋏を上に振りあげる。
その鋏の根元を狙い、俺は剣を振り上げた。
しかし、反対の鋏でコルピはブロックし、剣をはじかせる。
そして、本命の鋏が俺を狙うようにして上空から落下してきた。
「ぐわぁん!!」
金属の派手な音がして鋏を盾が防ぎ、次の攻撃のためにまた鋏が振りあがる。
振りあがった鋏の下に居たフレイは片膝をついたままだ。
「大丈夫か!フレイ!よけろ!!」
俺は命一杯の声でフレイに声を掛けた。
その声が届くかどうかのところで、フレイは後ろに飛び退く。
その飛び退いたところに、鋏がドスンと落ちてきた。
「フレイ、ダメージは?」
「右膝がヤバいです。」
「そうか、何とか下がれ。アンネなら治してくれる。助けてくれて、ありがとな。アンネ!フレイが負傷!」
俺がそう言うと、フレイは右足を引きずりながら退き、アンネがこちらに駆けてくる。
俺たちがそんなことをしている間に、ローズは孤軍奮闘、短剣を振るっていた。
ローズは前足と中足の中間に位置しながら、どちらも狙う戦法を取っていた。
しかし、足を止めるとすかさず尻尾が飛んでくるという、危険な位置でもあった。
そこで俺のとった戦法は、ローズの逆の足を狙い、尻尾と鋏を混乱させる狙いだ。
フレイが居ないんでね、正面から鋏に対峙は出来んのよ。
即座に俺はブレインブーストを掛ける。
本当は掛けたくないんだ。
素の状態で勝負したいんだが、一人負傷とあってはそうも言ってられない。
酸素魔法は最後の武器だ!って、なんだっけ?
って、言ってる場合じゃないよね。
俺は足の付け根を狙う。
付け根が一番動きが少ないんでね。
ブレインブーストが掛かっているので、相変わらず視界は薄く黄色味がかっている。
その視界にコルピの足の関節がある。
そこに剣の狙いをつけて振り上げてから、力いっぱい下に振りぬくモーションに入った時点でブレインブーストを切る。
殻ではなく間接に入ったミスリルの剣は、バターより容易くコルピの前足を断ち切った。
俺が喜ぶ間もなくコルピは鋏を横に張り出し、俺の脱出路を鋏と中足で塞ぐ。
やべぇ!!俺が慌てたその隙に、俺の革鎧の背中に何かドスンときたと思うと、太い針が体に差し込まれた。
途端に筋肉が引きつりだし、呼吸が困難になった。
俺はパニックになりながらも、なんとか頭の周りを酸素で覆う。
しかし、足掻くのはそこまで、風景が暗転した。
ガツンと頭を蹴られた。
と、言っても小さい足で。
「早く起きなさいよ!みんなやられちゃうわよ!」
「よう、リーサ、俺どうなってた?」
「蠍の神経毒にやられたのよ。筋肉がマヒしたから、肺呼吸も出来なくなって窒息したのね。でも、あんたの悪足搔きのお陰で何とか間に合ったわ。」
「そうか、みんなに迷惑かけたな。」
「馬鹿!その最中よ!」
そう言われて、頭が冴えた。
そして少し離れたところで三棟を繰り広げている皆を確認する。
フレイとローズでペアを作り、何とか足を狙いながら戦っていた。
アンネはファイアーボールで陽動を。
何だ、俺が居なくてもうまくやっているじゃないか。
と、考えたら、ポカリと頭を殴られる。
「よく見なさいよ、もう崩れるわよ。」
「よし、もう剣の修行とか言ってられないか。」
俺はそう言って、両手の指からトーチ魔法を生成させた。
俺は右腕を振り上げた。
それだけで、フレイたちを狙っていた尻尾が切断された。
左腕を振るう。
反射的に俺に向いた鋏が半分になる。
「みんな!どけ!!」
俺はそう叫んだ。
するとハッとした顔をしたパーティーメンバーが、一斉に退く。
あとはコルピを俺が四等分するだけだった。
「母さんに魔法で逃げたって言われるんだろうな。」
俺はそう独り言ちた。
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