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200.アベル君と玄室の向こう。

200.アベル君と玄室の向こう。




 俺達はとんでもないドロップアイテムに沸いていた。

 「これは公平に分配するぞ。いいな。」


 俺がそう言うと、アンネが申し訳なさそうな顔をして口を開いた。

 「アベル様、私何もしていない。だからもらえません。」


 そう言って口をつぐむアンネ。

 「アンネ、僕たちが戦えんのは、お前が後ろに居てくれるからなんだぞ。お前とリーサが必ず治してくれる、助けてくれるって思っているから、命一杯剣をふるえるんだ。何もしてないわけじゃないのさ。さっきもローズを治しただろ。それだけでも僕たちは安心できるんだ。」


 アンネは黙ったまま少し頷き、両手を顔に当てた。

 自分で納得してもらうしかないからな、放っておくしかなかろう。


 「でも、私たちだけで換金分配してもいいのでしょうか?」

 そう言ったのはフレイだった。


 「そこな。わが御領主様達に見せて、こんなん出ましたけどって、言わなきゃならんかもしれん。まあ、勝手に換金しても、あの三人は文句を言わないと思うけどね。」

 俺は少しおどけて皆に言ってみた。


 「まあ、城へ持ち帰るのが無難ですね。」

 フレイは騎士らしい結論に至ったようだ。


 「では一旦城に持ち帰る。みんなもそれでいいかな?」

 「はい。」


 泣いているアンネと興味のないリーサ以外は返事をした。


 「じゃ、ちょっと休みましょうか。」

 そうフレイヤさんは言って、マーティーの死体から一番遠い場所に陣取った。


 俺はネコに入った背嚢から、行動食とカップを取り出し、水を生成してカップに入れ、みんなに配った。

 「ちょっと食べよう。かなり消耗しているはずだ。」


 行動食は小麦粉のような粉と砂糖、はちみつやドライフルーツを練って固めたものだ。

 あれだよ、カロ〇―メイトを思い出してもらうとそれに近いかもね。


 だから食べるとボソボソして口が乾くから、水分が必要なんだ。

 魔法使いのいないパーティーは大変みたいだね。


 魔道具も高いしな。


 水分と食料を補給した俺たちは立ち上がって玄室の出口のドアの前に立った。

 「ここから敵が変わったりするの?」


 俺はフレイさんに聞いてみる。

 「変わるわよ。もうレクチャーはしないから、あんたたちだけで何とかしなさい。」


 そうフレイヤさんは突き放した。

 俺達は出来るって認めてくれたのかね、それなら嬉しいけどさ。


 「じゃ、行こう。」

 俺がそう言うと、フレイが観音開きの扉を開けた。


 その先は前半と同じ薄明るい洞窟が続いている。

 斥候のローズが先行、その次はフレイといつものフォーメーションで進んでいく。


 途端に何か顔に貼り付く感覚があった。

 なんだろう?けど感覚として知っている。


 「ローズ!たぶん近くに居る、糸に気をつけろ!」

 俺はローズに注意するよう促した。


 クソが!昆虫と違うだろ。

 「アベル様!ラーノが一匹!」


 ラーノってのは、ご察しのとおり蜘蛛のことだ。

 おそらく厄介なんだろうってのは想像に難くない。


 あの糸がどんな性能を秘めて、どんな攻撃を仕掛けて来るのか、さっぱり今は分からない。

 無理に剣だけに拘るのではなく、魔法に頼る方向でも考えた方が良いだろう。


 そう考えていたら、敵を目視できた。

 そんなに大きくはない。


 せいぜいローチの三分の一程度だ。

 でも厄介なことが一つある。


 野郎、天井を這って移動してやがる。

 近づいて来たラーノにローズは間髪入れず暗器を投げ込む。


 しかし、巧みにラーノは避ける。

 そしてローズに向かい太い糸、いや糸じゃない、紐の太さのものを尻からひねり飛ばしてきた。


ローズは後ろに飛び紐を避けた。

ローズが避けた地面に、その紐が強い粘着力で貼り付く。


「あんなん張り付いたらやばいぞ。フレイ、紐を盾で避けるなよ。張り付いたら動けなくなるぞ。仕方ない、今回だけ魔法解禁する。」

俺はそう宣言して、剣を鞘にしまう。


そうして、右腕とその人差し指と中指を伸ばし、そこから、青白い炎が1mほど伸びる。

ガスバーナーの様に、激しく真っ直ぐに伸びた炎は、まるで剣のようだ。


ラーノはその間も俺たちの行動を阻害しようと、紐をあちこちに貼り付けていた。

俺はその紐を炎の剣で切り払い進んで行く。


紐は炎が当たる度、チリチリと音を立て燃えながら消失する。

それを見ていたラーノは様子見をするようにいったん下がった。


しかし俺はその到達地点にファイアーボールを叩き込み、ラーノは予定していた足場を炎で焼かれ、足場を失なったラーノは地面に落ちた。


その着地地点に迫り、落下してきたラーノの腹を長く伸びた炎が焼き貫いた。

そして地面に落ちたラーノはピクリとも動かなかった。

「終わったかな?」

残心を持ってしばらく時間をかけ、ラーノを観察した俺は声を上げた。


「やっぱり魔法を使うアベルちゃんは反則よね。」

そんなことを言うフレイヤさんに俺は




「それほどでもありますよ。」

と、言って、俺はおどけたのだった。




ここまで読んでいただき、有難うございます。

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