199.アベル君と死闘。
199.アベル君と死闘。
黒い物体はローズの暗器だった。
よくもあんなもん投げのモーションだけで、目標に突き刺すことが出来るな。
などと感心している暇はないんだ。
俺は顔を下げ、暗器を取ろうと藻掻いているマーティーの後ろに回り、腹を剣で突き刺してから、裂いた。
「ぐぎゃあ」
と、気味の悪い音を立て、マーティーは鎌を振り回す。
その予想の付かない鎌の動きに、ローズが一瞬止まった。
そこに鎌が飛ぶが如くやってくる。
鎌の刃の無い裏にローズは当たり、部屋の隅まで吹っ飛ばされた。
ありゃ、しばらく起きられないな。
などと思っている最中も、フレイはシールドバッシュや剣での攻撃でヘイトを取ろうとしていた。
フレイはヘイトを取ろうと躍起になるが、一番のヘイトを取ったのは、腹を裂いた俺であった。
おれはマーティーの鎌の攻撃を翻り、剣で受け、剣でそらし、ことごとく避けた。
ここまで、魔法も、ブレインブーストも使っていない。
このアベルの身体能力の高さだけで避けまくった。
この身体は、父さんと母さんの遺伝子が合わさり、さらに強化されたものらしい。
異次元のYouちゃんがそんなことを話していた。
とにかく動体視力、反射能力、筋力、持続力、記憶力からすべていい。
避ける、避ける、今の俺はまさに避けタンクだった。
しびれを切らしたマーティーが大きく鎌を振りかぶったその時、その鎌がデカい盾によってはじかれた。
みんな大好きパリィだ。
その瞬間、俺のミスリルの剣が、マーティーの鎌の付け根に滑り込み、鎌の付いた腕と身体を切り離した。
まだ片方の鎌を振り回して攻撃してくるが、目に見えてマーティーの動きは悪くなっていった。
見れば、俺の裂いた腹から内臓がはみ出し、それを引きずってマーティーは移動していたのだ。
その内臓がどんどんはみ出している。
それによって動きも悪くなっていった。
俺は鎌の無い方へ回り込み、羽の付け根を切断した。
ここにきての三次元攻撃は怖いからね。
そして、マーティーはガックリ身体を落とし動きを止めたので、俺は静かに近寄り、頭を落とし止めを刺した。
これが中ボス、マーティーとの戦の終了であった。
いや、まだ終わっていなかった。
「アンネ!ローズを頼む!!」
ローズは倒れたままの姿で、ピクリとも動かなかったので心配だったんだ。
「まだ息はあります!!治療しますね!」
そう言ってアンネは治療魔法をローズに掛けた。
俺がホッとしていると、フレイヤさんが近づいてきて俺とフレイの肩を叩いて口を開く。
「今回上手くやったじゃない。ローズちゃんだけやられちゃったけど、アベルちゃん、良く避けていたわね。フレイも最後の盾は良かったわよ。」
そう言って褒めてくれるフレイヤさん。
「ローズちゃんもやられちゃったって言っちゃったけど、クリティカルがあったからね。あれが無ければ、まだあなたたちはやっていたかもね。」
そう、ちゃんとローズのフォローもフレイヤさんは入れてくれた。
気を使ってんだね。
「アベルちゃん、はやとこ魔石採っちゃいなさいよ。」
フレイヤさんに急かされ、魔石の採取を行った。
「あれ?また何かあるよ。」
俺はそう言って魔石があった場所の奥にたたずむ石を持ち上げ、水魔法で洗った。
それは、透明に輝く石だった。
何?水晶的な何かかな?
などと俺が覗き込んでいると
「きゃっ!」
と、フレイヤさんの悲鳴が聞こえた。
「嫌だ!!アベルちゃん、これ金剛石よ!!どうしよう、フレイ、この大きさの金剛石なら、あんたもう働かなくていいわよ。」
え!?そんなに?
「アベルちゃん、キョトンとしているけど、その持っているモノ、大金貨30枚はくだらないわよ。」
ファ!3億ですか!
そりゃ高額だ。
これは俺の手に余るなぁ。
父さんか母さんに言って換金してみんなに配るか。
そんなことを話していると、幾分ふらつきながらローズがアンネを伴って、こちらのほうに歩いてきた。
「大丈夫か?ローズ。」
「はい、アべル様達だけでやったのですね。」
「俺達だけじゃないだろ、お前の一打が無ければ今頃まだやっていたよ。」
「そう言っていただけると嬉しいです。」
まだ具合が悪いのかうなだれるローズ。
「ところでみんな、これを見てくれ。」
俺は円になって座ったみんなの中心に、金剛石を置いた。
「なんという意思なんですか?」
アンネが聞いてきた。
「フレイヤさんが言うには、金剛石というらしい。」
「へー、金剛石。」
そう言って、アンネとローズは石を覗き込んだ。
「その大きさの金剛石は、大金貨30枚なんだと、」
「えーーーー!!」
二人の悲鳴が玄室に響いた。
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