198.アベル君と玄室。
198.アベル君と玄室。
俺は内省を止め、ローズたちの方を見た。
丁度止めを刺す途中だった。
フレイが盾を使いローチを上から抑え込み、ローズが素早くローチの首を掻っ捌いた。
二人のとてもいい連携だった。
負けらんねぇな。
そんな言葉が俺の心響いた。
そして俺たちは不快感に抗いながら、魔石をローチの体内から取り出し、この現場を後にした。
第二戦目もローチ。
第三戦目はクリケと戦歴を重ねていく。
良い事にアンネ達の出番はまだない。
あったとしても擦り傷程度だからね。
そして、玄室の扉の前に来たわけだ。
「フレイヤさん、ここで体力の回復を図るよ。」
「そうね、いい判断だわ。」
フレイヤさんは俺の判断を認めてくれた。
「では休みながら反省会ね。」
マジかよ!このオカマ!そんなんしたら精神的に休めねぇじゃねーか!
「アベルちゃん、第一戦目、駄目駄目だったわね。」
フレイヤさんが、ローチに転ばされ、危機的状況に陥った第一戦目のことを指摘する。
「ふう、そのとおりですが、何か?」
「何かじゃないわよ、分かってる?」
「分かっていますよ。あれは完全な慢心だ。同じ攻撃だろうと高を括った。俺の完全なミスです。」
「あら、もう内省していたのね。流石だわ。」
「そりゃ、あんなミス何度もしてられませんから。」
「それじゃ、この件はこれでお終いね。あと前も言ったけど、ヒーラーとの連携どうする?あなたたちが優秀なのは良い事だけど、いざって事もあるのよね。」
「それに関しては、その時になってみないとわからないですね。そのために怪我したり死んだりできませんから。でも状況の訓練をしておくのは必要ですよね。」
「そうね、そんな訓練をするのは良い事だわ。でも、これからの状況を見て図っていくしかないわね。」
「はい、そうですね。」
「では、ほかの人達、何か反省点ない?」
フレイヤさんは、パーティーメンバーに反省点を聞き出そうとした。
「タンク1、迎撃2で当たる事ってできないでしょうか?」
ローズがそんなことを言ってきた。
「相手が一体ならそれも可能でしょうけど、複数体居たらちょっと難しいわよ。各個撃破ねぇ、うーん、難しいんじゃないかしらねぇ。」
「フレイのヘイト管理が難しいだろうな。それにローチのようなスピードのある敵に対してだとやはり分散させられるんじゃないかな?でも、考え方は悪くないと思うよ。全員で当たって、素早く倒し、次に移る。各個撃破は戦術としては全うだ。ただ娘のダンジョンではそぐわないってだけで、ローズの意見は他では生きると思うよ。」
「駄目ですか。」
そう言ってローズはやや落ち込んだ顔をした。
「だから、局面によってはそれが必要になるって話だ。ローズの言い分を全部否定しているわけじゃないよ。いちいちそんな顔すんな。」
俺がこう言うと、頬を膨らませて
「はい!わかりました!」
と、言ってプイっと横を向いた。
「鼻っ柱の強いローズはそうじゃなきゃな。」
俺はそう言って笑うと、他の皆も笑った。
そのあと俺たちはマーティーに対しての対策を話し合った。
そして
「さて、話も終わったし、少し気持ちを落ち着かせたら入ろうか。」
そう言って俺は皆の集中力を促す。
その横でフレイヤさんはニマニマ笑っていた。
まったく、レベルの高い経験者はこういう時にうざい。
「いいかな?みんな、入ろう。」
そう言うと、みんなは立ち上がりそれぞれ準備をし始める。
そして頃合いを見たフレイが玄室の扉を開けた。
もちろん玄室の中央に居たのは、日本では大カマキリ。
もちろん日本でこんなデカいカマキリはいない。
中級ダンジョン中ボス、マーティーだった。
「みんな、打ち合わせ通りに。」
俺は静かに言葉を発した。
それを聞いたパーティーメンバーも静かに頷く。
そして俺の肩に居たリーサは俺から離れ、アンネの方に行った。
とにかくあの鎌がウザイ、しかも反射で動くのではなく、知性をもって振り回してくる。
あれをどうにかして止めなければならない。
「よし、いくぞ!」
俺がそう言うと、俺を含め前衛の3人が走り出す。
「俺が一回当たる!」
そう言ってマーティの懐に俺は入ろうとした。
しかしマーティーは巧みに鎌をクロスさせ、内側に入れないようにする。
そこへフレイのシールドバッシュが来た。
俺に集中していたマーティーは、6本の足でも支えきれず、わずかにノックバックする。
明らかにフレイへヘイトが向いた。
その裏から影が飛び出す。
ローズだ。
ローズはマーティーの踏ん張って止まっている足を狙って苦無のような短剣を振り下ろした。
それをマーティーは難なく足をずらし避けてしまった。
そしてマーティーは鎌を振り上げフレイに肉薄する。
「フレイ、盾を取りに来るぞ!」
俺はそうフレイに言った。
フレイは鎌で盾を引っ掛けられる前に、剣を振り上げ鎌を弾き返すことに成功した。
一瞬動きが止まったその瞬間、黒い影がマーティーの複眼に刺さった。
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