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196.アベル君と叱責。

196.アベル君と叱責。




 「これは見事な緑鉱石じゃないか。」

 身を乗り出しそう言ったのは父さんだ。


 「そうね、大きさも中々ね。これがクリケで出たの?」

 やはり宝石は気になるのだろう、母さんも口を開いた。


 「そうだよ、ローズが腹を裂いて倒したクリケの胸の中に入っていたのがこれ。」

 「そう、ローズ頑張ったわね。」


 そう言って母さんはローズを手放しでほめた。

 「でも何度か戦っているうちに、みんな疲れが出たんだろうね。僕も判断がくるってしまって、ローズを危険な目に遭わせてしまった。」


 俺がそう言うと、母さんが凄い顔で睨んだ。

 「どうしたの?はっきりとおっしゃいなさい。」


 「前衛は、僕とローズとフレイで当たっていたんだけれど、斥候と戦闘でローズの負担が大きくてね、ローズがクリケに噛まれてしまったんだよ。」


 「噛まれたくらいなら、アンネちゃんが治してくれたんでしょ?」

 母さんは俺の言葉を聞いて安堵し、また俺に聞いてきた。


 「うん、噛まれたというより、噛み千切られたと言った方が正確だね。右腕の骨まで露出していたから。」

 「なんですって!ローズ!大丈夫なの!?」


 「はい、奥様、怪我はアンネちゃんが治してくれましたから、このとおり。」

 そう言ってローズは母さんにけがをした部分を見せた。


 そこは、綺麗に傷ひとつない皮膚が広がっていた。

 「まあ、この部分が噛み千切られた部分だって言うの?アンネちゃんの治癒魔法凄いわね。」

 母さんは感嘆の声を上げた。


 「それはそうよ、私が修行してあげたんだもの。」

 そう言って胸を張るのはリーサである。


 「そうね、いくら聖女の力があると言っても、技術が伴わなければこうはいかないはずだわ。リーサちゃん、さすがね。それに、アンネちゃんも偉いわよ。良くローズを治してくれたわね。」


 母さんに褒められたアンネは顔を赤らめ俯いた。


 「だけど、アベル、フレイ、あなたたち二人が付いていて、なんて失態を!」

 ああ、とうとう俺たちの方に視線が来たか。

 

 横をチラ見すると、フレイは既に委縮していた。

 怒った母さんは怖いから、仕方ないね。


 「そうだね、この件に関しては僕の指揮能力の無さを露呈してしまったと言うほかない。母さんの叱責は甘んじて受けるよ。」

 「そんな簡単な問題じゃないのよ、アベル。もしかしたら、この場にローズがいなかったかもしれない。あなたそれが分かっているの?あなたの言葉は難しい言い回しで逃げているようにしか聞こえないわ。」


 「そんなことはないさ、みんなの命を一番に考えて行動していたよ。その時まではそのつもりだった…」

 俺がこう言うと


 「奥様、この失態は私自身の所為です。アベル様をあまり責めないで下さい。」

 ローズはそう言いながら、大粒の涙を流した。


 「ローズの失態自体、それはあるでしょう。自分が一番わかっているはずだわ。だけど、アベル、あなた後ろにアンネちゃんとリーサちゃんが控えているから、大怪我しても大丈夫だと思っていなかった?」


 うがぁ、痛いところ付いた来るな。

 確かにその意識は少なからずあった。


 あの二人なら、死んでも蘇生させてくれるからね。

 「ないと言ったら嘘になるね。母さんの言うとおり、僕の認識の甘さ、アンネ達がいるという甘えが出たんだね。ごめんなさい。ローズもゴメンね。負担を掛け過ぎてしまった。」


 「そんな、謝らないで下さい。私が弱いばかりに。くうぅぅ。」

 そう言ってローズは嗚咽を洩らし始めた。


 「アリアンナ、そんなに怒らなくても大丈夫よ。私たちがいるもの。」

 そうリーサがフォローを入れるが。


 「リーサちゃんたちがいないときの戦闘も考えなければならないのよ。はぐれてしまったら?二人の魔素が枯渇してしまったら?そういう最悪の状態を考えて行動しなければ、これから生きてダンジョンからは戻れないわ。」

 母さんの鋭い言葉が、俺と全員に突き刺さった。


 「アリアンナ、ここまでだ。」

 父さんの言葉が食堂に響いた。


 「ああ、そうね。ちょっと言い過ぎたかもしれないけれど、命を賭けるとは、どういうことかみんな分かったかしら?」

 そう、母さんはみんなに問うた。


 「はい!」

 全員声を合わせ返事をする。





 まあ、泣いていたローズと、暢気に構えていたリーサは別だが。



ここまで読んでいただき、有難うございます。

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