195.アベル君と保護者へ報告(ふう…
195.アベル君と保護者へ報告(ふう…
「フレイヤさん、今日はありがとうございました。」
俺は今日一日付き合ってくれたフレイヤさんにお礼を言った。
「以来だもの、お金さえもらえれば構わないわよ。引き続き依頼してくれるんでしょ?」
フレイヤさんは扇子で口を隠しながら、自嘲気味に返事をしてくれた。
「もちろん、まだ踏破していないからね。玄室の中ボスってどうなるの?」
「時間が立てば、復活するわよ。あんたなら、どうなってるの?って疑問を言うんでしょ?そういうもんなの。」
俺の疑問の先回りをするほど、まだ気心を知れたはないと思うんだけど、読心術では、向こうが上なんだろう。
「先に言われちゃったね。とりあえず、帰ります。ギルおじさん、フレイヤさん、ありがとう、またよろしく。」
俺はそう言ってソファーから立った。
「おう、行くときはまた報告待っているぞ。」
ギルおじさんは、気さくげな笑顔で俺に行ってきた。
「またね、依頼待っているわよ。」
フレイヤさんが俺に声をかけてきた。
俺は軽く片手を上げ、そのまま支部長室を後にした。
「さて、城に帰ろう。帰ったところでまた報告だろうけど、みんなもうひと頑張り、付き合ってね。」
俺は少しうんざりした調子で他のみんなに声を掛けた。
ところがみんなは疲れているのにもかかわらず、ニッコリ笑い
「大丈夫ですよ、一緒にご領主様のところへ向かいましょう。」
そう、フレイが言ってくれた。
それ達はギルドを出て、馬車に乗り城へ帰った。
城の入り口では、マーガレットが出迎えてくれた。
「アベル様、お帰りなさいませ。お怪我などありませんか?まだ10歳なのです、そんな危険なことをせずともよろしいじゃありませんか。」
マーガレットは俺のダンジョン入りは反対だった。
可愛がってくれているからね。
「マーガレット、心配してくれてありがとう。だけど、爺ちゃんにここで剣の修練してもらうだけじゃ、次の段階に行けないんだ。分かってくれとは言わないけど、見守ってくれるかな?」
実を言うと、もう何回もマーガレットには話しているんだ。
都度、説得はしてきたんだけど、もう説得じゃだめだと思ったのさ。
だからお願いにした。
「そこまでおっしゃるならば、このマーガレット、もう何も申しません。存分に修行に励んで下さいませ。」
マーガレットは強い口調で、しかし寂しそうな眼で俺に宣言してくれた。
「うん、ありがとう。ところで父さんたちはどこかな?書斎?」
俺は前を向いて歩きながら、マーガレットに聞いた。
「いえ、食堂でお待ちです。」
「うん、わかった。みんな行こう。」
そう言って俺は食堂に向かう。
食堂の扉を開けると、両親と爺ちゃん、ヨハンまでそろっていた。
「皆さんお揃いで、ただいま戻りました。」
俺は父さんと母さん、爺ちゃんに恭しくお辞儀をした。
「挨拶は良いさ、どうだった?ダンジョンは。」
父さんはわくわくした顔で聞いた来た。
普通、父親の冒険譚を息子がわくわくして聞くもんだろう?
逆じゃないか、まったく。
「父さん、安否確認とかしなくていいの?」
俺は父さんに訝し気に聞いてみた。
「そんなものは、みんなの顔を見ればわかるじゃないか。無事に帰ってきた。その内容が問題なんだ。」
相変わらず、父さんの目はキラキラ興味深そうに光をたたえている。
ふう、やっぱこの人は冒険者なんだな。
「ローランド、まずは皆を労ったらどうなのだ?」
爺ちゃんがそんなことを言ってくれた。
「ああ、そうだったね。気が急いてしまって、息子の冒険の内容が聞きたくってね。失礼した。皆、よく無事で帰ってきた。ご苦労。」
父さんが、父親として、領主としての労いの言葉を掛けてくれた。
「ローズ、リーサちゃん、アンネちゃん、ご苦労だったわね。あなたたち大丈夫だった?無理しちゃだめよ。アベル、この子達を守らなきゃだめよ。あなたはそれが出来るのだから。」
母さんが、パーティーの女性陣の心配をし、俺にプレッシャーをかけた。
それは仕方ないけどね。
「そのつもりだけどね。まあ、報告させてよ。」
俺がこう言うと爺ちゃんが口を開いた。
「そうだな、最初から聞こうじゃないか。」
そう言って俺の話を皆は聞き耳を立てた。
「知っていた、というより、父さんたちがフレイヤさんを使って僕たちを中級ダンジョンに導いたわけだけど。」
俺はジロリと父さんを見てみたが、相変わらずニコニコして、罪悪感の1ミリも感じていないようだ。
「そうだね、フレイヤと相談して、もう君たちは中級で大丈夫だろうって事になったんだ。あまり簡単すぎるのも経験にならないからね。」
そう父さんは言った。
「でも流石にいきなり戦うのは苦労したよ。最初のローチから強かったからね。気構えが無く剣だけで戦っていたら、大変なことになったと思うよ。」
「でも戦って勝ったんだろう?」
父さんは無邪気にそう言う。
この人大丈夫かよ。
息子の命とかもうちょっと考えてみても良いんじゃないか?
「まあ、勝ったからこうしているんだけどね。でもいきなり初手からファイアーボールの連射を使う事になるとは思わなかったよ。」
「ふむ、それで剣での対応は出来なかったのか?アベルよ。」
爺ちゃんが心配そうに聞いてきた。
剣の先生なんだ、俺が剣では何もできませんでしたなんて言われたら目も当てられないだろう。
「魔法を使ったのは最初のローチと、中間の玄室のマーティーだけだよ。あとは剣で戦った。みんなで相談してそうしたんだ。虫が焼ける臭いに辟易したしね。」
俺がそう言うと、父さんは、あ!そうかって顔をして笑い、母さんは思い出して渋い顔をした。
「それで、最初のローチを倒した時に出てきたのがこれさ。」
俺は背嚢から緑鉱石を食堂のテーブルに置いた。
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