190.アベル君とドロップアイテム。
190.アベル君とドロップアイテム
俺の方は片付いた。
ローズたちは!?
フレイがうまく盾で防御しながら、ローズがチクチク攻めている。
細い関節を狙うのは難しい。
なかなか当たらない攻撃を、ローズは粘り強く回数を重ねる。
一回ローズがフレイの陰に入る。
追ってきたクリケをカウンター気味のシールドバッシュが襲った。
ガン!
固い音が響き、クリケは後方に下がって動きを止めたその時、フレイの剣と、ローズの探検がクリケの前足の関節を襲った。
「ぎぎっ!」
苦し気に哭くクリケ。
間髪入れずにローズが左の太い後ろ脚を狙った。
しかし、クリケは避けようと片足だけを蹴って斜めに移動しようとするが、そこにフレイが待ち受けていた。
デカいカイトシールドでクリケを押さえつけると、ローズがクリケの後ろ脚を切断する。
勝負あったな。
なんて思った頃もありました。
クリケは片足だけで巧みにジャンプをし、ローズに覆いかぶさった。
「やばい!」
俺はそう言って走り出す。
しかし、クリケ数回痙攣すると、動きを止めた。
その下から、体液まみれのローズが這い出てきた。
「うわぁ。」
「アベル様!早く水掛けて!!」
「どうしよっかなぁ、お前、俺に臭いだの汚いだの言ってくれたからなぁ。」
「ごめんなさい!もう言いませんから、早く水掛けて洗ってください!!」
「ほら、ちゃんとこっち向け。
俺がそう言うとローズは素直に言うことを聴いて俺の方を向いた。
「かけるぞ~。」
俺はそう言って、両手から魔力操作でローズの頭に魔力を飛ばす。
そして手のひらから水を生成すると、魔力を放った照準に向け、水がそのとおりに飛んでいく。
けど、勢いよくは飛ばないよ。
ローズが可哀そうだからね。
魔力によって飛ばすから、重力に引かれることはないんだ。
俺の胸先三寸のスピードで飛ばせる。
便利だよね。
ローズの身体が露出した部分は大分綺麗になったから、革鎧の汚れを落とす。
水圧をちょっと強めに自動車の高圧洗浄の様な形で水を掛けた。
俺は〇ルヒャーより優秀なのだ。
まあ、だいたい終わったかな、そう思って俺は水魔法を止めた。
びしょ濡れのローズはマスクにしていたタオルで頭と顔を吹き始めた。
俺は火魔法と風魔法をの合わせ技で、ドライヤーを作った。
「ローズ、こっちおいで。」
ローズは俺のところに駆け寄って頭を下げ、まずモフモフの狼耳を乾かし始めた。
「耳からかよ。」
俺がそう言うと
「水で中が濡れて、気持ち悪いんです。」
「ん、そっか。」
俺は送風の範囲を広げてやった。
一とおり落ち着いたので俺は皆の方に向き直った。
「さて、解体だぞ。さっきやり損ねた二人だな。」
「はい。」
フレイとアンネのテンションが途端に低くなる。
仕方ないね、腕を突っ込まなければならないんだもの。
「そんな落ち込まなくていいわよ。あの虫の魔石は胸の下の方にあるから、ナイフでちょっと切れば出てくるわ。」
ファ!!そんなことあるか!!
「アベルちゃん、残念だったわね。」
フレイヤさんが俺をからかうように言ってきた。
「べ、別に構わないし!」
俺は虚勢を張る。
フレイヤさんの言葉を聞いた二人は、途端ににこやかになり、獲物の方に向かっていった。
「おい、ばらけるな。一人ずつだ。」
「俺は二人に注意した。」
そして俺がまずアンネの方に向かうと、他の連中も俺に付いてくる。
「アンネ、ナイフは持ってきたか?」
「はい、持ってきてあります。」
このナイフは、母さんが護身用に配ったものだ。
鋼で出来た、わりと良い品である。
俺が倒したクリケの前にみんなが集まる。
「アベルちゃん、クリティカルとはやるわね。」
フレイヤさんは俺が倒したクリケの死骸を見て褒めてくれた。
「うん、手こずったけどね。」
ちょっと謙遜、でも手こずったのは確かだ。
「よし、アンネやってみよう。」
俺がそう言うとアンネが手袋をつけて、頭が切り落とされた虫の胴体を持ち上げひっくり返した。
フレイヤが指導して、無事魔石を『汚れることもなく』取り出すことに成功した。
クソが!こんなことある?
まあ、仕方あるまい、次行こう、次。
てなわけで、ローズが盛大に体液ぶちまけた虫のところに来た。
フレイもナイフを用意し、手袋をはめ、虫をひっくり返し、さっきのふりの指導どおりに胸をナイフで切り裂いた。
フレイが慎重に魔石を取り出すと、その下にまだ鈍く光るものがある。
「フレイ、なんかまだあるな。とってみろ。」
俺がそう言うと、フレイは素直に
「はい。」
と言い、さらに奥まで手を入れた。
そしてその何かをまた慎重に取り出した。
それは体液でぬらりと濡れ、汚れていた。
そうだな、大きさは拳の半分程度の石に見えた。
「フレイ、地面に置いて。」
俺が言うと、フレイはそれを地面に置く。
そして俺の水魔法で洗浄した。
洗って綺麗なったそれは、緑色に輝く、宝石だった。
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