187.アベル君とダンジョン(初心者向け)
187.アベル君とダンジョン(初心者向け)
俺たちは今、ダンジョンの入り口に立っていた。
並んだ俺たちの前には鬼軍曹じゃなく、オカマが立っていた。
「じゃあ、あんたたち、初心者ダンジョンだからって舐めんじゃないわよ。わかっているわね。」
「はい!!」
「よろしい。本気で危なくなるまでは、私は手出ししない。領主の息子がキャリーされているなんて、思われたくないでしょ?ねぇ、アベルちゃん。」
「当然であります!マム!」
直立のまま俺はフレイヤさんに返事をした。
「あら、いいわね。いつでも本気でマムになってあげるわよ。」
言いながら、軽くしなをつくフレイヤさんを見て
「それはやめて。」
俺は即座に否定した。
緊張感のある様なない様なそんなメンバーだが一応ご紹介。
俺、アベル・ヴァレンタイン 10歳。 剣と魔法で邀撃。主に前衛。 装備は革鎧とミスリルの剣。手甲、脛当て。
リーサ ∞歳 ヒーラー 装備は自前の革鎧。神技で出した。
フレイ 26歳 タンク 装備はヴァレンタイン辺境伯騎士団プレートメール。そのカイトシールド、スチールロングソード。
ローズ 15歳 斥候 装備は胸当て、手甲、脛当ての軽装備。
アンネローゼ 10歳 ヒーラー 装備は革鎧、手甲、脛当て。
お姐、じゃなかったフレイヤ 3?歳 スーツのような服に扇子のようなもの。こんだけ?
うちのパーティーは安全第一。
ヒーラーであってもヒラヒラのローブだけなんて許しませんからね。
本当は、ヘルメットと安全靴も欲しいくらいだ。
では皆さんご安全に!!
もちろんこんなことは声に出すわけもなく、フレイヤによる注意事項を聞いている。
そんな俺たちの周りにも、もちろん他の冒険者がたむろしている。
「なんだ?あの連中?」
「チッ!ガキと雌獣人のパーティーかよ、どこの坊っちゃんのキャリーしてんだ?」
などと聞こえてきた。
後者を言った奴は何故か何もないのに、その場に崩れ落ちた。
不思議なこともあるものだ。
「アベルちゃん!!ダメよ!
俺はニッコリ笑って、首を横に振った。
「ホントに怖い子ね。どんな魔法を使うか聞いておいて良かったわ。」
「俺自身は、そんなに怖い人間ではないと思うんだけどね。」
「分かったわよ、続けるわよ。」
多少騒然となったが、なぜか俺たちに突っかかるような者たちはおらず、フレイヤの説明は続いた。
説明を聞き終えた俺たちは、ローズを先頭にダンジョン内部に入って行った。
ダンジョン内部はいわゆる洞窟の体をなし、地面には岩や石がゴロゴロと転がっている。
しかし、ほんのり明るいのだ。
なぜ明るいかは謎。
誰も証明できていない、というより解明しようとしていない方が真実だろう。
でも薄明かりでしかないので、俺たちより夜目が利くローズは斥候としてうってつけなんだ。
そのローズが止まれのハンドサインを出した。
即座にみんな止まる。
ハンドサインはいくつか俺が提案し、皆に覚えてもらった。
フレイヤさんにも教えてある。
ローズは、静かにそして迅速に俺のそばに来た。
「ローチ3体です。」
初手ゴキブリ。
マジかよ。
「とりあえず、真正面から取り組みせずに、僕の魔法がどこまで通用するのか試してみるよ。みんなそれでいい?」
「他の4人は俺に頷き返した。」
まずは窒息。
俺は最初にローズが身を潜めたポイントに進んだ。
俺の後ろからフレイが付いてくる。
何かあった時に盾役をするつもりだろう。
薄暗いダンジョンの中で、畳半畳くらいのデカいGが身を潜めている。
そこから離れて2匹確認できた。
さてと、俺は魔力操作で箱を作り、一番近いGにその箱をかぶせ酸素を注入する。
そして、その酸素を抜いた。
ああ、ちなみにダンジョン入り口のクソ野郎が気絶したのはこの魔法だ。
とりあえず観察していると、足はモゾモゾ動いているし、効いているとは思いない。
「やっぱりか。」
俺がつぶやくと、後ろに居たフレイが反応した。
「何がですか?」
「ダンジョンの魔物は空気が無くても動けるって話さ。」
俺がそう言うと、フレイは少し大きな声で
「え!?」
と、呻いた。
「こら。」
俺はのんびり叱る。
相手は気づいていなかったのでね。
「すみません。」
フレイは平伏しそうな勢いで誤ってきた。
「でも、どうするんです?」
フレイが聞いてきた。
「手持ちの攻撃魔法は後三つ。一つ、酸素爆発。ダンジョンの密閉空間でそれはあり得ない。ガストーチ。これは近接用だから駄目。後はファイアーボールだな。」
「魔改造の方ですか?」
「あれもここじゃ使いたくないなぁ。連射の方だね。」
「ああ、盗賊たちを葬った。」
「まあ、それは言うなよ。」
初戦闘で加減が分からなかったんだ。
俺は狙いをつけやすい様に状態を起こし、まずは右腕を上げ、指を広げる。
指の先から魔力操作で魔力を飛ばす。
それを手前のGに照準を合わせ、ファイアーボールを連射した。
いきなり襲ってきたファイアーボールに驚いたのだろう、パニックになったようにGは正面に走り出した。
襲って来たファイアーボールが連続で当たる。
Gの柔らかい羽根の部分が燃え出し、触覚もなくなり、前足も欠損する。
しまいには、自ら染み出した油に引火し全身が燃え出し動きを止めた。
「やった!アベル様!」
フレイが興奮したような声を上げる。
しかしまだ二匹居る。
「まだ来るぞ!」
残りの二匹が地を這ってやって来るのが見えた。
俺は両腕を上げ越しを前に照準し、全部の指からファイアーボール、計十個を並列に出した。
それを連続斉射。
ところがだ、向こうもさるもの、跳びやがった。
俺は横に向けていた両手を縦にして、左右に扇ぐ。
するとファイアーボールは左右に波打つように発射されて行った。
上下方向を塞がれ、横にも壁を作られたG二匹は数発のファイアーボールが当たり、地面に落ちる。
そこから、もう俺のファイアーボールから逃れるすべがなくなり、二匹とも燃え上がった。
ここまで読んでいただき、有難うございます。
☆の評価ポイントとブックマークで得られる作者の栄養があります。
よろしければ、下にある☆とブックマークをポチっとしていってください。
どうかよろしくお願いします。
この作品を気に入ってくださると幸いです。