184.アベル君と冒険者のススメ。
184.アベル君と冒険者のススメ。
みんなタグを手に取り、思い思いに眺めている。
このたg…
「アベル!私のが無い!」
ったく、今タグの説明しようと思ったのに
「リーサのタグが無いって、当たり前だろ。ここに来る馬車の中でお前はパーティメンバーになったんだから。」
「おう、ちびっこいのもメンバーなのか?」
そうギルおじさんが聞いてきた。
「そうです、こう見えても一流のヒーラーなんですよ。」
俺がこう言うと
「イヤだぁ、アベルったら、ホントの事でも真面目に言われるとテレるぅ。」
「こういうところが抜けているんですけどね。」
と、俺は付け加えた。
「もう!」
と、言いながら、飛び上がって俺の肩を踏みつけるリーサ。
「ああ、すぐ準備するよ。おちびさんのデータがいるな。名前、年齢、種族、出身なんかが分かればいい。」
ギルおじさんが気さくに聞いてくれた。
でも、神に年齢とか、どうすんだよ。
「名前はリーサ。年齢は800歳を超えたあたりから数えていないわ。変わらないんだもの。」
事もなげにリーサは答える。
回りの皆が驚くのが見えた。
俺も初めて聞いた設定だが、おそらく1500歳は超えている。
なんたって、この国を1500年前に設立した、ノヴァリス英雄王を見ているんだから。
「リーサちゃん、そんなに生きてきたの?」
母さんが聞いてきた。
「そうよ、アリアンナ。敬いなさい。」
無礼にも我が母上に上から目線で物申すリーサに俺は
「居候が威張ってんじゃないの。」
と、突っ込みを入れた。
「スイマセン…」
いつかの俺をまねしたのか、リーサは縮こまって謝罪をした。
「いいのよ、リーサちゃんには何度もアベルが助けられているんだから。」
そう言って母さんは優しく笑いかけた。
「続きいいかい?」
ギルおじさんが促し始める。
「種族はフェアリー、妖精種よ。出身は東の森、それ以上は言えないの。ごめんなさい。」
「いや、ここまで分かればいいよ。ソフィア。」
「はい。」
とだけ言ってソフィアさんは頷き、部屋から出て行った。
「さて、タグを配られている者たちは、データが合っているか確認してくれ。」
さあ、このタグの説明しようか。
タグ自体は魔石でできている。
魔石を薄くそいで、穴を開けたところに紐をとおしているだけだ。
そして、さっき言ったような個人のデータが書いてあるだけ。
まあ、Fという、ランクもキッチリ書いてあるんだが。
役割としては身分証明と、前世の米軍のドッグタグと同じものだ。
「間違いがないなら、首から下げてくれ。」
ギルおじさんがまた促し、俺たちは言うとおりにタグを首から下げた。
「良し、下げたな。おめでとう。これでお前たちは、立派な冒険者だ。」
そう言って、ギルおじさんとフレイヤさんが拍手をしてくれた。
そういや、フライヤさん、ずっと黙ったままだな。
「さて、もう一つ議題があったんだな。」
ギルおじさんが声を出した。
「そうだね。僕らのパーティーの随行人として、フレイヤさんをお借りしたくて参上したんだ。」
「イヤよ。」
へ、速っ!!
フレイヤさんに速攻で断られた。
「理由を聞いても?」
「そいつがいるからよ。」
彼は扇子のようなもので、フレイを指した。
あれ。兄弟仲悪いのかな?
「兄弟仲悪いの?」
俺は率直に聞いた。
「悪くないわよ。ガキの頃からそいつを面倒見たの私だもの。」
「そいつ言うなよ!」
フレイがいきなり怒鳴った。
「あら、ゴメンね。お前。」
「くっ!」
フレイは、母さんがいるのに気づいたんだろう、声を荒げるのを止めた。
「今はいっちょ前に騎士ぶってさ。そしてまた冒険者?なんで私が誘ったときはやんないで、アベルちゃんが誘うと冒険者になんのよ!」
くっだらねぇ、そんなつまんないことで断るなよ。
「フレイヤさんはフレイを冒険者にしたかったんだね。」
「そうよ。そしたらあいつは騎士になるって言ってさ、家を出て騎士団の寮に住み始めたのよ。」
「自主独立は男子の本懐だと思うけどな。」
「でもぉ、心配だったのよねぇ。」
「わかるけど、じゃあフレイはなんで騎士になったの?」
「さっき言ったように、兄に育てられてきました。それはもう手厚く。でも、危険な仕事をしてまでって思ったのです。私自身、冒険者の様に博打の少ない、安定して給料の得られる仕事で、兄を煩わせたくなかったのです。」
突然母さんが口を開いた。
「フレイヤさん、いいじゃないの、これからまた一緒に冒険できるんだから。私なんて、アベルと行きたいのに駄目ってローランドに言われたのよ。酷いと思わない?」
「駄目よ、いくら世の男どもを震え上がらせた、お転婆魔法使いのお願いでもだめ。」
「もう、古い二つ名使わないで、二児の母なんだからね。」
「やっだぁ、まだまだ全然いけているわよ。羨ましいくらい。」
「あらやだ、嬉しい。やっぱり私も現役復帰しようかな。」
「いいんじゃない?ねぇ。アベルちゃん。」
アベルちゃんじゃねぇ!
「母さん、仕事あるでしょ。無茶言わないの。」
「あんなの、ヨハンとネスがいれば何とかなるんじゃない?知らないけど。」
やべぇ、この人マジで冒険者モードになろうとしてる。
俺は嫌な予感がしてギルおじさんを見た。
彼は一瞬俺を見てから目を伏せ、首を振った。
ギルおじさんも母さんには敵わないのか。
「そう、母さんは城の仕事をないがしろにして、自分の享楽だけに生きるってわけだね。」
「誰もそんなこと言っていないでしょ。ちょっとフレイヤさんの言葉に乗っただけよ。ちょっとだけ。」
「ちょっとだけね。でさ、フレイヤさん。どうしても嫌っていうのはわかったよ。他を探す。みんな帰ろう。」
そう言って俺は席を立とうとした。
「待って!待ってよ、アベルちゃん。協力するわよ、すぐ拗ねるんだからぁ。」
フレイヤが両手を胸の前で合わせながら、体をよじる。
キモイ。
「では、フレイと仲良くできる?」
「するわよ、元はと言えば仲の良い兄弟なんだから。ね、フレイ。」
フレイヤの言葉に、フレイが口を開いた。
「まあ、仲は良かったですね。」
「うん、じゃ、フレイヤさん、僕らパーティーのサポート頼むよ。ギルおじさんもいいよね。」
「おう、フレイヤがいいってんなら文句はねぇ。ただこれはフレイヤへの依頼発行ってことにしてもらうぞ。」
「それは勿論。」
俺はそう言って、小さくため息をついた。
疲れた。
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