182.アベル君とギルドへ出発。
182.アベル君とギルドへ出発。
程無くして母さんと、パーティーメンバーで馬車に乗って冒険者ギルドに向かった。
その馬車の窓から飛び込んできた影があった。
「私も行く!」
そう言ったのはリーサだ。
「リーサもパーティーに入るの?」
俺がリーサに聞いてみた。
「そうよ、ヒーラーが二人の方が安心でしょ。」
そう言って空中で胸を張るリーサ。
「僕は良いけどみんなはどう思う?」
今はパーティーだ。
俺だけの意見を通してはいけない、皆の意見も必要なのだ。
「俺は構いません。」
父さんたちの前じゃなくなったフレイの一人称が俺に変わった。
俺達だけで行動するときは許しているんだ。
変に気を使うと、思考が鈍ることがあるからね。
で、フレイは賛成と。
「リーサちゃんが入るのは心強いです。」
こう言ったのは、飛び切り美少女クオーターエルフのアンネだ。
リーサの聖女だからな。
断るわけがない。
あと一人。
「えー!リーサちゃんはいるんですか?アベル様にちょっかいばかりかけるんじゃないんですか?」
こう言い始まったのは、ローズ。
ローズも15歳になり、みるみる大人の女性っぽくなった。
胸部は、うん、まだ15歳だ、成長の余地はあるさ。
でも、もう彼女も成人だからね、子ども扱いは出来んよな。
「嫌だ、ローズったら私とアベルの仲をやきもち焼いてんの?」
こう言い放つのはリーサというフェアリーの身体に受肉したおちゃらけた神、トレーサだ。
「そんなことありません!アベル様がリーサちゃんを入れると言うならば従います。」
こっちはまだ俺のお付きメイドが抜けないらしい。
「リーサが入ってくれるのは俺も心強いな。母さんも俺たちの怪我を心配していたしね。ね、母さん。」
「そうね、アンネちゃんとリーサちゃんがいるなら、どちらが怪我をしてもサポートできるもの、安心よね。」
母さんも満足げに答えた。
割と母さんとリーサの相性は良い。
お互いサバサバしている所為かな?
「というわけで決まりだな。ローズもいいね。」
「はい、承知しました。」
ちょっと不満げに答えるローズ。
まあ、いいか。
ちょっとした喧嘩みたいなものは、今までもあった。
でも死のやり取りの中では許さんからな。
「アベル様、ギルドにつきます。」
御者さんが俺に教えてくれた。
「うん、ありがとう。」
そう返事をして、馬車の窓からを覗くと、そこは冒険者の街という言葉にふさわしい光景が広がっていた。
「今日も賑わっているね。」
「本当にね、私もあの中に居たんだわ。遠い昔のよう。」
まあ、実際母さんが冒険者をやめて15年以上経過したんだ。
遠い昔と言っていい、なんて本人の前で言っちゃだめだ。
怖いからね。
ギルドの前で馬車が停車した。
周りに居た冒険者たちは、一斉にこちらを覗き込む。
あまり貴族の馬車なんかはこないだろうからな。
最初にフレイが降り、周りを見渡す。
そしてローズ、俺、アンネ、そして母さんだ。
リーサ?俺の右肩に座っている。
定位置ってやつだ。
周りはざわざわ騒ぎ出した。
まあ、見た目だけでも特異な連中が降りてきたから仕方がない。
身長は180㎝に届かずちょっと低いが、いかにも出来る雰囲気が出てきたフレイ。
美少女メイドのローズ。
そして飛び切り美少女エルフのアンネ。
そしてもう一人、大人の雰囲気ムンムンの母さん。
俺?自己評価低いからパス。
でもリーサが肩に座っているから、目立つんだよな。
「あれ、ご領主様の奥様だ。」
「ではあの可愛い坊主が、至宝か?」
「あのメイド服の獣人、可愛い。」
「キャ!見張りの騎士様カッコいい!!」
もうね、品評会ですよ。
「さあ、行くわよ。」
人の目なんて、今までいくらでも引き連れていた母さんが、どこ吹く風で歩き出した。
それの後ろを我々が歩く。
「フレイ、モテるな。黄色い声が出ていたぞ。」
「アベル様やめて下さい。任務中です。」
「固いな、お前。だから彼女が出来ないんだ。」
「今に見てろですよ、飛び切り美人を連れてきますから。」
「ああ、そう。母さん、紹介しようと思ったお嬢さん、フレイが断るって。」
「ああ、酷いですよアベル様…」
途端にうなだれる、フレイ。
「ほら、馬鹿言ってないで歩く!」
そう母さんに喝を入れられ、我々はギルドの玄関前まで来た。
するとどうだろう、もの凄く美人のエルフが微笑んで出迎えてくれた。
ギルド支部長秘書のソフィアさんだ。
「ようこそいらっしゃいました、アリアンナ夫人。それとアベル様。随分と大きくおなりになりましたね。あと、まあ、ローズちゃんとアンネローゼちゃん!?二人とも綺麗になって。」
「ソフィアさんこんにちは。今日は僕らのギルド登録に来たんだ。」
話の止まらなそうなソフィアさんを俺はさえぎった。
「すみません、承っております。中へどうぞ。」
そう言ってドアを開け中に促してくれた。
俺達が中に入ると、ドアの外が、ワッ!という歓声に包まれる。
「どうしたのかな?」
不思議に思った俺が口に出した。
「アベル様達が中に入ったので、きっと噂話でもしているんですよ。低いランクの子たちはお貴族様を見たことないですから。」
状況をソフィアさんが説明をしてくれた。
「なるほど。」
俺は頷いて、歩みを進めた。
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