181.アベル君と随行人選定。
181.アベル君と随行人選定
「フレイヤって、B級冒険者だった、あのフレイヤかい?」
父さんはやや驚いた口調で俺に聞き返した。
「そう、あのフレイヤさん。実は、フレイのお兄さんなんだよ。」
「え!?そうなの?」
今度は母さんが驚きの声を出した。
「ええ、フレイヤは私の兄です。」
フレイが俺の了解を得て発言した。
貴族社会はこういうところが面倒だ。
覚えている人いるかなぁ。
冒険者ギルドの“お姐”フレイヤ副支部長。
ギルおじさんの証言に従えば、B級冒険者のトップを走っていた凄腕。
なにがあったか知らないけれど、A級には上がれなかったらしい。
LGBTQ差別とかじゃないと思うよ、てか、思いたいけど、この国のこういう問題は俺自身まだよく分かっていない。
基本王族貴族がスタンダードを作る世界だからね。
異分子とされれば隠れて暮らすしかないんじゃないかな。
でも、あいつらに前世でいい思い出はないけれど、ここの場合はどっちでも俺はいい。
要は、フレイヤさんが凄腕という事実だけでいいんだ。
おまけにフレイの兄っていうところに面白味がある。
堅物っぽいフレイと、お姐のフレイヤ。
同じ腹から生まれたのかと不思議だよね。
そういや北欧神話だと、フレイが兄でフレイヤが妹なんだが。
まあ、それはいいか。
またリーサとアルケイオン様でぶっちゃけトークをすればいい。
「僕はまだ会ったことが無いんだけどね、人となりはギルバートから聞いている。腕は確かだって話だね。」
父さんが話を戻した。
「僕は随分前のギルドの騒動の時に会っているんだ。ローズとアンネも会っているよね。」
俺は二人に話しかけると、二人とも黙って頷いた。
「その時の僕の感想は、腕だけではなく、頭もよく切れるっていうところが彼の持ち味だね。」
そう俺は、フレイヤに会ってギルドの問題に対峙した時の感想を言った。
「なるほどね、その腕と知力、そしてフレイのコネがあるからフレイヤに頼むって事かい?」
「そうさ、どう思う?父さん。元冒険者の知見で考えてくれると有難いな。」
「それは出来るけれど、今は領主に重きがあるからね。領民と家族、どちらの事も考えなきゃならない。親父、アリアンナ、二人はどう思う?」
父さんは母さんと爺ちゃんから意見を聞いた。
「いいんじゃないかしら?アベルが襲われても、自分で何とかするでしょう。」
「奥様、さすがに兄はそこまで…」
「ゴメンね、フレイ。ちょっとした軽口よ。」
「はい、私こそ口をはさみ申し訳ありません。」
フレイは生真面目だな。
しかも兄弟思いだし、いい家族なのだろう。
「わしが付いて行きたかった…。」
ぼそりと爺ちゃんが言う。
「今回初めてのダンジョンだからね。僕らも慎重にしないと。ダンジョンに慣れている冒険者の人が適任だと思ったんだ。ごめんね、爺ちゃん。僕らが慣れたら爺ちゃんが連れて行ってよ。」
「うむ、きっとだぞ。アベル。」
そう言って爺ちゃんは笑った。
「決まったな。それじゃ冒険者ギルドでアベルたちを登録しないと。」
父さんがこう言うと
「それは私が連れて行くわ。そのフレイヤさんにも挨拶が必要でしょう?」
と、母さんが返した。
「そうだね、よろしく頼むよ。」
そう言って父さんが承認し、僕らはパーティーとなったのである。
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