180.アベル君とダンジョンパーティ。
180.アベル君とダンジョンパーティ。
10歳になって、身長も高くなった。
足もだいぶ速くなったし、体力も付いた。
魔素タンク量も増えるという、思わぬおまけも付いてきた。
大きくなったな、俺。
さて、本題である。
ここは父さんの執務室。
そこに居るのは、父さん、母さん、爺ちゃん、俺、フレイ、ローズ、アンネローゼだ。
何故この7人がいるのか。
俺、フレイ、ローズ、アンネローゼで1パーティーだからである。
いや、目の前に並んだ大人たちを説得しなければならないのだ。
「このパーティーに致命的な穴はないと思うんだけど。」
俺は、切り出す。
「まあそうだね。アベルとフレイのコンビでも初心者ダンジョンは踏破出来るんじゃない?でもローズとアンネちゃんの実力は未知数じゃないかな?」
父さんが女子二人の能力に疑問を呈した。
「ローズはヨハンの、アンネはリーサの許可は得たよ。本人たちもやる気だし、僕も実力を見たけど、実力も、これからの伸びしろも十分だと思うんだ。」
「ローズ、ヨハンの訓練は済んだのかい?」
父さんは、ローズに質問を向けた。
「まだ完全とは言われていません。しかし、斥候としてのスキルは認めてもらっていると自負してます。」
「うむ、ヨハンがそこまで言っているのか。」
「ヨハンが斥候としての腕を認めているのなら問題ないんじゃないか?」
爺ちゃんが父さんに意見をした。
「そうだね。」
そう言ってから黙り込み目を伏せる父さん。
良い天気の気持ちいい風が、執務室に入ってくる。
しかし、母さんが黙っているのが怖いね。
「アンネちゃん、治療魔法と蘇生魔法はもう完璧?トレーサ様の聖女なんだから、出来ると私も信じているけれど、マリアさんから預かった身、あまり危険な目には遭ってもらいたくないのよ。」
母さんは、あくまで母親目線か。
なんとなくわかるけれども。
「リーサちゃんから訓練は毎日受けていました。完璧かと問われると、ちょっと厳しいと思います。でも、アベル様と同じく身体が大きくなったら、魔素タンクの貯蔵量も増えました。治療魔法の回数もグンと多くなったのです。」
「確かに、騎士団員の些細な怪我は、街の治療師に頼まずアンネローゼが治してくれていたそうだな。」
爺ちゃんが最近のアンネの動向を話す。
「でもやっぱり心配なんだよな。」
顔を上げた父さんがポツリと言った。
気持ちは分かるがな、俺たちの成長のために必要なことだとわかっているだろう?父さん。
「でも、セイナリアでした約束だからね。」
俺はピシャリと言った。
「うん、アベルだけなら問題ないんだけれどね。誰か随行すればいいんじゃないか。本当に危険な時以外手出し無用で。」
「あら、初めからそれにすれば良かったんだわ。」
「そうだな、それは良いアイディアだ。」
母さんと爺ちゃんも父さんの案で問題なさそうだ。
さて、これで喧嘩にならなければいいんだがな。
「じゃあ、僕が行くよ。君らも問題ないだろ?」
「駄目よ、あなたは仕事があるじゃない。ここは私がいいのだわ。」
「アリアンナも学校の長の仕事が出来たのではないか?」
そう、母さんは現在、官僚学校の校長を務めている。
「お義父様、それはそうですが、やはりここは母親が行くべきでは?」
ほら、始まった。
まあ、爺ちゃんが一番適当な人選だと思う。
ただ、他の二人よりダンジョンに慣れていない、それだけが問題だ。
俺には、一人当てがあった。
あまり頼りたくはないんだけどね。
「三人で随行の喧嘩するなら、僕が他の人に頼むよ。」
俺は、言い争っている3人にそう言った。
「いったい誰に頼むって言うのよ。」
母さんが子供っぽく口をとがらせて俺に言い寄ってきた。
「冒険者ギルドのフレイヤさんだよ。」
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