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179.アベル君と時が流れて。

179.アベル君と時が流れて。




 セイナリアから帰って、5年経った。

 その間、一番驚くべきことは、母さんとロッティーが酸素を生成できるようになったことだ。


 初めてロッティーに実験を見せてから1年半でロッティーは気体の中に酸素があり、それを呼吸で吸収し、燃料を燃やすことに必要だと理解してしまった。


 そこからは生成できるまでに時間はかからなかった。

それから数ヶ月経ち、母さんが酸素の生成に成功した。


凄いことだよ。

科学のかの点も知らない状態から、見えない酸素を発見、研究し、どういうモノなのかイメージ出来るようになった。

ロッティーは天才だと思っていたけれど、母さんも魔法に関しては天才なんだよ。

何よりイメージする力がずば抜けているんだ。


俺は彼女らに使用の注意事項をレクチャーし、魔改造ファイアーボールXを生成、撃つ練習をした。

でもね、欠点もでてきたんだ。


それは魔素の消費が激しいこと。

俺が撃っていた青白い炎のファイアーボールは、優に50発以上は撃てるが、彼女らの魔素溜まりでは、十分の一に満たない数しか撃てなかった。


彼女たちは俺がレクチャーした魔素の圧縮を出来る分、一般的な魔法使いより魔素溜まりに貯蔵できる量が多い。しかし5発程度しか撃てなかったのだ。


「これでは、必殺技にもならないわね。」

アリアンナ・ヴァレンタイン談である。


酸素爆発も家屋を吹き飛ばされる程度、酸素生成からの酸素消去による窒息は生成したものを消去するという概念の理解に苦しみ、未だ成功はしていない。


まあ、爆発も、窒息も使わないほうが良い魔法だからね。

「でも良いのよ。貴方がこれで何をしていたのか理解できたもの。今度からはこれで何が出来るか発見したときは、必ず言うのよ。」


俺の保護者として、魔法に関しては見守る決意が強い母さんであった。


それから時は経ち、俺が7歳、ロッティーが12歳になった。


そして、ロッティーはセイナリアにリサを伴い旅立って行った。

魔法大学校に入学する為だ。


ああ、 うん、大変だった。

何がって、俺と離れたくないって。


こうなる事は、両親も俺もメイド勢からヨハンまで、全員知っていた。


「向こうで頑張り、その成長をアベル様に見せつけるのです。」

リサがこう言ったらしい。


ここに居たのでは、俺の後追いになってしまうと気がついたロッティーは、大学校進学を決めたのだ。

勉強より、向こうでいい男でも見つけてくれると有り難いのだが。


住むのは基本、別邸だ。

セントクレア家にもちょくちょく顔を出しているそうだ。


極稀に王城へも呼ばれることがあるらしい。

オスカーめ、やってんな。


 まあ、まあ、オスカーに気が向くことは良いことかもしれない。

 姉が王太子妃とかちょっと面倒臭そうで考えたくはない。

 

 俺に気が向かなくなるなら、それでいい。

 寂しくなんかないよ!


 マジで。


もっとも、ロッティー自身は恋愛感情から程遠く、研究に日々邁進しているらしい。


さて、俺の話をしよう。

剣術の修練は続いている。


セイナリアでトラウマを克服し、爺ちゃんとの打ち込みが出来たときは、ちょっと涙ぐんでしまった。

爺ちゃんも驚いていた。


よって型や素振りだけではなく、爺ちゃんの胸を借りて打ち込みから立ち合いに励むようになり、

今では軽く試合もするようになった。


勝てないけどね。


ブレインブーストを発動すると、なぜか爺ちゃんの切っ先が速くなる。

先読みされるのがムカつくらしい。


魔素による視覚の強化、また魔素によるグリコーゲンの変質によって起こる脳の演算力速度の強化。

それにより、俺の周りが遅く見える能力、それがブレインブーストだ。


それを上回るスピードで爺ちゃんの剣の切っ先が迫ってくるんだ。

避けられんて。


俺がブレインブーストで先読みをする。

その体の動き、筋肉の移動などで、どう俺が動くか分かるんだそうだ。


 あと気配だね。

 “殺気”とか言うけれど、相手が打ち込もうとする場所、狙いどころが分かるんだよね。


 爺ちゃんと父さんは。

 二つ名持は伊達じゃないんだよ。


 でもこれは、俺も何としても習得しなければならない。

 魔法に夢中になって、無防備な姿をさらすわけにはいかないからね。


 せっかくの剣と魔法のハイブリットの身体なんだ。

 有効活用できないとな。


爺ちゃんの才能と、これまでの経験と修行に裏打ちされた強さを、まざまざと見せられる日々が続いた。


ちなみにマッスルブーストは使っていない。

まだ7歳だからね。

もうちょい身体ができてからじゃないと、また神経切れましたとか嫌だから。

マジで。


 魔法も剣術も今のところ修練に明け暮れている。

 そんな俺の周りに、変化があった。


 従士が付くことになったのだ。

 誰かと思えばフレイだった。


 セイナリアではモブだの母さんの言いなりになるYes knightだのと俺が陰口を叩いていた男である。

 俺が7歳の時に、既にフレイは23歳。

 騎士としては脂がのってくるところである。


 本人も最初は固辞していたようだ。

 しかし、俺の下に就けば、もの凄く大きなメリットがあることに気が付いた。


 爺ちゃんの下での修行である。

 爺ちゃんは弟子を取らない。まあ、王と俺以外はね。


 でもそれを間近で見られる上に、隣で修練できるのだ。

 本人としても、剣士としても、これほどのボーナスはないと思ったようだ。


 爺ちゃんは最初、フレイと俺との立ち合いをさせた。


 フレイは普通の長さのロングソードの木剣。

 俺は子供用の木剣だ。


 この時はまだフレイは俺を舐めた仕草をしていたな。


 爺ちゃんの気合の入った

 「始めっ!!」

 の合図でそれは始まった。


 フレイはリーチを生かし、正面斬りに近い袈裟斬りで俺をけん制した。

 しかし俺は剣を使って跳ね除けることもなく、それを翻し鋭いダッシュで、フレイの懐に入って剣で胸をついて見せた。

 

 唖然とするフレイ。

 俺はブレインブーストもマッスルブーストも使わず、一人前の騎士を倒してしまった。

 

 アベルという身体の器の性能の良さ、それと、3歳から爺ちゃんの下での濃密な修練が俺を強くさせていた。

 爺ちゃんとばかり修練していたから、気付かなかったんだよね。


 「アベル、良くやった。フレイ、なぜアベルに負けたか。」

 「最初の袈裟斬り、あれはアベル様の体格を考えれば間違いない初手だと思います。しかしそれをアベル様は剣で受けることもなく、スピードを使って翻りました。もうそこで勝負ありでございました。」


 「うむ、良く分かっておるな。では貴様は明日から型の修練だ。良いな。」

 そう言われたフレイは一瞬下唇を噛んだが


 「はい、承知いたしました、ご隠居様。」

 そう言って一礼した。


 「そうだ、フレイよ、貴様は明日から盾を持ってまいれ。」

 「盾でございますか?」


 「うむ、貴様はアベルの盾になるのだ。遊撃と後方攻撃はアベルに任せればよい。」

 「はい、タンク役、務めさせていただきます。」

 

 フレイは速攻で自分の居場所を決めた。

 それは爺ちゃんに言われたこともあったかもしれないが、従士としての意識の芽生えもあったのかもしれない。


 それと、爺ちゃんは役目を与えたことによって、フレイを自分が鍛え、教えてやると公言したのと同じだった。

 面倒くさい手続きをするもんだが、貴族や騎士の師事というものはそういうものなのかもしれない。


 そう言うわけで、俺とフレイは爺ちゃんの下、修練に励み、コンビネーションも磨いた。

 

 



 そして年月は過ぎ、父さんとの約束のとおり、ダンジョンに足を踏み入る事の出来る年齢、10歳になったのである。







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10歳おめでとう。 ダンジョンデビューがんばって!
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