178.アベルくんと長かったなぁ。
第四章
178.アベルくんと長かったなぁ。
セイナリアの長い滞在も終えた。
色々あり過ぎたが、総括のようなことはしないよ。
ああ、でも別れ際のことは話そうかな。
まずは婆ちゃんとルミナさん。
明後日、帰るという際に、セントクレア家におよばれに行った。
相変わらず爺ちゃんはウィットにとんだ城の裏話を聞かせてくれた。
婆ちゃんも優しく俺とロッティーにグスタフさんやルミナさんの昔話を聞かせてくれた。
やはり、婆ちゃん自身は否定していたが、爺ちゃんとグスタフさんの間で、婆ちゃんの取り合いがあったようだ。
ルミナさんとは実は同い年で、55歳を過ぎているんだとか。
似非JC恐るべし。
二人はいわば宮廷サロンと言われる場所で出会い、友情を深めたそうだ。
まあ、その中で男子たちをいじめて遊んでいたようだが。
女性は怖いのだ、分かったかね、諸君。
そんな夜を過ごし、翌日は別邸の皆がお別れ会のような小さな催しをしてくれた。
アーサーはじめ、カトリーヌ、エミ、クラリスがケーキなどを自作し、俺たちにふるまったのだ。
最後に、エレナやローズが泣き出しまあ大変だったが、そんな夜があってもいいと父さんも母さんも何も言わず見守っていた。
こういう所はこの二人の心憎いところだ。
すでに荷物はまとめてあったから、あとは寝るだけってところに、リーサはまたおっぴろげて寝ていた。
もう見慣れた。
慣れは怖い、俺の方はピクリともしない。
こまtt…いや、困らんな。
そしてまた翌日、馬車に乗って、2週間ほどの帰り道を移動した。
帰り道も異常があるかと緊張もしたが、すんなり、それはとてもすんなり帰れたのだった。
まあ、あのパーシーの糞爺が何かしかけたところで、すべて酸素の業火で焼いてしまうがね。
馬車の中では、トランプをしたり魔法のイメージづくり、馬車を降りれば父さんと剣術の修練。
割りとやることはあった。
行きの行程より慣れたのもあるんだろう。
馬車の揺れの中でも昼寝をしたり出来た。
相変わらずローズは車酔いをしていたから、その都度水の偽薬を飲ませていた。
よく効くんだ、魔法で生成させたH2Oは。
そして我が家のある、軍と騎士団、そして冒険者の街、ヴァレンティアに到着したのである。
久しぶりのヴァレンティア城では、留守番をしてくれていた人達が一斉に出迎えてくれた。
爺ちゃんは当主である父さんに丁寧なあいさつをすると、母さん、姉さんの挨拶を手早くやって、俺を抱え上げ肩車した。
相変わらずの爺バカぶりである。
帰った城内で一つ大きなニュースがあった。
マーガレットの出産である。
母子ともに健康で、元気な男の子だった。
家族全員で、マーガレットとジョージにお祝いを言った。
子供はマリアさんが乳児期の面倒を見て、マーガレットはメイド長を続けるそうだ。
母さんは、マリアさんがいまさら俺の乳母をすることは必要が無いと思ったらしい。
俺の躾役としては、いまだにマリアさんは僕の乳母という事らしいが。
マリアさんは終身雇用形態なのでね、何かと理由がいるのかもしれない。
アンネローゼは俺たちのことを何故か遠巻きに見ていた。
幼児期に良くある遠くの親戚や、離れて暮らしていた人たちに見られるのが恥ずかく思う、アレらしい。
聖女様はまだ幼児ってことだ。
それと、随員した騎士たちの着任式もやったね。
こういう形式が必要なのよ。
何と言っても、団長と副官が揃って出かけていたからね。
団長の代わりを、デビッドという騎士が務めていたが、上手くまとめていたらしい。
欠員だった副団長の職に着くそうだ。
俺たちを一番待ちわびていたのは文官長改め、官僚長のネスだった。
もうね、ヘロヘロだったよ。
官僚制が走り出したとはいえ、走り出したばかりなのだから、100%上手くいくはずがないのだ。
そんなネスは、帰ってきた父さんをどこにも逃がさないって気概が見えた。
父さん、ガンバ(はぁと)
もう一つ騒ぎになったのが、
エレナの両親、エドワルド・ヴォルグレット男爵、イザベラ夫妻が登城し、エレナの結婚についての説明を求めてきた。
すでに手紙でやり取りをしたはずだった父さんも困惑していた。
結局はユーリがただの庶民と勘違いしただけだったらしい。
「ユーリは正式に爵位を頂いた、騎士爵だって説明してあったんだけどね。」
そう言って父さんは苦笑いをしていた。
その後、丁度いいからということで、ヴァレンティア城で改めて式と披露宴をしたのだった。
主役の二人ともげっそりしていたけどね。
『またこの二人に祝福を与えるのか?アベルよ。』
そう言ったのはアルケイオン様。
3Dホログラムでの顕現である。
とはいっても俺とリーサにしか見えないけど。
祝福の方は、セイナリアで盛大にやっていただいたのですが、彼らの両親二組もやっていただけますか?
『うむ、アベルの頼みなら仕方なかろう、貸しだからな。』
うわぁ、怖いなぁ。
「冗談だ。やるぞ。」
そう言うと、司祭の錫杖からアルケイオン様の神気があふれ出した。
『これで良かろう?』
はい、ありがとうございます。
『たまには礼拝堂に顔を見せるのだぞ。可愛がってあげるから。』
オネショタならno thank youですよ。
『チッ、引っかからぬか。』
そりゃ、まあ。
『では、トレーサのように余も受肉しようか。アベルは人の肉が良いのであろう?』
肉というより、人肌のあたt…いや、おやめください、お願いします。
「冗談だ、では余は行くぞ。」
はい、誠にありがとうございました。
そう言うと、アルケイオン様は、またパーティクルエフェクトの神気を礼拝堂一杯に振りまいて消えてしまった。
そんなこんなが帰って来てからありました。
そして、またヴァレンティアでの暮らしが走り出したのである。
リーサ?知らんがな。
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