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176.アベルくんと帰りのあいさつ。

176.アベルくんと帰りのあいさつ。




 帰る日が2日後と迫った。

 結局なんだかんだあり、セイナリア滞在は3ヶ月と一週間。


 長かった。


 楽しい思い出も多い。


 王城へ行って、というか強制的に呼ばれて、珍しく裏口から入り、オスカーとオリビアと魔法の練習をしたり、遊んだり、結局なんだかんだそんなことをしている内に、この二人とも仲良くなってしまった。


 まだオスカーはロッティーに熱を上げているがね。

 オリビアの話は勘弁してくれ。

 いや、いつものように、俺の言質を取ろうとあの手この手で必死だ。


 そんなわけで、今日は帰りのあいさつに王城へ家族一同でやってきた。

 

 いつもの通り控室に通され、いつもの通り、謁見の間で王と王妃に登城した旨のあいさつをし、前に通された食堂にやってきた。


 特に食事会という話を聞いたわけではないので、ここであいさつをして終わりという感じになるんだろう。

 程無くしてドアが開き、宰相である爺ちゃんが現れた。


 「やあ、ローランド卿、お疲れさま。みんなも元気そうだね。」

 そうきさくに挨拶をする爺ちゃん。


 「宰相閣下もお元気そうで。」

 そう言って父さんがお辞儀をし、それに続き、俺達もお辞儀をした。


 爺ちゃんはそれを見て「うん、うん」と満足げに頷いた。

 「二人とも、いろいろあったがセイナリアは楽しかったかい?」


 爺ちゃん、それは俺にとって地雷みたいな質問だ。

 怪我したり、攫われそうになったりしたからなぁ。

 まあ、しかし爺ちゃんたちが悪いわけじゃない。


 現にセントクレアの家にたびたび遊びに行ったし、その時は爺ちゃんと婆ちゃんがいろんな話をしてくれた。

 それはとても勉強にも経験にもなったから、楽しいことだと言えるだろう。


 「お爺様、とても楽しい経験ばかりでした。お婆様のお話もとても興味深かったわ。お爺様の政治の話や、陛下の言えない秘密も。」

 そう言ってロッティーはフフフと笑う。


 なんだか、夏休み明けの中学生のように、この少女は一皮むけた感じがするな。

 「そうか、そうか。まだ二日あるのだ、明日クリスにも挨拶に来るのだろう?良くお話をしてやっておくれ。」

 爺ちゃんはそう言って、ロッティーの肩をポンと軽く叩いた。


 「アベルはどうだい?と言ってもお前はいろいろあり過ぎただろう?」


 「そうだね。色々刺激的な経験ばかりだったよ。でも、それでいろんなことが知れたし爺ちゃんと婆ちゃんとも仲良くなれた。とても嬉しいことだったよ。」


 「うん、アベルは既に大人だな。でももっと経験を積むのだ。そしてまたセイナリアに来るんだぞ?」

 「はい、きっともっと大きくなって爺ちゃんと婆ちゃんのところへ行きます。」


 「楽しみにしているぞ。」

 そう言ってにっこり笑い、俺の目を覗き込みながら、俺の頭を爺ちゃんは頭をくしゃくしゃになでつけた。


 そんな話をしていると、またドアが開いた。


 入ってきたのはレオンハルト・ベルクシュタイン伯爵、ヴィルヘルム・ド・カレッド伯爵、グスタフ・ヴォルフガング侯爵、バルトロメオ・フィッツロイ伯爵という、閣僚のお歴々だ。


 ほとり一人父さんと親し気に挨拶をし、母さんと言葉を交わし、姉さん、俺の二人に軽く挨拶をする。


 これまでに閣僚の方々とは、何回か別の機会でお話をすることがあった。


 やはり、俺の酸素魔法に興味があるんだろう。

 それと、行政改革、特に官僚学校に話は行った。

 現在の城の事務関係は、爺ちゃん指導の下、官僚制で動いている。


 しかし、それを軌道に移すのがとても大変だったようだ。

 事務方の文官が、前の意識の切り替えが、なかなかできなかったらしい。


 まあ、それはヴァレンティアでも経験済みなので、よくわかる。


 閣僚の方々とはそんな話を手いたし、ベルクシュタイン伯爵とカレッド伯爵は爆発事件の会議でも顔合わせをしていたので、慣れたものだった。


 というより、カレッド伯爵などは

 「アベルくんがいなくなって寂しいような、安心できるような。」

 などと憎まれ口を聞く始末。


 「スラムで爆発なんてことは、起こらないでしょうね。」

 その憎まれ口に、俺はごく普通の受け答えをした。


 「そう願いたいよ。君の魔法をだれも理解できなくてよかった。」

 そう言って、カレッド伯爵は心底安心したって顔をする。


 「でも、もう2人理解できそうですけどね。」

 俺がそう言うと、今度は心底驚いた顔をして


 「それはいったい誰だい?」

 と聞いてきた。


 「母さんと姉さんですよ。」

 「お転婆魔法使いと、ヴァレンティアの至宝の一人か。その二人なら大丈夫かな。」


 「何故俺は安心できなくて、あの二人は良いんですか!」

 俺は半ば苦笑い君で聞いてみた。


 「だって、あの二人は君のことを制御するために覚えているんだろ?」

 「そういう側面もあるんでしょうね。」


 「だからさ。」

 まったく釈然としないが、彼の言っている事は分かる。

 「自分でも、精神的には制御しているつもりなんですけどね。」


 「でも、やはり君は、アリアンナ夫人の子供で、シャーロットさんの弟なんだよ。十分今のうちに甘えておくことだ。」

 この人との知的な会話は嫌いじゃないが、気取っているなぁ、もう。


 「十分僕は甘えているんですよ。」

 「それなら結構。気をつけて帰りたまえ。また会えることを祈っているよ。」

 

 「はい、有難うございます。」

 カレッドさんは、気にかけてくれているらしい。

 ありがたい話だね。





 そんな閣僚の中で、異彩を放つ一人に俺は捕まった。





ここまで読んでいただき、有難うございます。

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