173.アベルくんと宴の余韻。
173.アベルくんと宴の余韻。
俺は食堂を抜け出し、付いてきたミーに清拭用のタライと湯の出る魔道具を頼み、寝巻だけ受け取って自分の部屋に入った。
風呂に入りたかったが、もうそのエネルギーはないらしい。
部屋に入ると、リーサがおっぴろげたままで寝ていた。
こいつは、見せたがりなんだろうな。
なわけあるか!!
などとやっていると、ノックの音と共に扉が開き、たらいを持ったミーが入って来た。
「しつにぇいしにゃす。」
語尾も何もにゃで来るミーに、自然とほほが緩む。
「あ、これはローズが怒るやつ。アベル様、見ましにゃね。」
リーサのあられもない姿を見たミーは、即座に俺が部屋に入って何をしたかを確認した。
「見えるから、見るのか。難しいところだね。」
「男の子ですもにょ、持ってないものは興味がありにゃすよにぇ。」
興味がないわけないじゃないか!
「そうだね。ミーありがとう。」
俺はそう言って、ミーからタライと魔道具を受け取り、彼女を追い出しにかかる。
「お背中流しますにょ。」
「大丈夫、タオルを使って自分で流すから。」
「なー!リーサ様のアレの流れで、あたしがアベル様のお手付きになりたかったにょに。」
ファッ!
確かにおっきはするが、5歳で精通するかっての!
いや、そこじゃない!!
「ミーさんや。ちと考えが早いようですよ。」
「5歳なら大丈夫にゃないですか?」
「駄目です。あったとしても後10年ですかね。」
「10年だと26ですにょ!あたち熟れ過ぎにぇす!」
前世の俺なら食べごろと言って喜ぶんだろうがなぁ。
「まあ、そういう事で、お引き取り願おうかな。ミー君。」
「いつになく上から目線ですにぇ。いいです。いつかアベル様の貞操を奪って見せにゃす!」
ミーはそう言ってドアから消えていった。
貞操を奪うとかってキャラだったの?
俺はそう簡単にオネショタ展開には持って行かないのだ。
ヒートの時期なのかな?
しかし、獣人族はローズも含めてちょっと複雑だ。
まあいい、とりあえず身体を拭いて寝よう。
俺は着ていた服を脱ぎ、湯をタライに出しタオルを湯につける。
ちょっと寒いか。
パパっとやって布団にもぐれば大丈夫だ。
身体を拭き始めたその時
「まったく、うるさくって目が覚めちゃったわ。」
そう言って羽虫が俺の方に飛んできた。
半分はお前がおっぴろげてた所為でもあるような気がするがな。
「また見たわね!?」
「ならパンツ履けよ。」
「あれ締め付けるし蒸れるし良い事ないのよね。私は生理もないしね。」
「神なんだから、蒸れくらい何とかなんないの?」
「あ!なったわ。」
「あほか。」
「あんたもぶら下げたままの姿だと、風邪ひいちゃうわよ。」
「お前がくだらないことを言ってこなかったら、今頃寝巻姿だったんだよ。つか、マジマジ見んなよ。」
「いいじゃない、減るもんじゃなし。」
「いや、減るね。俺の羞恥心が。」
「そっち!?」
リーサはそう驚きながら、飛び回り俺の前面に回って、さらにのぞき込む。
「ちゃんと剥いて洗いなさいよ。」
「うっさいわ、まだ先はピリピリするんじゃ!つか、洗ってはいるんだが、そろそろ剥いた方が良いのか?」
「5歳じゃまだ早いかしらね?」
「そこらへんは様子を見ながらだな。早けりゃ早い分、粘膜の強化が図れるかも知れないが。」
「そこは程々よね。」
「それが分からんのよな。相手にもよるし。」
なんて言っていたらブルっと来た。
「バカ言ってないで服着なきゃ。」
「あら、私が暖めてあげるわよ。」
「魔法的な、神気的な何かで?」
「馬鹿ね、人肌よ。」
「はいはい。」
「照れんなよ、もー♡」
「よし、サッパリした。本格的に冷える前にベッドにゴーだ。」
「そうね、私も入るわよ。」
「触るぞ。」
「いつもでしょ。」
「へ?いつもなの?」
「うん、わりと。」
むー、どこでそんな手癖が付いたのやら。
同棲経験もないからな、同衾相手の身体をまさぐるとか、DNAに染み付いた自然なことなのかね。
今となってはネットで調べるわけにもいかんから、この手の情報は身近なところからしか得られない。
怖いね、ネットのない世界って。
変な性癖が当たり前の奴にぶつかれば、自分もそれが当たり前になる世界観だぜ?
王妃だって男は種をまくのが当たり前なんて言って居たけど、それがこの国の価値観だから我慢できるんであって、前世のジェンダー思想がちょっとでも入れば、家長制粉砕!と言いながら、旗を振ってるかもしれない。
そうだね、そんな思想はとりあえず俺の胸の内にとどめて、1500年続いたこの国の制度を守った方が良いんだろう。
「また変なことを考えているでしょう。」
「あれ?読まなかったのか。珍しい事もあるものだ。」
「いちいちあんたの頭なんて覗かないわよ。」
「そうか、そうしてくれると有り難い。防ぎようがないからな。しかし、今日は疲れた。ただの宴会なのに、トラブル多過ぎだろ。」
「客が多かったからじゃないの。バカ貴族の倅でしょ、ギルドの二人の長との折衝も有ったわよね。」
「まあ、それだよな。ああ、そうだ、フェミレスバもやった。あれキツかったわ。クソ、疲れすぎて目がさえて眠れない。」
「お話でもする?」
「そう言えばお前どこに消えていたんだ?ファンの王妃も探していたようだったが。」
「それが面倒臭くて隠れていたのよ。」
「それが一番だな。君子、危うきに近寄らずって奴だ。」
「私は君子じゃなくて神様だけどね。」
「なおのこと、あちこち行かれると怖いからなぁ。でも良かった、アルケイオン様はきっちり祝福してくれたし、最終的には宴会自体も丸く収まった。食堂でまだ騒いでいるのが聞こえるがな。」
現にガヤガヤとまだやっている声が聞こえる。
トランプで盛り上がってんのか?
この前大富豪を教えたからな、大貧民にまみれた母さんは怖かった。
自分が弱い所為なのにね。
「リーサ、寝ようか。」
「そうね、寝ましょう。」
「リーサ。」
「なに?寝るんじゃないの?」
「家族を祝ってくれてありがとう。」
「家族なんだから、当たり前でしょ。」
「そうか、家族か。」
「そうよ、家族よ。」
リーサの言った家族という言葉が身体に沁みる。
「うん、ありがとう…」
そう言ってから、俺は意識を手放した。
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