167.アベルくんともう一つのギルドの長。
167.アベルくんともう一つのギルドの長。
今回はダンスなどはなく、ただの飲食のみなので、食事や社交が済んだゲストは順次帰って行く。
現実的に酷い話だが、ユーリとエレナ目的な人なんてほとんどいないしね。
それでも、父さんと繋がりのある人、もしくは繋がりを持ちたい人は友好を重ねるためにまだまだ残っていた。
その中で貴族とあからさまに違う集団がいる。
あれは冒険者の人達だね。
父さんは冒険者の街ヴァレンティアの領主であり、本人も元A級冒険者だから、冒険者ギルドとも縁が深い。
冒険者ギルド、ヴァレンティア支部の支部長は父さんのパーティーメンバーだ。
父さんが空いたところが見えたのだろう、その集団が動いた。
「やあ、ローランド。」
冒険者らしいフランクな挨拶。
他の貴族なら追い出されても仕方いが、父さんは違う。
「やあ、ドミトリ、元気そうだね。」
「おかげさまで、ヴァレンティアのお陰でうちも潤ってありがたい話です。」
そう言うと、その人はユーリたち新郎新婦に向かって
「本日は大変おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。」
と言い、深々とお辞儀をした。
ユーリたちは慌てて椅子から立ち上がり、お辞儀を返した。
「ありがとう、家の者に気を使ってもらって嬉しいよ。でも、ヴァレンティアでギルバートは忙しそうだけどな。」
「それが彼の役目ですから。しかし、貴方とアリアンナさんとの仲ですからね、あの規模の支部の支部長を他の者がやるよりは随分と円滑に回っていると思いますよ。」
「僕らはパーティーメンバーだったからね。内輪の話をするにもしやすいかな。」
「そうでしょう。しかもお宅のご子息が有り難いことに、随分と協力的だ。」
「アベルが改革案提示して、学校まで作った話だろ?うちの城もそれのお陰で楽になったんだ。だからこうやってセイナリアまで来られたってわけさ。」
「その優秀な方はここにいらっしゃるのですか?」
「そこにいるよ。呼ぼうか?」
「ええ、是非とも。」
みたいなことを言っていたらしいですよ、奥様。
そしたらヨハンが俺を呼びに来た。
「アベル様、ご領主様がお呼びです。」
「なに?あの熊みたいにデカい人に合わせたいってこと?」
「内容までは。とにかくお越しください。」
「あいよ。」
と、ヨハンに促せるまま父さんの所に出向いた。
「お待たせしました。」
とりあえず二人に声を掛けた。
しかしこの人デカいな。
座っているから正確には言えないが、2mは優にこえているだろう。
身体自体ガッチリしてる。
でも頭にチョコンと付いている熊耳が可愛くて笑いそうになる。
「ああ、来たな。ドミトリ、この子がアベルだ。アベル、この人は冒険者ギルドの中央ギルド長で、名前はドミトリだ。冒険者ギルドの頂点だな。ご挨拶を。」
「はい、ヴァレンタイン辺境伯嫡男、アベル・ヴァレンタインです。お初にお目にかかります。よろしくお願いします。」
そう言って会釈をした。
「丁寧なご挨拶痛み入ります。私、中央ギルド長を仰せつかっております、ドミトリと申します。以後お見知り置きを。」
そう言って大きな体を折り曲げ会釈をギルド長はした。
身体に似合わず丁寧な人だ。
身体が大きい=豪快的な見方はしない方が良いのだろうな。
「ドミトリ、アベルに何か聞きたいんじゃないのかい?」
「そうですね、アベル君は食事中のようでしたが、よろしいのですか?」
「大丈夫だよな?アベル。」
「ええ平気ですよ。」
そう言ったのだが、父さんは気を利かせたらしく
「カトリーヌ、アベルの皿をこちらに持ってきてくれないか。」
「はい、かしこまりました。」
傍に控えていたカトリーヌが父さんの言葉を受けて、さっきまで俺が座っていたテーブルへと向かう。
「僕らだけ酒を飲んでいるのも、アベルに悪いしね。」
父さんがそんなことを言った。
まあ、彼はすでに出来上がっているのだ。
ただ単に、このクマのギルド長と仲良く飲みたいんだろう。
「まずはお礼を言わせて下さい。、ヴァレンティア支部が迷惑をおかけしました。ありがとうございます。」
そう言って、クマちゃんはお辞儀をした。
クマちゃんに見えるが、流石に失礼か、ギルド長で行こう。
頭髪は切っているのか短いままなのか。
モフモフ感があって、頭を撫でたくなるね。
「何のことでしょう?中央ギルド長に頭を下げられるいわれはありませんが。」
「いえ、流石にそういわけには行きません。各支部を統括するものとして礼を言うのは当然のことですので。しかし、噂通り見た目と中身がかなり違うようですね。アベル君は。」
「うん、たまに僕もそうも思う時がある。でも正真正銘僕とアリアンナの子供だよ。だってアリアンナに似て可愛いだろ?」
な、酔っ払ってる。
そんなことをして言っているうちに、カトリーヌとエミが僕の料理の皿を運んできてくれた。
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