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165.アベルくんと宴会再開。

165.アベルくんと宴会再開。




 ワグナーさんは会場を去り、一旦の解決を見た。

 

 しかしだ、俺は放置気味だったバルドさんに声を掛ける。

 「バルドおじさん、またいろいろ仕事作ってごめんね。」


 絡んできた連中はバルドさんの部下によって詰め所にお持ち帰りされたようだった。

 それで、俺はしょんぼりした顔でバルドさんに謝った。


 「こういった宴会ではよく起こることだ。気に必要はない。特に辺境伯の様な有力貴族は狙われ易いからな。じゃ、儂はうちの者の方に行くよ。」

 そう言うと、ちょっと手を上げ騎士団員の方に去って行った。


 バカ貴族のバカ息子達が騒いでくれた所為で、宴会場はすっかり冷めきった。

 まあ、俺が成人するまで魔石の買取価格がアップする利点と大物商人との顔見世にはなったんだが、余計もんだよな。


 そこへ急にひな壇の魔道具が音を出した。


 「やあ、なんだか騒ぎがあったようだが、ローランド卿と孫のアベルが見事に事を治めたようだ。拍手~!」

 

 あら、宰相閣下自らが場をまた暖めようとしてくださるようだが、俺に注目を向けるのはもう勘弁。

 俺はこんなふうに思っているのに、父さんは拍手を送るゲストたちに手を振っている。


 「コミュ強過ぎんだよね。」

 俺は思わず呟いた。


 「なんか言った?」

 父さんは手を振りながら俺に聞いてくる。


 「父さんは凄いなって言ったの。」

 「今頃気付いたのかい?」


 いやいや、なんとも。

流石に冒険者のトップに躍り出て、貴族としてもしっかり社交を極めている姿は、やはりこの人も生まれながらのハイソサエティーなのよね。

 弱者男性の魂を持った俺とは違う。

 

 「ほら、アベル。」

 そう言って父さんはいきなり俺を肩車した。

 「皆さんに手を振って、笑ってだぞ。」

 そう言って自分の肩に乗っている俺のお尻を叩いた。


 今の俺こそまな板の上にのった鯉なのだよ、諸君。

 鯉は鯉なりに、まな板の上で足掻いて見せねばならんのだ。


 俺は意を決して大きな苦笑いを作り、会場のゲストに手を振った。

 そりゃもう引きつった笑いだったろう、しかし逃げられぬならやるしかないのだ。

 

 そのまま一番初めの自分の席に父さんは戻してくれた。

 「もう挨拶とかはアベルは良いだろう。料理も美味しんだ。ゆっくり食べていなさい。大変だったね。お疲れさま。」

 そう言って父さんは去って行った。


 残された俺は自分の椅子に座った。

 なんだかどっと疲れがくる。

 「ふう。」

 思わずため息が出た。


 「アベル様、申し訳ありませんでした。」

 あの後、俺と父さんの後について来たのだろう。

 ローズが俺のそばにたたずんでいた。


 「ローズ、座りなよ、そこがお前の席なんだろ?一緒に食べよう。お腹が減るから辛い気持ちがより辛くなるんだ。」

 「そうよ、食べることは大切なのよローズ。」


 いきなりリーサが飛び出してくる。

 こいつ今までどこに居たんだよ

 どこにでもいるのか、神様だからな。

 シュレティンガーの猫みたいに。


 観測しないと見えない神か。

 確かに神ってそういうもんだよな。

 普通は観測しても見えんが。


 「あくまで貴族のトラブルはのスルーですか、リーサさん。」

 「そのとおりよ、アベルさん。」

 「めんどくさいもんな。」

 「よくやってるわよね。」

 「なぁ。」


 俺たちが席に着くと、クラリスが次々と皿を運んできた。

 「クラリスも適当に休みなよ。」

 俺が声を掛ける。

 「はい、ありがとうございます。」

 そう言ってニッコリ微笑んでくれた。


 かわいい子の笑顔は癒されるわね。


 などと思っていると、またローズが睨んでくる。

 もうこの手の雑なラブコメームーブは面倒なんだけどな。


 俺がその目から顔をそらそうとしたら、ローズの頭にチョップが入った。

 リサだ。


 「ローズ、主を睨むとは何事。いつも言っている。やめなさい。」

 リサの朴訥な言葉が聞こえる。


 ローズを教育してくれるのはありがたいね。

 そのローズは頭を押さえながらしゅんとしてる。

 気持ち反省できてんのは良いことかな。


 「リサ、お疲れさま。一緒に食べるだろ?」

 「はい、アベル様。休憩に来たのでご一緒させていただきます。」


 「うん、ここの料理美味しいから、たくさん食べてね。」

 「はい、ありがとうございます。」

 そう言ってリサもニッコリ微笑んだ。


 ほら、リサが放つ笑顔の攻撃力の高さはどうよ。

 素朴なドワーフ娘の明るい笑顔、これよな。


 などと思っていると以下略。

 で、またチョップだ。




 うん、トラブルより緩いラブコメの方が俺は好きだな。



ここまで読んでいただき、有難うございます。

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