164.アベルくんとダークエルフなんだが商人の方。
164.アベルくんとダークエルフなんだが商人の方。
謝罪の声の方に首をめぐらす。
そこに居たのはダークエルフの偉丈夫だった。
顔良し、その下はマッチョ。
エルフって枝のように細い奴ばかりじゃないの?
リラは、ハーフエルフだからね、人間の遺伝子に引っ張られれば、タユンタユンにもなりますわ。
「どちら様で?」
父さんは興味なさげにそっぽ向いているので俺が聞いてみる。
「失礼いたしました。わたくし、商業ギルドの中央ギルド長を拝命しております。ワグナーと申します。」
「そのギルド長さんがどのような御用で?」
俺は至極まっとうな受け答えをしたつもりなのだが、周りが“ざわ”ってするんだよ。
有名人なのかな?
俺の方がまな板の鯉のような気がしないでもない。
まるでじゃんけんで勝負を決める、賭け事専門豪華客船に乗った様じゃないか。
「先程の方々は、私が乞われて連れて来ました。そのおかげで皆様にご迷惑をお掛けして、大変申し訳ありませんでした。」
こう言って、ガッツリ頭を下げる。
「ふむ。ワグナーさんとどういうご関係だったのですか?」
「お客様だったのです。主に金融関連ですが。」
「まあ、どういうお客かどうかは、僕たちには関係ないんですが。」
「そうですね。それでそれに見合ったお詫びをしたいと思うのですが。」
「見ていたと思いますが、一応僕も命を賭けちゃいましたから。見合ったものなど中々無いと思いますよ。」
「それは全くもってアベル様の言うとおりでございます。」
あ、俺、自己紹介してなかった。
「申し訳ありません。人に名前を聞いておいて、自己紹介がまだでしたね。もうご存じのようですが。私はヴァレンタイン辺境伯嫡男、アベル・ヴァレンタインでございます。こちらが父のローランド辺境伯、そしてこちらが我が家の執事のヨハン。バルドさんは知っていますよね。」
「改めまして、ノヴァリス国商業ギルド、中央首長ワグナーでございます。」
おや?なんだか位が上がったぞ?
「商業ギルドの首長というと、この国の商業ギルドのトップの方だったんですね。」
「浅学菲才の身ですが、どういうわけか任されております。」
彼は薄く目を伏せ淡々と話す。
「商売がうまいのでしょうね。」
「そう在りたいと常に思っておりますが、なかなか。」
「さて、どのようのお考えをお持ちで?」
俺はこう言って訪ねた。
その後、彼は伏せていた目を真っすぐこちらに向けた。
「ヴァレンタイン領で採掘された魔石の買い取り価格の1割上乗せを5年間で如何でしょうか?」
「だってさ、どうする父さん。」
「僕はなかなか譲歩してくれていると思うけど、アベルはどう思う?」
興味なさげな父さんだったが、ちゃんと聞いていて安心した。
「僕の命が一割5年というのはなんだか釈然としなぁ。」
「だそうだ、ワグナー殿。」
俺の言葉を聞いた父さんは、早速ワグナーに打診する。
「まことにアベル様のおっしゃるとおり、アベル様のお命が5年で済むはずはありますまい。」
「ふむ、では如何様にすると?」
考え込むのかな?って思ったが、ワグナーさんは即決で答えた。
「アベル様が成人いたすまで、ご面倒を見ようと思います。」
ん、いいんじゃない?
でもまだ釈然としない問題が一つ。
「ちょっと聴きたいんだけど、ワグナーさん程の人が何故あんな人たちを連れてきたんです?」
また彼はフッと長いまつ毛の目を伏せる。
「アベル様、私共にも付き合いというものがあるのです。」
「そうだろうね。ごめんなさい、見合った人たちじゃなかったなと思っただけです。」
「そのように私を立ててくれて嬉しゅうございますが、彼らもお客様でございますので。」
「父さん、ワグナーさんの謝罪を受け入れるよ。」
「うん、わかった。ではワグナー殿、あとでその詰めをしたく思うが。」
「それではぜひギルドにお出で下さい。歓迎いたします。」
そう言って彼は深々とお辞儀をした。
こうして後日ギルドに行くのだが、それはまた別の話。
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