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160.アベルくんと挨拶回り。

160.アベルくんと挨拶回り。




 父さんの席を離れ、会場のひな壇近く、宰相閣下ご夫婦の座るテーブルに近づく。

 そこには、宰相閣下、その夫人、またその二人の愛娘、そして、とてもデカい男が座っていた。


 そいつの名はグスタフ・ヴォルフガング侯爵。

 やっぱり仲良しだったのか。


 「皆さんお揃いで。軍務大臣閣下もいらっしゃいませ。」

 「おう、アベル!頂いているぞ!」


 「それは良かった。やっぱり爺ちゃんと友達なんですね。」

 「それは違うぞ、アベルや。」

 そう口を挟んできたのはウィリアム・セントクレア侯爵宰相閣下。俺の母方の爺ちゃんである。

 

 「ただの腐れ縁だ。」

 「そうだ、仲なんぞよろしくないぞ、アベル。」


 「はい、そういう事にしておきます。」

 面倒くせぇ、爺共だ。


 「アベル、こちらに来なさい。」

 宰相閣下のご息女に呼ばれたので


 「爺ちゃん、ちょっと失礼しますね。」

 「うむ、またおいで。」


 といって二人から離れ、俺がはす向かいに座っていた女性陣の座る席に移動した。

 そこには、クリス・セントクレア侯爵夫人とそのご息女アリアンナ、そして前世の感覚で言うと、中学生くらいにしか見えない女の人が座っていた。


 「母さん来たよ。」

 そこにはもうロッティーも挨拶を済ませ母さんの隣でくつろいでいる。


 「ああ、来たわね。ルミナ夫人、こちらが私の息子のアベルです。」

 へ?夫人?

 もう何方かへ嫁がれてお出でなので?


 「ヴァレンタイン家嫡男、アベルです。よろしくお願いします。」

 そう言って手を胸に当て会釈をした。


 「ああ、あなたがヴァレンティアの至宝の一人、アベル様ですね。」

 彼女の声は鈴を鳴らすかのような高く澄んだ声である。

 

 「私、グスタフ・ヴォルフガング侯爵の妻、ルミナと申します。よろしくお願いしますね。アベル様。」

 そう言うと椅子からチョコンと降り、カーテシーもチョコンと行った。


 ん?今なんつった?

 「え!」


 「ほら驚いた。」

 婆ちゃんと母さんはコロコロと笑い始める。


 グスタフの爺ちゃん、合法ロリ嫁かよ。

 いや、良く見りゃ耳長いしな、そうか、エルフか。


 「そりゃビックリしますよ。どう見ても人間年齢13~4歳にしか見えませんもん。」

 「そうよね。でもそれは本人の前で言っちゃいけないわ。」


 婆ちゃんがそっと俺を諭す。

 そしてその彼女を見ると、明らかに頬を膨らませて怒っているのである。


 かわよ。


 いやいや、一応取り繕うか。

 「大変申し訳ありませんでした。僕の周りのご婦人たちは人間が多かったものですから。」


 「多かったものですから?」

 うわ、結構根に持つタイプなのかな?


 「失礼な物言いになるかもしれませんが、とても若く見えてしまったのです。それを口に出すのは失礼な行為でした。申し訳ございません。」


 程無くして俺を睨みつけていた顔がニカッと笑った。

 そりゃもう明るい部活帰りのJCの笑顔である。


 「アリアンナ、言ったとおり凄いですね。普通の貴族の男どもなら、しっぽ巻いて逃げているところですが、この5才児はきちんと筋を通す謝罪をしました。どういう教育をなさったのです?」


 ルミナ夫人は母さんの方を向きそう言い放った。


 「アベルは全部規格が違うのです。年齢で推し量れないものがすべて備わっています。私の息子にしておくには勿体なのですが、手放すのも勿体ないのですよね。」


 なんだかよくわかんない評価だな。

 スポーツフィッシングの魚にでもなった気分だ。


 「アリアンナ、あなた、惚れた男の前みたいな顔になっていますよ。規格外。でも分かります。ここまでの子供とは思ってもみませんでした。クリスも誇らしいでしょう?」


 惚れた男とかご勘弁願いたい。

 いや、マジで。


 婆ちゃんが扇子で口を隠しながら、言葉を発する。

 「そうねぇ、この前の会議もこの子はちょっとの手助けだけで乗り切ってしまったもの。ある種の化け物よね。」


 「あら、私はあなたが化け物とばかり30余年思い続けてきたのよ。」


 「あなたには言われたくないわね、ルミナ。」


 この二人、仲良いんだよね?

 ね?

 しかしあれか、俺は体よくおもちゃにされたわけか。


 「ちょっと、御三方にお聞きしたいのですが?」

 「あら、アベル何?」

 聞いてきたのは母さんだった。


 「あなた方はいつも貴族の男子に向かってこのような遊びを行ってきたので?」


 「何時もでは無いわね、機会があればかしら。」

 そう言ったのは婆ちゃんだ。


 「こんなことしているから、ご婦人方が表立って政治の席に就けないんですよ。」


 「何?ちょっとした婦人たちの遊びよ、アベル。そんな大それたことじゃないわ。」


 「いえ違います。あなた方は男子を罠にはめ、嘲笑し、そして怒れば性的に逆切れしたのでしょう?」


 「性的ってどういうこと?いつも性的に搾取されているのは婦人たちの方だわ。」


 「意味がまるで違います。今回の件で言えば、ルミナ夫人が歳相応に見えない、エルフだから、女性だから、その性的ギャップで男子たちを封殺してきたのでしょう?」


 「そうじゃない!私たちは貴族の子女として、道具として扱われてきた。」


 「だからこのような遊びをしても良いと?ましてあなた方は高級貴族のご婦人方です。誰が逆らえるというのです。もう孫まで居るのです。その30余年分考えてください。」


 3人とも目を伏せる。

 俺は、3人を見つめるがこの糞重い空気を、早くどうにかならんかしか考えられん。


 「あー、分かったわよ、ゴメンね、アベル、反省するわ。クリス、あなたの孫は本当に化け物だわ。」

 「ええそうね、私のお父様でもここまでの事は言わなかった。アベル、気分を害してしまってごめんなさいね。」





 怖えー、こんなとこでフェミレスバするとは思わなかったよ。


ここまで読んでいただき、有難うございます。

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