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158.アベルくんと宴会のあいさつ。

158.アベルくんと宴会のあいさつ。




 俺達が座っているのはよくある円卓にクロスが掛けられたテーブル席だ。

 俺とロッティー、それに幅は狭いがリーサの席があり、まだ三席ほど余っている。


 はて?これは何だろう?


 ちょうどそこに別邸組メイド、エミが通りかかった。

 「エミ、忙しいところゴメン、ちょっと聞きたいんだけど。」


 「アベル様、なんでしょう?」

 エミはすぐ立ち止まり、俺の目線にしゃがんで聞き返してきた。


 この子、こうやって見ると、凄く上品でかわいいね。

 まつ毛長くてパッチリだし、今日は多少化粧も許されているからしているのだろうけれど。


 「このテーブル、3席空いてるじゃない。なんでかなって思ってさ。」

 「あ、これは、リサとローズと、クラリスが座るんですよ。」


 「へ?あの三人が?」

 「そうです、仕事の合間、合間に、料理とおしゃべり楽しみなさいって奥様が。」


 あの人、使用人までこの気遣いなの?

 アリアンナ母さん恐るべし。


 「で、彼女らは、いつも近い僕らの席ってわけだね。」

 「そういう事です、さすがアベル様はお察しが宜しいですね。」


 「はッはぁー、それほどでもありますよ。」

 俺はちょっと、ほんのちょっと調子に乗ってみた。


 「「アベル、なんだか厭らしい。」」

 俺の動向を見ていたブラコンと羽虫がなんか言っているが無視だ。


 エミはそんな俺を見てクスリと笑い

 「それではよろしいですか?」

 と聞いてきた。


 「エミたちはどこに座るのさ。」

 エミは俺たちの席のチョイ裏にぽつんと置いてあるテーブルを指さし


 「そちらのテーブルになります。問題はヨハン様とアーサー様も一緒っていうところですね。」

 ああ、そりゃ問題だ。


 「ん、分かった、なんかあったら僕のところに来なよ。あのおっさんたち懲らしめてあげるからね。」

 「はい、アベル様は可愛いだけじゃなく頼もしいですね。」


 エミはそう言うと、ぺこりと頭を下げ

 「それじゃ、仕事をしてきます。」

 と、言って去って行った。


 「「アベル、いっやらしぃ~。」」

 「どこがさ!」


 俺は思わず反発してしまう。

 「なんかね、デレっとしちゃってさ。」

 と、リーサが言えば


 「エレナといい、エミといい、ああいうお姉さんが良いの?アベル?」

 と、ロッティーが追撃する。


 ふむ。

 エレナはデカいからな。あれが。

 エミの身体を観察することがなかったのが悔やまれる。

 俺が5歳の子供といっても、あまりジロジロ見るのも失礼でしょ。


 「エレナもエミも、やはり貴族の令嬢だけあって所作や言葉に品があって大したものだって思うよね。」

 「所作だけ見ているの?」

 今日は、やけにロッティーが突っかかる。


 傍にリーサが居るから、なんかわからん対抗心でも燃やしているのかしらね。奥様。


 若い子はすぐこれだからいけないですわよね、奥様。


 脳内ご近所井戸端会議を繰り広げていたら、いきなり、拡声器魔道具のスイッチが入った。


 「あー、あー、本日は晴天なり。」

 父さんがマイクテストをやっているが、昭和か?昭和のマイクテストなのか?

 

 「本日は、ヴァレンタイン辺境伯領騎士団、副官ユーリと、その妻になりますエレナの結婚の宴会においでいただきまして、誠にありがとうございます。私、両名の後見人となります、ローランド・ヴァレンタイン辺境伯でございます。何卒よろしくお願いします。」

 

 パチパチパチパチと一斉の拍手でいきなり宴会が始まった。


 父さんの司会、挨拶で始まった宴会だが、畳の高砂でやった方が良いんじゃないかなってノリなんだが、ここ異世界だよね?


 しかも、妙に父さんが場馴れしているのがおかしく、腹を抱えて笑いたくなるのを必死にこらえていると

 「アベル、どうしたの?」

 と、また変なところが真面目なロッティーが、鉄面皮で聞いてきた。


 「ん?何でもないよ。でも父さん司会上手いね。」

 「冒険者の頃に、良く結婚式の司会をやらされたって言っていたわ。A級冒険者にもなると、人望とか付き合いとかあるから、大変なのね。きっと。」


 「そうなんだね。流石父さんだ!」

 と、わざとらしく流しておいたのさ。


 「それでは、宰相閣下がいらしておりますので、宰相閣下の音頭で乾杯を取り計らいたいと思います。宰相閣下、こちらの魔道具の方まで来ていただいて宜しいでしょうか?」


 父さんの見事な司会進行で、爺ちゃんがエレナの脇に設置されている拡声魔道具まで誘導されてきた。

 「ローランド卿、司会慣れているねぇ。辺境伯辞めて、宰相やらんか?」


 ドッ!と会場が湧く。

 軽いジャブから入る爺ちゃん。

 俺は、会社の宴会場に来ているんだろうか?

 そんな眩暈にも似たデジャヴュを禁じ得ないのである。


 「ユーリ君、エレナさん、本日は大変おめでとうございます。ヴァレンティアで出会った二人が、ここセイナリアで結婚式をし、これだけ大勢の方々にお祝いして頂ける。地方の、いや、ここセイナリアの貴族であっても中々ない経験であります。」


 そうだー!いいぞー!

 などとヤジも飛ぶ中、爺ちゃんはなお絶好調。


 「残念なことに、急遽の手配であったため、お二人のご両親が来ることができませんでした。しかし、ここのヴァレンタイン辺境伯と、その夫人、まあ、私の愛娘なんですが」


 ああ、もう見てらんない。

 案の定、ユーリの隣に座っている母さんは、今にもファイアボールを爺ちゃんに投げつけそうな勢いだ。


 「その辺境伯夫妻がしっかり早馬迄出して、ご両親の了解を受け後見人となってですね、今この場に皆がいるわけです。」


 バックストーリーをちゃんと聞いてスピーチしているあたりが宰相たる宰相の所以なんだろうか?

 いや、なんか違う?


 「それでは、持っているグラスも温くなってしまいますのでね、ここらで乾杯にしたいと思います。ユーリ君、エレナさん、ご結婚おめでとう。」


 「乾杯!!」


 「「乾杯!!」」





 というわけで大宴会が始まったのだ。


ここまで読んでいただき、有難うございます。

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