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156.アベルくんと大宴会。

156.アベルくんと大宴会。




 「わー!!」

 礼拝堂中に舞う神気のパーティクルに出席していたみんなが声を上げる。

 一番大声を上げていた人は、司祭だったけどね。


 「おおおおお!!!!アルケイオン様の神気の祝福!!!皆さん!奇跡です!アルケイオン様がお祝いくださっていますよっ!!!」


 すごかったね。

 『司祭なんて、推し活拗らせてなる役職みたいなものだからね。』

 おお、リーサにしては分かりやすっ。

 

 『なによ、してはって。』

 褒めてる。褒めてる。


 『まあ、なんにせよ、現世で我が口になってくれる我が子が居るのはいい事である。』

 『そうよね、布教するには必要だもんね。』


 何だよ、司祭たちを物っぽく言うんじゃないって。街宣カーのメガホンみたいに言いやがって。


 『ヒューマンたちには悪いが、実際問題そのような役目であるでな。アベルが気を悪くするものでもあるまい。』

 分かるんですけどね。言葉のチョイスと言うか、こう手心とか。


 『そうだの。しかし、トレーサのように受肉して顕現など、思い切ってはなかなか出来んのだ。なのでな、信者の中で気に掛けた子が我が口になってくれるのが一番なのだ。』

 そうですよね。思い切ってニートになんてなれませんよね。


 『ニートってなによ!でも良いの。私は信者が居なくても、この姿であんたと一緒に居るの。』

 俺のどこがいいのかねぇ。


 『ああ、その選択は悪くない。余も受肉しようか。』


 「アベル、アベル」

 神様たちと会話をしていたら、突然耳孔に自分の名前が飛び込んできてビックリしている間抜けな俺である。


 「なに?母さん。」

 「なにじゃないわよ。ボーっとしないで。司祭様に挨拶して宴会場へ向かうわよ。」


 「ああ、はい。リーサ聞いた?」

 「もちの、ろんよ!」

 昭和のおっさんか!


 俺は席を立ち

 アルケイオン様、本日は俺の家族の祝福、大変ありがとうございました。

 

 『うむ、愛しいアベルのためであるからな。詮無き事だ。』

 そう言っていただけると助かります。では失礼します。

 俺は茨の冠を被り、ツンとすまし顔で椅子に座る絶世の美しさを誇る戦争と平和の女神に最敬礼をした。


しかしその後ろには、誰もいない椅子に最敬礼をする息子を訝しげに見つめる母が居た。


 「アベル、あんた何してんの?」

 美しい母の声と口調が冒険者のそれである。


 やべ、見てたの?

 

 「座っていたら、腰が痛くなっちゃって。」

 「5歳のあんたが何言ってんの。ほらさっさと挨拶に行くわよ。」


 「はーい。」

 「返事は短く!」

 「はい!」

 「良し!行こう。」

 そう言って母さんは俺の手を握った。


 そうして、司祭に家族で挨拶をし入り口に向かう。


 振り返ると、やはりアルケイオン様の像は微笑んでいる様に見えた。

 そして神殿の入口で新郎新婦を皆で祝福。


 全員馬車に乗り込んで宴会場に向かった。


 「宴会ったって、今居た僕らだけでやるんだろう?別邸ですればよくない?」

 「アベル様、式に来なかった方々も呼んであるのでございます。セイナリア入りしてから旦那様も知人を呼んでの宴会を計画していましたが、いろいろバタバタしましたから。この度一気にやってしまおうとのことでした。」


 俺の疑問にヨハンが答えてくれた。

 「なるほどね。一抹の責任も感じちゃうのは勘違いじゃないのかもね。」


 「そうね、王子の呪詛騒ぎや爆弾騒ぎ、いろいろあったものね。あんた中心にね。」

 リーサが補足を入れてくれた。


 「いや!俺中心じゃないだろう!俺は巻き込まれただけだ。」

 「そうよね、巻きこまれる隙があるのよね。」


 「この巻き込まれ主人公っぷりを、どうすりゃいいってんだよ!」


 「アベル?主人公ってあんた厨二?」

 リーサが極めて失礼な質問をしてきたが、俺は真摯に応えてやる。


 「まあ、その気は否定はできないな。リアル中二の頃は生きるだけで背一杯で、金稼いでアニメやネットにはまったころには開花したんだろうな。」


 「アベル、アニメとかネットとかちゅーにって何?」

 可愛らしい顔を子首に傾げ、ロッティーが聞いてきた。


 「それらは姉さんの頭脳から消去していい単語だよ。な、リーサ。」

 「そうね、シャーロットには似合わないしそぐわないわね。」


 「あら、私だって、知識は欲しいわ。あなた達だけなんてズルいもの。」


 「お二人とも、到着致しますよ。」

 ナイスなタイミングで、ヨハンが到着を告げてくれた。

 

 正直ほっとするよ。こういうのは口に出しちゃダメだな。

 『そうね、脳内ラブラブ会話が一番よね。』

 何がラブラブ会話やねん!


 会場は大きな迎賓館のような建物だった。

 「これって国の建物じゃないの?」


 「そうですよ。公式の迎賓館です。宰相閣下が貸して下さったのです。」

 またもやヨハンが説明してくれる。

 もうヨハンじゃなくてセバスチャンでもいいじゃないかってくらい。


 「あんた…」


 リーサの突っ込みが俺の昭和心に刺さる。

 昭和なんて知らないけどね!ホントは!


 「わかってるよ。」


 「しかし、ユーリとエレナは委縮しない?大丈夫かな?主人公枠なんだよ、今日のあの二人。」

 俺がセ…ヨハンに聞いてみた。


 「頑張ってもらうほかないですね。一番位の高いゲストが宰相閣下ご夫妻がいらっしゃいますが、それに並ぶ以上の方はなかなかいらっしゃいませんし。


 こいつ、何気にフラグたてやがった。


 「これは一波乱来るわね。」

 「やめろ!」

 俺はリーサの綿密なフラグ管理を注意した。


 「何がです?」

 俺がふいに怒鳴ってしまったので、びっくりしたヨハンが聞いてきた。

 

 「ごめん、リーサが耳元で不穏なことを言ったんで、ついね。」

 「はい、それなら構いませんが。何かございましたらお伝えください。私は旦那様のところに行って参ります。」


 「はい、よろしくね。」


 「アベル、会場に入りましょう。エスコートお願いね。」

 ロッティーが自分の右肘を曲げて俺の肩に押し付ける。


 「姉さん、僕たちの身長差だと、僕が姉さんにぶら下がっちゃうけど良いの?」

 「いいのよ?アベルが私にくっ付いているだけで私に栄養が入るの。」


 「じゃ、手を握ろうよ。」

 「まあ、素敵な提案ね。そうしましょう。」

 さすがに幼女にぶら下がるわけにもいかんしな。


 「ローズたちはどうしたの?」

 そう言えば見当たらないのだ。


 「会場の準備よ。給仕の仕事へ行ったわ。他の方々を雇えばいいのに。父様ったら。」

 「自分の家のことは、自分の家でするってことなのかな?」


 「それもあるかもしれないわね。でも…」

 「でも?」


 「でも、こんな日くらい、メイドじゃないリサとローズでいてほしかったわ。」

 「そうだね。」





 これが貴族と平民の差だ。

 ロッティーもそれは分かっている。

 しかしどうしようもないのだ。







ここまで読んでいただき、有難うございます。

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