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151.アベルくんと会議の終わり。

151.アベルくんと会議の終わり。




 「なんだと!!」

 ヴォルフガング侯爵の怒号が小さい会議室に響き渡った。


 「止めんか、二人とも。子供の前だぞ。」

 棘のある王の横槍が入り、子供の喧嘩が止んだ。


 「爺二人で何やっているのだ、まったっく。なあ、アベル。」

 そう言って俺を見てニヤつく王。


 「僕は爺ちゃんたちのじゃれあい、嫌いじゃないですよ。」


 「ほう、この爺どもが好きか。」

 「はい、どちらも仲が良さそうでいいじゃないですか。僕は歳の近い友達がいないので、羨ましいです。」


 「アベル、では、オスカーと友達になってください。オスカーも喜びます。」

 王妃が優しい笑みをたたえて俺に行ってきた。


 えー!?アイツ、マジ勘弁。

 

 「王妃陛下、王子様は僕を友達とは思ってはいないようですが。」

 「まぁ、そうでしょうか?仲良くできると思うのですが。」


 「姉がけしかけなければ。いえ、余計なことを言いました。申し訳ありません。」

 「そうですね、オスカーはシャーロットに懸想している風が見えました。それでライバル視していますよね。」

 

 「ええ、そのとおりです。」


 「オスカーとシャーロット、アベルとオリビア、どちらかが結婚してしまえば兄弟じゃないか。そうそう難しく考えるものではないわ。」


 王がまた頓珍漢なことを言い始めたぞ。

 収拾付くのかこれ?


 「そうでした、オリビーはアベルに懸想しているのでしたね。どうです?アベル。オリビーも4歳にしては十分美しく育つように見えます。」

 王妃も乗ってきた。


 マジかよ、美しく育つとかそういうんじゃねぇんだわ。

 な、お二人さんよ。

 王族とかさ、そう言うのはマジ勘弁なのよ。

 

 「そういう話ならば、親同士でお決めになってください。私の意見はないと同じなので。」

 俺はどうせ政略結婚は避けられないと諦めていると、暗に言ってみる。


 「いや、我々は子供の意思も尊重するぞ、なあ、王妃よ。」

 「そうですとも、本人たちの意思があっての婚姻ですからね。」


 だから、そう言うのもマジ要らねぇんだわ。

 石北会計な連中め。

 「それでは遠慮なく申し上げます。いつか言ったように、私はまだそのようなことを考えることは出来ませんので、今おっしゃられても困ります。よろしいでしょうか?」

 俺は、王家、ヴァレンタイン家での宴会の席での話を持ち出した。


 「確かにそう言われていましたね。まだ、アベルも5歳、オリビーも4歳です。どう心が動くかもしれませんもの。私たちも焦ることなく待つことにしましょう。陛下。」

 「うむ、そうだな、王妃よ。」


 なんだ?この会話。

 てか、この会議終わりにしねぇ?

 俺の処遇、はよ!


 「陛下、そろそろ何らかの結論を出しませんか?時間も大分経ちました。」

 ベルクシュタイン伯爵がナイスタイミングで助け船を出してくれた。


 「そうか、そうだな。アベル、其方はヴァレンティアに帰って良いぞ。」


 へ?いいの?

 

 「これと言ってお咎めも何もなしですか?」

 思わず聞いてしまった。

 

 「プッ!」

 あのカレッド伯爵が噴出していた。

 

 「なんぞ欲しいのか?」

 「いえ、まったく。」

 

 「正直言えば、余としては城に居てほしいのだ。他の貴族たちに難癖付けられる前にの。しかし、其方はクリス夫人が言ったように、ヴァレンティアで伸び伸びしていた方が、明らかに人間的、才能的にも伸びるのではないかと思っての。」


 「はぁ、ありがとうございます。」


 「ヴァレンティアは遠い。今度セイナリアに来るとしたら、もう15歳の騎士学校の入学によってであろう?」


 「多分そうなりますね。」

 片道1週間ちょいは半端ないからな。

 「その時に身体的にも、精神的にもさらに大きくなったところを見せてくれ。その頃オリビアがまだその気なら、其方なぞすっ飛ばして縁談を決めてやるからな。」

 「はぁ、そうですね。」


 勝手にすればいいさ。

 でも良かった、まだヴァレンタインの“子供”でいられる。


 嬉しい。

 しみじみ嬉しい。

 こんな嬉しく思うなんてな。

 

 そう思ったら、自然と涙があふれてきた。

 出したくないのに、嗚咽が漏れる。


 「アベル?」

 隣に座っている母さんが、ハンカチを差し出しながら、俺の様子を窺っていた。

 

 「頑張ったわね。よく頑張ったわ。」

 そう言って、優しく頭をなでてくれた。


 「アリアンナ、アベルは大丈夫ですか?」

 王妃の声が聞こえた。

 

 「王妃陛下、安心したようです。こう見えて、緊張していたんですね。」


 「母さん。」

 「何?」


 「帰ろう。ヴァレンティアへ。」

 「そうね、直ぐに帰りましょう。」


 そう言って俺は母さんの胸に埋没した。




 セイナリアを離れたのは2週間近くかかったのだが、それはまた別のお話。








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