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150.アベルくんとカレッド伯爵。

150.アベルくんとカレッド伯爵。




 婆ちゃんの発言が終わった。


 今日は父さんじゃなくて、婆ちゃんが来てくれてよかったのかもしれない。

 と考えてしまうのは時期尚早だろう。

 しかし、そう思わされる雰囲気が会議室に広がっていた。


「おっと、まだ聴かねばなるぬことがあった、スラムの爆発だ、あれはどうやった?」

王が話題を急転換させる。

チッ、覚えていやがった。


「あの魔法も先ほど述べた概念を使用しています。その空気に含まれている概念がなければモノは燃えません。つまりそれが多く含まれた空気ならば、炎は強く燃え上がります。」


ここまで話して俺は喉がカラカラだったことに気がついた。

やべぇ、こんなに緊張してんのか。


 いかん、いかん。

「すみません、失礼します。」


そう言って俺はジュースに刺さったストローに口をつけた。

婆ちゃんのマネだ。


「私はその概念を魔力固定で今座っている椅子程度の大きさに充満させ、爆発させた家に設置しました。」

そこまで言って隣の母さんを見た。

真っ直ぐ王を見ていた母さんは、俺に気づくと小さく頷いた。


「そこで人さらいに家屋に人員がいないか確認し、いないと分かったので、設置した概念に向かいファイアーボールを放ち爆発に成功させました。以上です。」

 

 俺の発言を聞いたカレッド伯爵が、神経質そうに眉間にしわを寄せ、口を開いた。

 「その概念にファイアーボールをぶつけることが爆発のトリガーになっているのですか?」


 「ファイアーボールがではありません。炎そのものがトリガーになります。誰かが小さい炎の灯ったロウソクをその概念の塊に持ち込んだだけで爆発します。それほど危険で扱いが難しいモノです。」


 「なるほど、それほどまでに危険なものをスラムの只中で使ったと?」

 カレッド伯爵は更に眉間のしわを寄せる。


 「はい、十数名に囲まれ、これを戦意喪失という形で排除するには、それがベストだと思い実行しました。」


 「彼らを昏倒させれば良かったのでは?」


 「人員が広範囲に広がっていましたから、概念を充満さるには広すぎると判断しました。先ほど述べたように、種火一つで爆発しますから。」


 「アベル君にとって適正な判断でしたか?」


 「あの時の私にとっては適正な判断だと思いました。しかし、ここでこうしている時間を過ごしているということは、適正ではなかったのかもしれませんね。」


 そう言い切った俺の話を聞いたカレッド伯爵は眉間のしわは何処かに行ったと思ったら、逆にニッコリと微笑み

 「私の質問は以上です。アベル君は非常に理性的で有る少年のようですね。私は彼を信用します。」


 そう言うと彼はお茶をゴクリと飲んだ。


 俺もホッとしてジュースに手を伸ばすと


 「この部屋をその概念とやらで充満させるとどうなる?」

 いきなりヴォルフガング侯爵が目を輝かせて聞いてきた。


 この世界の兵器、魔法としてはぶっ飛んでいるからな、気になるんだろう。

 「充満させるとですか?皆さんも残って?」


 「いや!違う!爆発させるとだ!」

 食いつかんばかりに聞いてくる。


 しゃーねー爺さんだ。

 確かに嫌いじゃない。

 爺ちゃんも俺をよく見てやがんな。


 「そうですね、この部屋の天井方向は爆発で抜けるんじゃないですか?横への被害はちょっと私でも想像出来ません。」


 「天井が抜ける…」

 ベルクシュタイン伯爵が思わず天井を見上げ呟くのが見えた。


 「その程度か?」

 ヴォルフガング侯爵はお気に召さないようだ。


 「軍務大臣閣下はどうなさりたいので?」

 俺は悪戯心で聞いてみた。


 「俺はこの城が爆発するかなと思ったのだ。なら、この城全体を爆発出来るか?」


 「可能ですが魔素不足になるでしょうね。それならこの城全体の概念を2割程度上げてあげて火が付けば、我々の身体は骨だけしか残らないくらい高温で焼けます。その方が効率がいいでしょう。」

 俺はあえて真面目な顔でそう言った。


 その言葉を聞いた婆ちゃんは

 「嫌だ、怖い。」

 と、露骨に顔をしかめた。


 「なるほどな、爆発よりも火力を上げるか。うん、うんますます気に入った。陛下、アベルは城に置くべきですぞ!儂のそばに置かせましょう。」


 「却下だ。」

 とても短くヴォルフガング侯爵を否定した声が聞こえた。

 宰相閣下。

 爺ちゃんだ。


 「何故だ!ビル!!」

 またビル呼びか。

 お前ら仲いいな。


 「アベルは兵器ではないからだ。グスタフ、うちの孫を兵器だと思っただろ。」


 「いや!違う!優秀な魔法使いとして、軍務に仕えさせようと思ったまでだ!国の益になるものだ、それの何処がおかしい!」


 「いや、お前と一緒だと、アベルが馬鹿になる。」



 不穏な空気が会議室を包み込んだ。




ここまで読んでいただき、有難うございます。

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