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148.アベルくんと魔法の概念。

148.アベルくんと魔法の概念。




 俺は王妃の言葉を受けて続けた。


 「そうです、あの時に使いました。魔法の簡単な概要を言えばこうです。皆さん空気を吸っていらっしゃいます。しかし鼻と口をふさいで空気を吸えなければ失神し、それが長く続けば死に至ります。」


 俺がこう発言した時点で、会議室の空気が極端に重くなった。

 しかし俺は続ける。


 「対象の頭部を魔力固定で囲みます。さっき母が言いました、今魔法の根本の概念で対象の頭部に囲まれた空気を全て追い出し、その概念をさらに消し去る。それで対象の頭部の空気がすべて無くなるわけです。これにより対象は窒息、失神に至ります。必要ならば、さらに長時間魔法を解除せずに放置、死に至らしめることも可能です。」


 「その概念の説明が出来ますか?」

 ベルクシュタイン伯爵が質問してきた。


 「できます。」

 そう言って、俺は依然セイナリアのに来る途中、母さんに説明したのと同じ説明をした。


 「宰相よ、理解できたか?」

 王が爺ちゃんに聞いた。

 「いえ、さっぱり。」


 「ベルクシュタインは?」

 「私も魔法は扱えますが、この概念は先進過ぎて、さっぱり。」


 「様々な魔法の話を聞いてきたが、アベルの魔法は余もさっぱりじゃ。どうしたものか。為政者としては傍に置いて置ければ、これほど心強い術師も居らぬがな。アベル?やろうと思えばここ全員を。」


 「思いませんし、やりません。」


 「そうか。それは良かった。しかし技術的には?」

 「やれます。」


 「ふむ。アリアンナ、余はアベルを宰相の家に置くか、城に置きたい。どう思う?」


 やはりこうなるよな。

 俺としては正直であれと全部話したのだが、危険人物とみなされてしまったか。

 そんなことを思いながら、母さんの口が開くのを待つ。


 ん?母さん?


 「辺境伯の名代として答えなければならないとしたなら、陛下のご裁可に任せるほかありません。」

 十分に時間をおいて母さんは答えた。


 実際にはこう答えるしかない。

 ヴァレンティアには帰れないか。


 「しかし!母親としては承服しかねます。この子は特殊です。皆さんとも渡り合えるくらい口が立ちますし、魔法の才能、剣術の才能全てにおいてこの世界のどの5歳児よりも優れているでしょう。でも、まだ5歳なのです。まだ、母と手をつなぎ、遊んでいてもいい年ごろなのです。」


 俺の隣で叫ぶように話す母さんは、とても感情的だ。

 それではこの人たちには届かない。


 俺はふと、婆ちゃんを見た。

 俺の視線に気づいた婆ちゃんは、伏せた瞳を上げ一旦俺を見つめ返してから、首を小さく横に振った。


 婆ちゃんも母さんの言では上手くいかないと思っているのだろう。

 困ったな、エドワード爺ちゃんからの剣の修練も中途半端、ヴァレンタイン辺境伯領にあるダンジョン攻略も出来ずに、一生珍獣扱いで終わるのか。


 いっそのことこの城をもろとも焼いてしまおうか。

 なんて、父さんたちが悲しむようなことをできるわけないじゃないか。

 国が割れて、パーシー公爵の有利な国家なんて面白くもない。


 さて、どうしようと考えていたその時、母さんの感情論がもろにヒットした人がいた。

 「陛下、アリアンナの言うとおりです。確かに今一とおり聞いたところでは、国家自体も持て余してしまうやもしれません。しかしまだ5歳ですよ?」


 そう、王妃だ。


 「どうもご婦人たちは子供のことになると感情が先走ってしまうように見える。しかし、余も子供を持つ身としてそれも少しはわかるようになった。子を持った夫人の先輩として、どう思う?セントクレア侯爵夫人よ?」


 王が、王妃の言葉を得て婆ちゃんに発言?いや、これは助言何だろうか?を求めた。


 その王の言を得て、婆ちゃんが口を開く。

 「僭越ながら、意見を述べさせていただきます。陛下が仰られたとおり、女性は感情論で物事を語りがちです。しかし、殿方の理論ばかりの会話では成り立たない部分を補完する力が働きます。ときに議論野人言関係を円滑に保つ力がありますので、それはお忘れなきよう願います。さて、アベルの件ですが、セントクレア家に任せて頂けるのでしたら、宰相閣下と一緒にここの誰にも負けない論客に育て上げて見せましょう。」


 婆ちゃんはここでいったん区切って涼しい気な顔をして皆を見回す。

 中央で幅を利かせる上級貴族の御婦人は、迫力が違いますね。

 母さんなど足元にも及ばない。


 そして、控えていたメイドに向かって




 「お茶のおかわりを。皆様も如何です?アベルにはお茶よりジュースの方が良いわよね。」

 と言って、その場を支配した。

 

 




 


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