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147.アベルくんと会議中。

147.アベルくんと会議中。




 「其方らよいか?話が進まんぞ?」

 どうやら王自らしびれを切らしたらしい。

 

 「はっ!申し訳ございません。」

 グスタフさんがサッと、引っ込んだ。

 案外空気は読めるのかもしれない。


 「では、アベル、スラムでの詳しい状況を報告してください。」

 そう言って、爺ちゃんが場を取り仕切り始めた。


 「あの日はとにかく市場に人が多く、とても混んでいました。僕は決して気が緩んでいたわけではないのですが、ほんの一瞬、人波に押されただけで、家族とはぐれてしまいました。私の背格好このとおりですので、母たちも人波に飲み込まれた私を探すことは不可能だったと思います。」


 「ふむ、余は人波というものを見たことはないが…」

 「陛下、年頭の祝いの言葉を発するときに、民草が集まるではありませんか。あの中にアベルが入ったと思えばいいのではないですか?」

 王が想像できなかった事象を、王妃が補完する。

 良くできた奥さんだ。


 「おお、あの中にアベルが入れば、それは見つけるのは苦労するであろう。アベル、続けていいぞ。」

 王は納得した様子で俺に報告の続きを促した。


 「なんとか中央ロータリーまで帰ろうと試みたのですが、都度人波に押され、道に迷い、着いた先がスラムでした。」

 俺がここまで報告すると、カレッド伯爵が口を開いた。


 「家族とはぐれ、焦る気持ちは分かりますが、迎えを待たずに歩き回るのは良い手ではなかったですね。まあ、年齢を考えればわかる気もしますが、今の落ち着きを見るにそのようなことも考えられたでしょうに。」


 ん?俺の評価、高くね?

 まあ、こんな会議室で、大人、しかも国家の重鎮たちに報告を行う5歳児が他に居るとは思えないけどね。


 「確かに今思えばそのとおりですね。いささか考えが早計だったのかもしれません。しかし、感情的に焦っていたのは事実なので、あの状態の自分を否定も出来ません。」

 俺は現状の考えのありのままをカレッド伯爵に話した。


 「実に理論的で成熟した考え方が出来ていますね。まさに回りが至宝として持てはやすわけだ。よろしい、話の腰を折ったね、続けてください。」

 そうカレッド伯爵は報告を促した。


 「はい、スラム内に立ち入ってすぐ、中年の女性が現れました。彼女は最初、友好的な口調と態度でしたが、私と会話をして行くにつれ、口調も粗野に、そして小刀を出して私を脅し始めました。会話の内容としては、私を略取し、親族から金品を奪うとの発言があったと記憶しています。」


 「おう、そりゃ、典型的な人さらいのやり口だな。坊主、で、その女をどうしたんだ?」


 俺の報告にグスタフ公爵が口を開く。

 確かにこの人と話している方が、ほかの連中より楽そうだ。


 「魔法で、昏倒させました。」

 これを聞いて一斉にざわつき始める。


 「ヴァレンタイン辺境伯夫人、人体に直接機能する魔法は治癒魔法以外ないと記憶しているが、どうかね?」

 ベルクシュタイン伯爵が母さんに質問した。

 魔法のエキスパートに聞くのが一番という判断だろう。

 思考が早すぎだろ、なんだこの人。

 ま、俺に聞かれるよりましだが。


 「お答えいたしますが、お答えできないと申しておきます。なにせこの魔法につきましては、アベル自信が開発し、アベルしか使用が出来ない魔法となっています。私には彼が開発したこの魔法の根本的な概念が理解できないのです。」

 

 母さんは単純に俺の固有魔法という事で済まそうとしているみたいだ。

 母さんの言葉を聞いて会場内から、うーん、と一斉にうなり声が聞こえた。


 酸素の概念をここで発表してもいいけど、多分理解は難しいだろ。実験のしようもないしね。


 「アベル、この魔法を説明できるかい?」

 爺ちゃんが優しく聞いてきた。


 「はい、ただこの魔法をご覧になった方が既にこの中にいらっしゃいます。」

 俺がこう言うと、王が


 「それは誰か?」

 と聞いてきた。


 「王妃陛下でございます。先日、呪詛にとらわれた王子が暴走、姉シャーロットに怪我を負わせた事件がありましたが皆さんご存じでしょうか?」

 あれ?これ言っていいことかな?

 ヤバいか?


 「良い、続けよ。」

 王がさらに促す。


 「ああ、オスカーを気絶させたあの魔法ですね。」

 報告しようと口を開けた俺に割り込む形で王妃が発言した。

 

 「あ、アベル、失礼しました。続けてください。」

 そう言って、直ぐに謝罪し、口をつぐむ王妃。




 王妃かわよ。

 つづく。


 




ここまで読んでいただき、有難うございます。

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