16.アベルくんと魔法の実験。
16.アベルくんと魔法の実験。
ハッ!
寝てしまっていたのか。
マーガレットめ!
もう既に子供部屋の照明が消され、ほぼ真っ暗な状態でシーンと静まり返っている。
ちなみに、この部屋の明かりは、魔道具のランプが使われているんだそうだ。
魔道具とは、ダンジョンで取れる魔石をエネルギーに変え、明かりを照らしたり、物を動かしたりする道具 を指すんだと。
ダンジョンと魔石ね。
金の匂いがするぜ。
さて、今は何時くらいだろう。
周りは静まり返っているから深夜なんだろう。
んじゃ、始めようか。
とりま、魔素溜まりのチェックからだな。
うん、アリアンナ母さんが言ったとおり、肺にあった魔素は霧散し、魔素溜まりに保存されている。
ここまでしっかり魔素を感じられていれば、俺にも魔法を使う素養はあるってもんだろ。
では、右手を差し出し、人差し指をピンと立てよう。
腕が短い…、指もか。
これじゃ、ちと顔に近すぎないかい?
まあ、いいか。
できるだけ離してと。
魔素溜まりの魔素を、力になれってイメージしながら人差し指に導いて行く・・・
********
うーん、さっきからやっているけど、魔素から魔力ってモノに変換されるイメージにならんね。
これがスタンダードな魔力の変換方法なんだろうか?
とりあえずアリアンナ母さんの方法を分解して、己のわかりやすい変換方法を見つけてみるか。
ちょっと考え方を変えてみよう。
魔素溜りの中の魔素を魔力に変えるイメージね。
一気に変えると怖いから、少しずつだな。
しかし、魔力ってなんだろうね。
最終的には、事象に昇華できる力ってさ。
そんな力は前世じゃなかったからねぇ。
魔力はエネルギーだって考えればどうよ。
前世で身近なエネルギーと言えば、電気とガスだよな。
最終的には、電気もガスも何かしらに変換できる。
火が灯ったり、雷でドーン!とかさ。
とりあえず実験してみよう。
何がいいだろう?
電気ってのもハードル高いような気がする。
とすれば、ガスのイメージで実験してみるか。
そうすると魔素溜りの中の魔素は液化天然ガスってことだな。
それが気化してガス化するイメージ。
ひたすら、イメージ。うーん…
おや?
魔素が減ったか?
出来たのか?
いや、まだわからん。
とりあえず、指に集まるイメージだ。
イメージ、人差し指にあつまれ。
おお、スルスルってイメージどおり腕を伝わってなにかが来る。
人差し指に陽炎のようなものが立っているが、これが魔力か?
よし、よし、程よい緊張感だぜ。
さすがアベルの身体だ、何事もうまくいくな。
次は事象に昇華だ。
ガスといえば炎だろう。
ガスの炎ね。
今、赤ちゃんの姿でちょうどいい炎の大きさといえば、ライターだよな。
よし、上手く行けばおなぐさみ、ライターのイメージを開始。
ライターの着火ボタンのイメージ。
「カチッ!」
「ボッ!」
俺の魔法で、小さな新生児の指先に灯された青い炎が、俺の呼吸でゆらゆら揺れる。
お!点いたよ!おい。火が点いた!
いけね、危ないから、すぐ消してと。
指と腕が短いからね。
シーツに燃え移ったら大変だ。火だるま赤ちゃんなんてシャレにもならん。
でも事象にはたどり着いたな。
しかしさ、ガスのイメージで魔力に変換すると、事象の汎用性がないような気がするなぁ。
全部、火になっちゃう感じ。
それに、これじゃイメージするのが煩雑過ぎて、戦闘には不向きだよな。
魔素をガスにイメージって、一段階余計なイメージが必要ってことだもんな。
アリアンナ母さんが言っていた、一連の流れをイメージとして成立させる、これね。
アリアンナ母さんは、これが出来ていんのか。出来てんだろうな。
やっぱ、アリアンナ母さんはスゲーや。
でもさ、これが出来ないと、戦闘には向かないってことだよな。
アリアンナ母さんも戦闘していたんだろ。
だからこそのA級冒険者なんだろうし。
しかし、戦闘か。
ノヴァリス王国の歴史書を読んでいたロッティーも、『500年前に戦争があった』なんて言っていた。
エドワード爺ちゃんとローランド父さんが、剣術というものを極めているって事実は、確実に戦闘があるってことだもんな。
人を殺すの?
うへぇ、嫌だ嫌だ。
そう考えると、結構シビアな世界だよな、ここもさ。
うん、そんな事ばかり考えても駄目か。いざって事もあるかもしれん。
自分の身は自分を守れるようにならんといかんよな。
おっと、余計な事を考えちまった。
思考を魔法へ戻そう。
今の俺の知識だと、魔力の変換とかが偏った方向に行きそうだから、こりゃ一旦今のやり方は封印だな。
魔力のイメージが固定されて、更に固定された事象しか昇華できないなんて、汎用性に欠ける魔法じゃいかん。
ちゃんと、俺が直接講義を受けられる年になって、アリアンナ母さんの講義を聞いて、キチッとした魔力のイメージが出来るようになるのが、ベターな選択なんだろうな。
講義はロッティーでさえ5歳からだから、あと5年かよ。
まあ、赤ちゃんやって、ベッドでゴロゴロしていても、もっと良いアイデアは浮かぶかもしれないし、気長にいこうや。
その前にさ、魔素の研究が先なんじゃね?
まだわかんないことが沢山あるもの。
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