145.アベルくんといつものお城。
145.アベルくんといつものお城。
ユーリの求婚が成功に終わり、母さんと婆ちゃんが年甲斐もなくキャーキャー言ったり、セントクレア家のメイド、ミナが小さい声で
「いいなぁ、いいなぁ、いいなぁ。私もヴァレンティアへ…」
と、つぶやきを繰り返していたり、その隣でユーリとエレナがベタベタイチャコラしちゃったり。
ちょっとしたお祭り騒ぎも城門に達したら静かになりましたとさ。
今回は、近衛騎士がエスコートしているから顔パスですわな。
城に入る前に、我が家の使用人たちとはお別れ。
彼らは使用人用の控室に連れていかれる。
我々3人は、まだ付いてくる近衛騎士と一緒に謁見の間へ入る前の控室へGO!だ。
まあ、馴れたもんだね。
馴れたくねぇんだよっ!
はぁ、はぁ。
「あなた、何やっているの?」
俺のことを呆れか、心配か、でも胡乱な目で見てくる母さん。
「いや、別に…」
「あらそう。」
と、母さんと婆ちゃんは相変わらず落ち着いたご様子。
この二人は、生まれたときからセレブレティで、ハイソサイエティでございますからね。
陰キャで虐待児でキモオタの魂持った俺と違うんでございますのよ。
などとやっている間に文官登場。
謁見の間に通された。
俺の顔を見るなりニヤケる王。
その隣の王妃は優しく微笑み、宰相閣下はいつものウインクだ。
「三人共、よく参った。セントクレア夫人、二人の保護者役、ご苦労。さて、今日は何の話か?」
王は白々しく、事の状況を最初から説明せよと言う。
「はい、陛下。此度は私が市井の方へ遊びに移行とアベルを誘ったばかりにアベルが騒動を引き起こすことになり、大変申し訳ございません。」
俺が口を開く前に、母さんが王へ釈明を始めた。
てか、釈明か?これ。
まあ、いいや。
「うむ、その騒ぎというのが、此度の爆発のことだな、アベルよ。」
な、知っていて聞くんだから度し難い。
あ、思っていても口には出さないから大丈夫。
「はい、十数名の人さらいに囲まれましたので、仕方なく脅しのつもりで発動した魔法でした。」
「ふむ、其方の魔法の爆発か。興味はあるが、この場では控えよう。よし、あい分かった、仔細は別室で聞くとしよう。宰相も、王妃も参れ。では、準備が済むまで控室で待つがよい。」
「はい。」
俺たちはそう言って、謁見の間を後にした。
そして控室。
「新魔法を謁見の間で聞くような人じゃなくて良かったよ。」
「そうね、聞かれても、気体って言うんだっけ?その概念をあなたが説明できないものね。」
「そうなんだよね。聞かれたら答えるしかないけど、この前に母さんに説明したようなことになりかねないよね。」
「ああ、説明された側が置いてけぼりに合う感覚ね。」
「出来るだけそうならないようにはしようと思うけどさ。」
「アベルが天才的で、アベルにしかわからないでいいのよ。」
唐突に婆ちゃんが口をはさんできた。
それで周りが納得するなら簡単で良いんだけどさ。
「そうね、それで行きましょう。」
あれ?母さんも納得しちゃった。
「それならそれで僕は楽だからいいんだけど。」
どうも釈然としない思いを持ちながら、二人に話した。
「陛下は剣の人ですからね、魔法の話は好きだけど、原理や理論なんて興味はないのよ。」
婆ちゃんはこう言うが、確かに武術の人達はバフだけしか使えんから、関係ないっちゃないのよね。
魔法大学校の連中が聞きつけると問題があるが。
俺としても、科学と魔法のハイブリットが知れるのは本意ではないんだ。
危険だし。
おそらくだけど、転生者であった旧アベルくんこと、英雄王ノヴァリスが科学を広めなかったのも、ここに原因があるんだと思うんだよね。
ま、そこらへんの考察は以前やっているからね、確かだと思うんだ。
彼自体、魔素タンク化、それによるブレインブーストやマッスルブーストも使っていた節があるしな。
あ、魔素によるグリコーゲン変質化、それによる筋肉の高効率化をマッスルブーストと呼ぶことにしました。
安易!
ま、軽く三人で打ち合わせをしていたらまた件の文官登場。
「会議室の準備が整いました。こちらにお出で下さい。」
などと連れ出された先は、またこじんまりとした会議室だった。
ここまで読んでいただき、有難うございます。
☆の評価ポイントとブックマークで得られる作者の栄養があります。
よろしければ、下にある☆とブックマークをポチっとしていってください。
どうかよろしくお願いします。
この作品を気に入ってくださると幸いです。