143.アベルくんと騒動の後。
143.アベルくんと騒動の後。
街でからは早々に馬車で別邸へ戻ってきた。
帰ってきたら、すでに夕食の準備が出来ていたから、俺がスラムのボロ屋を爆破してから、鐘3つ位経っていたのか。
それからが大変だった。
父さんからみっちり怒られた。
5歳の子供が不可抗力と言っても大人たちとはぐれ、危険なスラムに入り、人さらいたちに会い、それを脅すためにボロ屋と言えど戸建てを一軒爆破した。
その音ときのこ雲は王城からも確認できたそうだ。
いやー参ったなぁ。
でも、あの時の魔力操作は完ぺきだったからな。
あの耳をつんざく音量の爆発音、きのこ雲の立ち方で、あのボロ屋しか壊れなかったし、燃えなかった。
酸素を限定的に魔力固定で仕込むのは、何かあったときに有効というのが知れた。
父さんに何時間怒られたとしても、この実績は代えがたい。
「聞いているのか?アベル。」
「もちろんだよ、父さん。本当にごめんなさい。」
「怖い思いをしたんだ、それを排除するために今できる最高の魔法を使ったんだと思う。しかし、本当に幸いなことに、付近の住宅も、住人にも全く損害がなかったそうだ。しかも当の人さらいたちは、アベルを神に仇名す者と認識して、懸命にアベルに言われた消火活動を騎士団が到着するまで行っていた。アベルを相当恐れていたそうだ。」
あれだ、小刀構えた中年女性に、お前にとっては悪魔だって言っちゃったからな。
あれが湾曲して連中に広まったに違いない。
「父さんは爆弾事件を追っていてい忙しい。なのにお前はまた事件を増やした。バドルおじさんなどは、お前のことを大物だなどと言って笑っていたが、セイナリア市の騎士の仕事を実質的に増やしたんだからな?」
「はい、バドルさんにお会いすることがあったら、キチンと謝罪します。」
「うん、お前も巻き込まれて起こした事件だ。事件の責任はあるが、情状酌量も勿論王城もセイナリア騎士団も感じてくれているから、そこは心配することはない。ただもう一回王城に顔を出して説明はしなければならないぞ?わかるな」
俺は、俺の目を見つめて諭す父さんに静かに返事をした。
「はい。」
またあの王にからかわれるのか。
オリビアをまた押し付けて来るくらいはやってくるかもしれない。
あのオリビア自身も4歳と思えないほどの知略家だ、自分を俺に売り込むために王となにを企んでいるか分からない。
そこに来ると、オスカー王子なんかは本当にそのまんま子供だ。
取り巻きも御し易かったろう。
ただ呪詛騒ぎがあった以降、王室は警戒するようになっただろうから、一方的な派閥だけが王子を独り占めできなくなったのではないかな?
知らんけど。
「僕は忙しくてアベルに付いて王城へはいけない。アベルとはアリアンナと、御義母さんについてもらうことにした。あまりセントクレア家の人に迷惑はかけたくないんだが、アリアンナにも管理責任が掛けられてしまうからね。」
「はい、父さん。」
「うん、なんだか僕もアベルも首都に来てから巻き込まれてばかりだから、ヴァレンティアに帰りたくなるな。」
父さんは自嘲気味ん時笑いながら僕に話しかける。
「そうだね。盗賊だったり、呪詛騒ぎだったり。来てからずっとだもんね。父さんと街に出かけたのは、アルケイオン様の神殿と、この前の買い物だけだもの。もっとゆっくりしたいよ。そうだ、エレナとユーリの件はどうなったの?」
「あれも進めているさ。ヴォルグレット男爵の家にはもう早馬で手紙が着いているんじゃないかな?アベルも使用人のことまで考えてくれてありがとうな。」
うわ、早馬使ったのか、お金かけたね。
ユーリとエレナも後へは引けないぞ。
「ううん、僕もあの二人にが大好きだからね。幸せになってもらいたいのさ。」
「そうだな、よく遊んでもらっているみたいだしな。」
「父さんありがとう、あと僕が二人に話をしてみるよ。父さんたちが直接話すと恐れをなす場合があるからね。」
「そうかな?でもアベルがワンクッション入るというのは、悪いアイディアではないかもね。僕はまだ冒険者の気質が残っていて、使用人たちには馴れ馴れしくしちゃうんだけど、領主が使用人の結婚に口を挟むのは、それ相応のことだからな。」
「そうだね、父さんは高級貴族っぽくないところが僕も大好きなんだけど、締めるところは締めないといけないんだろうな。母さんに任すと、さらに大事になるしね。」
俺はそう言って父さんと二人で笑った。
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