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140.アベルくんとスラム爆破事件。犯人はあの男。

140.アベルくんとスラム爆破事件。犯人はあの男。




 「アベル!」


 俺を見つけた母さんは、護衛の騎士を置いてけぼりにして俺に猛スピードで駆け寄ってくる。

 「ドキューン!」って効果音が付きそうなほど見事な走りっぷりを見せる母さんは、普段着のドレスを翻し、平気で身体強化を掛けて俺に迫りくる。


 もうね、淑女どうこうって話ですよ。

 しかしよく見ろ、これが超一流の冒険者の身体強化だ。


 母さんはすごい勢いで俺に駆け寄ると同時に、俺を拾い上げ自らの胸の中に俺を埋める。

 マジで埋まる。

 そんくらいデカい。

 いやそんなこと言っている場合じゃない。

 「ウゴッ!」

 息も詰るわけだ。


 「あの爆発あなたでしょ。」

 唐突に母さんは俺に聞いてくる。

 

 俺は母さんの胸の間から顔をだし

 「あ、見えた?ちょっと派手に爆発したね。」


 「あ、見えた?じゃないわ。またローランドと一緒に王城に行かなきゃならないわよ。」

 「それはそうだろうねぇ。」


 「それはそうと、なんであんな真似したの?というか、あなた香水の匂いがするわね。」

 「母さんたちとはぐれてから、なんとかロータリーに戻ろうとしたんだけど、更に人波に押されてね、結局スラムに着いちゃってさ。」

 

 「うん、着いちゃって?それから?」

 「人のよさそうなおばちゃんが出てきたんだけど、その人が結局人さらいでね。僕を小刀で襲おうとしたから、魔法で昏倒させたんだけど。」


 「ちょっと待って、何?魔法で昏倒って?」

 「ほら、王子が僕と姉さんを襲ったときに使った魔法をまた使ったの。」


 「あなた私にその話した?普通、人体に直接機能する魔法は治癒魔法以外ないんだけど。」

 「説明は難しいんだけど、火を高温にする概念の魔法の話はしたでしょ?」


 「その話は聞いたわ。私には再現不可能なんでしょ?」

 「その概念の理解が出来ないとね。でね、その概念自体は気体なの。空気と一緒。」


 まあ、概念なって説明はしているが、俺が生成しているのは酸素だ。

 科学が進んでいないこの世界の人達に、見えないものは実はあるって説明するほど、不毛なことはないのだ。


 「うん、それで?」

 「魔力固定でね、対象頭部をその気体を生成して覆うんだ。」

 

 「そうすると、苦しくなるの?」

 「ううん、まだ。覆っている分にはまだ呼吸は出来るんだけど、その生成を逆に気体を無くす方向に事象を昇華させるんだ。すると、魔力固定内は空っぽ。空気が無くなっちゃう。」


 「今の説明で全部?」

 「そうだよ。いつかその概念を母さんの目に見える方法で伝えられるよう、勉強するよ。」


 母さんはちょっと呆れたような笑い顔をした後

 「うん、それは嬉しいんだけど、それは、いま私たちの周りにある空気を一回追い出して、追い出した気体?をまた無くすって事ね。あなた、これ怖いわね。警備の騎士とか関係なくなるじゃない。どこでも入れ放題になりそう。」


 「怖いよね。思いついたときはどうしようかと思ったけどさ。使ってみると便利なんだよね。一対一の決闘が僕には無意味になっちゃった。」

 

 「でもあなたは剣の修練もするんでしょ?必要ないと思っているのに。」

 「そうだね、爺ちゃんや父さん相手だと、この魔法をかける前に僕はやられちゃうから。修練で身に付けた反射で物事を解決してしまう人たちには、やはり物理的強さも必要なんだよ。」


 「事象に至るまでの思考が私たち魔法使いには必要だものね。その間をエドワードお義父様やローランドは見逃さない。確かにそのとおりだわ。ちょっとの殺気も見逃さないしね。」

 「そうなんだよ、その肌感覚というか、気配察知も剣の修練でしか身に付かないから、頑張らないと。」


 実際は俺にはブレインブーストがある。

 これによって、爺ちゃんと父さんにもある程度、対抗は出来ると思うけど、あの二人ある意味化け物だからな。

 慢心はしてはいけないんだ。

 

 「で、爆発はどうやったの?」

 「あ、あれもさっきの概念の応用でね。」

 この後ざっくり説明をした。

 俺は酸素爆発の説明をできる限り母さんに分かりやすくしたつもりだ。

 理解したかどうか話はわきに置いておこうよ。

 だから、酸素云々は俺もめんどくさいし。


 「その概念を私も何としても理解できなければいけないわね。」

 「母さんが無理に覚える必要はないんじゃない?」


 「あなただけが使えるのはまずいのよ。まず私が検証してって形を作らないと、あなたは何をしでかすか分からないもの。」

 「うー、ゴメンね、母さん。」


 「仕方ないのよ。母様が言ったとおり、あなたは特別なのですもの。あなたの母親として、私も少しは特別にならないとね。」

 そう言って母さんは優しく微笑んだ。




 この俺たち二人を、リーサは少し上空からつまらなそうに眺めていた。


ここまで読んでいただき、有難うございます。

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