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137.アベルくんは迷子!

137.アベルくんは迷子!




 俺は絶賛迷子中である。

 ここまでの過程を説明しよう。


 ご機嫌な母さんとそのご一行は、劇場に行った。そしたら、お転婆魔法使いアリアンナ・セントクレアがって来たってビックリしたモギリのおっちゃんは、片膝ついて頭を垂れたり、劇場支配人が迎えに来て頭を垂れたり、帰り際には主役の二人も現れて母さんに頭を垂れたり、大変だった。

 なんたってモデルの一人だしね。


 劇場の対応に超ご機嫌な母さんは、この前行った木漏れ日って名前のレストランへ行って、使用人たち5人とリーサ用の席まで用意させ、最上級ランチコースの大盤振る舞いをやってのけた。


 その後、母さんが言ってみたいと言ったのが、南方面の市場だった。

 ここは、庶民用だからとにかく混んでいる。露店もビッチリ並んでいる。

 この前来た時も酷い人混みだったが、今回もその人波に俺は押されてしまった。

 振り返ったが、10歳のローズの背丈はもう見えず、護衛の騎士や母さんすら、あっという間に見えなくなってしまった・


 「さて、困ったな。メイド勢や騎士たちが叱られなきゃいいが。」

 俺はポケットを探ってみた。

 銀貨が3枚に銅貨が5枚か。

 日本円で3万5千円。

 日本でこの金額持っているなら、まあ何とかはなる。

 大人ならね。

 

 とりあえず、俺は人波を避け、ロータリー方面であろう方に進んでみた。

 でも人波の中って、方向感覚を狂わすのね。

 最初から良いって程のもんでも無かったけれども、さらに輪を掛けて悪くする。


 あれよあれよという間に、庶民の住宅街、いや、スラムっぽいな、ここ。

 さっきまでの雑踏とその騒がしさが消え、不気味に視線だけを感じる。


 「こりゃ、やっちゃったかな、まあ、いい、戻ろう。」

 ぼそぼそと独り言を言い、元来た道へ帰ろうとしたその時


 「坊っちゃん、どうかしたのかい?」

 猫なで声のような声を掛けられ、そちらの方を向く。

 

 明らかに中年太りの女性が立って俺を見つめニッコリと笑っている。

 「ああ、いえ、大丈夫です。」


 「まあ、怖がるのも仕方ないね。でも、坊ちゃんみたいな身なりの良い小さい子が来ていい所じゃないんだよ。」

 「ええ、そうでしょうね。だから帰ります。」


 「一度入ったらそう簡単には帰せないね。」

 急に中年女性の声色にドスが効き始める。


 「ええ、ではどうするので?」

 「そりゃ、あんたを保護してご両親からお金でもいただくさ。だからそれまで大人しくしておくれ。じゃないと」


 俺は小首をかしげ

 「じゃないと?」


 「これで口をきけなくしてやるさ。」

 そう言って女は刃渡り15センチ程度のナイフというより小刀を取り出した。


 「おばさん、やめない?」

 俺は落ち着いて聞いてみる。


 「ハッ!これまで出して、やめる奴は馬鹿さね。目の前に美味しい金蔓がいるのにねぇ。」

 「やめないんだね?」


 「やめないよ!!餓鬼!!」

 そう言うと中年女性は小刀を振りかぶった。

 ブレインブースト発動、魔力操作で女性の頭全体を酸素で覆う。

 酸素が覆われたかの確認はできないが、経験則で言えば一瞬だ。

 即、魔力固定をそのままに、酸素を消す。

 女性の頭の周りは、文字通り空気の無い状態になった。

 向かってきた女性は途中で足が止まる。

 「俺が鴨だと思った?子供を金蔓だと思うようなお前には悪魔だろうよ。」

 そう俺が言うと、女は後ろにガツンと言う音を立てて倒れた。

 頭をぶつけた音だろう、程なく頭から血が流れてきた。


 「なにしやがった餓鬼!!」

 という声とともに、方々のボロ屋からいろんな人種が出てくる。

 やべぇ、王道展開。


 「おい、マイ!!起きろ!餓鬼!!何しやがった!!」

 何の獣人だろう?猫耳っぽいな。

 そんな獣人が俺に吠える。


 「死んでなきゃ気絶しているだけだが?」


 「この餓鬼ゃあ!」

 と、猫耳は叫ぶが向かってはこない。

 警戒しているんだろう?


 「その一番手前の家は誰も今いない?」

 「居たらどうするってんだ!?」


 「いや、丸焼けになる。」

 俺はそう言うと小さなファイアーボールをその家に飛ばした。


 「おめぇ魔法使いか!」

 猫耳が叫んだ途端、ファイアーボールがその家に到達し

 「ドゴンッ!!」

 という派手な音と地響きとともに家だけが爆発し、きのこ雲が上空に舞い上がった。


 俺の耳も「キーン」と鳴っていた。

 こりゃ思った以上にヤバい魔法だwww


 みんな呆然とした顔で俺を見る。

 魔力固定で限定的に酸素を充満させて、爆破も限定させるって、うまくいくもんだね。


 「さて、俺になんか用?」

 「い、いや。」


 「それなら突っ立ってないで、消火活動した方がいいよ。」

 「お、おう!」


 そう言って猫耳たちは倒れた女性をそのままに、消火活動へ向かった。

 明らかに俺にビビっていたな。

 そりゃそうか。

 しかし派手な音がしたな、ばれたらヤバいか。

 王城行って謝罪とか嫌すぎる。


 まあいいや、どれ、戻ろうかね。

 

 


 「パンッ!」

 戻ろうと振り返った俺の頬をいきなり張られたのだった。

 



 なんで?



 


ここまで読んでいただき、有難うございます。

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