135.アベルくんとロッティーとデート?母さんとデート?。
135.アベルくんとロッティーとデート?母さんとデート?。
御者のおっちゃんは程無くして捕まった。
スラム近くの安宿に居たそうだ。
動機はありきたり、借金返済。
ヴァレンティアでは一切近付かなかった賭場に、首都のにやって来て羽を伸ばし過ぎたのか入ってしまった。
あれよあれよという間に手持ちの金は減り、賭場の近くで営業している高利貸しに手を出した。
パチンコ屋の駐車場近くにア〇ムの無人貸出機があるようなものだな。
でも別邸の物に手を出さなかっただけ、少しは理性が働いていたようだ。
貴族の物を盗ったなんて言ったら、即手打ちだろうから。
父さんは優しいから追放程度で済ましちゃうかもしれないけど。
そして賭場で知らぬ誰かに甘言を囁かれた。
これを馬車に仕掛ければ、借金はおろか、首都での暮らしも保証してやると。
しばらく一緒に旅をした人間を殺そうとできる心理は俺にはわからない。
でもわかるのは、このおっちゃんが爆弾なんか作れないってことだ。
この世界は魔法がある、それによる戦闘が主だし、整地なんかも土魔法でやってしまうので大規模な発破などは必要としない。
だから、火薬というものは、この世界では花火に使うくらいのニッチな道具になるわけだ。
そんなものを一御者であったおっちゃんが作れるとは思わない。
硝石と硫黄と炭を用いてなんてさ、前世でもやろうとする人はいなかった。
小説の中だけだ。
だから、そそのかされたとおっちゃんが証言したのはおそらく本当。
裏に誰かいる。
さて、誰だろう?
ってね、俺がここで考えていても世は事も無しってなもんよ。
御者のおっちゃんは特捜隊が取り調べ中、俺に出る幕はないって父さんに釘を刺されたわけだ。
仕方ないね。
それで今日は何して遊ぼうかね。
などと思いながら食堂へ来てみた。
そこには暇そうにファイアーボールでお手玉をするお転婆魔法使いが居た。
「母さん、室内じゃ止めなよ。」
「あら、あなた母様みたいなことを言うのね。」
「室内火気厳禁でしょ。もう、子供に注意されないでよ。」
「あなたが老成しているだけでしょ。でも私がまだ若いから?」
「はい、はい。」
「はいは、一回!」
「はーい。
「もう、あなたも暇そうね。」
「母さんもね。」
俺ががそう言うと、ファイアーボールは母さんの左手のひらに集まり、手のひらを握った途端に「ボン!」と音を立てて消えてしまった。
ホント、この人の魔力操作はどうかしてる。
「相変わらずお上手で。」
俺がそう言うと
「あなたのお口もお上手よ。」
と言って母さんは返す。
俺たちの会話はきりがないよな、なんて考えていたら
「アベル、デートしようか。」
「はい?」
「デートよ。街を歩きましょう。」
「父さんと行きなよ。」
「ローランドは今ダメでしょ。いいじゃないの、もうあなたと首都の街を歩くなんて無いかもしれないもの。」
「それもそうかぁ。買い物しない?」
「しない、しない、したいと思わない。」
ホントかよ。
「んじゃ、」
「ちょっと待って!」
ロッティーがそこに割り込んできた。
「アベル!ローズの次のデートは私って言ったはずよ!」
「あれ?そうだっけか?」
「そうよ!」
「でもダメよ、ロッティー、もう予約は埋まったわ。」
「母様!!」
「三人で行けばいいじゃん。二人きりじゃだめだってことはないでしょ。」
「「ダメよっ!」」
えー、めんどくさ。
「じゃあ、俺はリーサと出かけてくるよ。」
「「だめ!」」
「そう、じゃ出掛けない。庭で魔法のイメトレやってるよ。」
「「えー!なんでそうなんのよ!!」」
どこで俺は最後の提案をする。
「はい、どうせ二人っきりで歩くなんて到底無理な話なんだから、皆さんで行きましょうね。」
そう、どうせ無理なのだ、誰かしらメイドは連れて行かなければならない。
「私は冒険者の頃、ローランドと二人っきりなんて当たり前だったわ。」
母さんは口をとがらせ俺に文句を言う。
「僕ら違うでしょ。一緒にしないの。辺境伯夫人様。」
「うぐっ。」
言葉に詰まる母さんをよそにロッティーが反撃に移る。
「母様は冒険者の頃に父様とそうやって遊べたのだから、もうここは私に譲るべきよ。」
「ならロッティー、ローランドとデートしなさいよ。ロッティーのことをローランドは大好きだから、きっと喜ぶわ。」
「二人とも行かないんなら、俺とローズとリーサで行くから。」
「「なんでよ!」」
「ならみんなで行こうね。」
「「はい。」」
アホかと。
ここまで読んでいただき、有難うございます。
☆の評価ポイントとブックマークで得られる作者の栄養があります。
よろしければ、下にある☆とブックマークをポチっとしていってください。
どうかよろしくお願いします。
この作品を気に入ってくださると幸いです。