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130.アベルくんと使用人と疑惑。

130.アベルくんと使用人と疑惑。




 帰って来たのはローズ、リサ、カトリーヌ、エミの4人だけ。

 「他はまだ?」

 母さんが聞いている。


 「二人ずつ入って、順番でしたのでまだ取り調べを受けております。」

 一番年上のカトリーヌが代表をして答えた。


 「そう、慣れないことばかりで疲れたでしょう。午後は休みでいいわよ。」

 母さんは、さすがに気を遣う。


 「滅相もございません、引き続き給仕の方を務めさせていただきます。」

 だが、カトリーヌは仕事をすると聞かない。


 「めんどくさいわね。辺境伯夫人命令よ。あなたたちは休みなさい。」

 ああ、精神的には前世を引き継いでいるけど、俺はこの人に似ているんだ。


 今の母さんの発言で、強烈に自分の性格を垣間見ることが出来た。

 使用人たちの遠慮は度を超すとイラつくもんなぁ。


 「だけどごめん、一人ずつ何を聞かれたか教えて。そこだけ確認しないと、ちょっと気分が落ち着かないわ。」

 母さんが使用人たちに提案する。

 「もちろんです、奥様。なんなりと聞いてください。」


 俺は邪魔だろうと、席を外そうとしたら

 「ロッティーもアベルもここに居なさい。意見を聴きたいから。話を聴くのは私が中心。いいわね。」


 「けどいいの?」

 俺が単純に聞いていいのか聞いてみる。


 「ロッティーは法律を熟知しているわよね?」

 「まあ、法律書は覚えているわ。」


 マジかよ、この姉。

 なんでも読めばいいってもんじゃねえんだぞ。


 「アベルはいろんなことを考える力があるもの。頼りにしてるわ。」

 さようで。


 「はい、母さん。余計なことは出来るだけ言わないようにするよ。」

 「そう願いたいわね。」


 「ではこの部屋でするから、そうね、カトリーヌからにしましょう。年の順にしましょう。それもあまり関係ないけど、順番は必要だわ。カトリーヌの他は使用人の控室で待っていてね。別に怖がることは聴かないから、心穏やかに。」


 母さんがそう言うと、他の三人は居間から出て行った。

 「ミーも出て言ってね。何かあれば呼ぶから。」


 「にゃい、奥様。」

 ミーのにゃあ言葉は何が基準でにゃあになるんだろう?いまいちわからん。


 「さて、カトリーヌ、まず聞きたいことがあります。あなたの出身地は?」

 母さんは出身地から切り込んできたか。


 まあ、さっき話していたことだからね、当たり前だ。


 「私はセイナリアです。母がこちらでお仕えしておりましたので、その流れでわたしも給仕のお仕事を頂きました。」

 「ああ、そうだったわね。お義父様の時代にあなたのお母さまが使えていたのよね。」


 「そうです、その頃はまだエドワード様は近衛騎士団長でございました。」

 「うん、わかったわ。それでは簡単でいいから、取り調べで何を聞かれたか教えて頂戴。」


 そう母さんが言うと、若干緊張した面持ちでカトリーヌが口を開いた。


 「やはり出身地を聞かれました。それと事件のあった日と前日に、馬車へ近づいたことがあるかを入念に聞かれました。」

 やはり出身地は近衛騎士団も気にするところか。


 父さんの入れ知恵かもしれないけれどね。


 「その他は?」

 「その他は何も。私自身お買い物に同行していた旨を伝えただけです。」


 「そうよね、あなたも現場にいたんですものね。」


 「はい、アベル様には助けてもらいました。」

 てへっ、惚れんなよ。


 「あなたたち、何か聞きたいことはある?」

 母さんは俺たちに話を振った。


 だが


 「私はないわ。怪しいところなんてないもの。」

 「僕もないね。」


 「そう、カトリーヌ疲れているところまた緊張させちゃったわね。次の笑みを呼んでちょうだい。ああ、ちゃんと休むのよ。気晴らしに買物でも行っても良いわよ。」

 「いえ!あ、はい、では失礼いたします。」


 次のエミなんだけど、あまり知らないんだよね。

 俺に付いてくれた別邸組のメイドはクラリスだし。


 ロッティーのお付きでもないんだよな。

 リサが12歳とわりと自分で動ける年になったので別邸組のメイドは必要ないと思われたのかもしれない。

 

 「母さん、エミって母さんたちのお付きだったの?」

 「そうね、カトリーヌと二人で分担していたわ。」

 「ああ、そうだったんだ。」


 「どうしたの?何か気になるの?」

 「違うよ。あまり接触する機会がなかったから、どんな人なんだろうと思ってさ。」


 「そう。いい娘よ、とても。」

 「母さんがそう言うなら間違いはないね。」


 そう言って、お互いに口をつぐんだ。

 やっている方も緊張するんだよ。


 こんな状態で、圧迫面接できる奴らの精神状態ってどうなっているんだろうね。

 現状と全く関係ない話だが。


 んなことを考えていたらエミがやってきた。

 そりゃ顔くらいは見たことはあるよ。


 話をすることがなかっただけで。


 確か歳は18だったか。

 もう嫁に行ってもいいくらいなのか。


 目の前に座ったエミは、とても落ち着いている。

 不安な動作はまるで見せない。


 「ではエミ、いくつか質問をするわね。」

 「はい、奥様。」


 声も鈴を鳴らすような、涼しげな声だ。

 知らなかったよ、もっと話をすればよかった。


 「では、エミ、出身地は?」

 「私の出身地は南部オルディス子爵領です。」


 「南部のどの辺に当たるの?」

 「パーシー大公様の南になります。」


 「公爵は大公と呼ばれているの?」

 「南部では普通だと思いますけど。」


 大公だぁ!?あの爺、国を割って公国でも作るつもりか?


 「あなたがうちに雇われたきっかけは知っているわ。魔法大学校に金銭面で通学が難しなったのよね。アーサーに手紙で相談されたのよね。」

 「はい、あの時、アーサー様に拾っていただけなければ、今頃は公立娼館に入っているところでした。」


 娼館に入っていたら、結構稼げたんじゃないか?

 ま、それはそれ。


 「それでは取り調べで何を聞かれたか、簡単に話して頂戴。」

 「はい、かしこまりました。まず、同じように出身地を聞かれました。それと当日と前日、馬車に近付いたかを聞かれました。それから、事件当日はどこにいたか、これは私は皆さんに同行して買い物に来ていたと答えました。」


 「まあ、カトリーヌと同じね。シャーロットたち、何かある?」

 「私はないわ。」


 「僕は何点かいいかな?」

 「はい、アベル様。」

 エミは俺に微笑みを作り答えた。


 「南部のオルディス子爵領って言ったけど、それって南部のどこらへん?」

 「南部の東ですね。でも中央部よりはなれてはいません。」

 「エミのうちは何をなさっているの?」

 「私の父は、オルディス子爵です。」




 マジか!

 次回へと続く。

 

 





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