129.アベルくんと午前の紅茶。
129.アベルくんと午前の紅茶。
ミーが俺たちが座るテーブルへ丁寧にソーサーとティーカップを置いて行く。
テーブルの中央にはスコーン的なビスケットまで置いてあった。
我が家の女性陣は、お菓子に目が無いですからね。
とはいっても、今は10の鐘のちょっと前、俺も健康優良幼児。
小腹が減るのだ。
ミーにテーブル中央に置いてあるビスケットを取ってもらおうと思ったが、今ミーはポットにお茶を淹れている最中だ。
彼女に入れるお茶は家族に評判がいい。
淹れる所作も美しいのだ。
仕方ないから姉上に取ってもらうことにした。
「姉さん、ビスケット取ってくれない。僕じゃ手が届かないんだ。」
「あら、いいわよ。食べさせてあげる。」
「いや、そこまではNo Thank you.」
「なに?せんきゅーって?」
「ごめん、変な事言っちゃった。食べさせてくれなくてもいいよ。」
「アベル、私があなたにできることで、遠慮なんてするものではないわ。」
「遠慮じゃなく拒否?」
俺がそう言うと、ロッティーは俺のほっぺを思いきりつねりだす。
「あ、いてててて。やめて。やめ…」
そこまで言って、ようやく手を離したロッティーは
「私の思いを無碍にするからよ。」
そう言って、プイっとそっぽを向いた。
俺はそのロッティーを見てから、不平の目を母さんに向ける。
母さんはお茶の香りを楽しみつつ、無視を決め込む。
我が家の両親はいつもこうだ。
子供が解決すべきことは子供が解決する。
親は口出しをしない。そこは徹底している。
もちろん度が過ぎればその限りではない。
まあ、その教育方針には別に異議を唱える必要は感じないけどね。
ただ、10歳と5歳の体格差は考慮して頂きたい。
そこは切に。
と、思って母さんに不平を向けても、そこは詮無い事だ。
「姉さん、ごめんね。機嫌を直して。でもね、だいたいのことは僕でも出来るようになったんだよ。成長したでしょ。姉さん含め、皆のお陰だよ。」
俺はこういって、なんとかロッティーをなだめる。
俺が言った途端、パッと振り向いたロッティーは満面の笑顔をたたえ
「そうでしょう?私のお陰なのよ?だから、アベルは私に任せておけばいいのだわ。」
だからいいのだわじゃないって。
俺の話の捉え方を、見事に自分本位に取り換えるロッティーの頭の良さに、辟易するわけだ。
この時点で俺はなすがままなのだ。
「ちょっと確認したいことがあるんだ。」
俺はビスケットを食べさせようとするロッティーの手を少し抑え、言葉を発した。
「なに?確認て?」
母さんが訝し気に聞きかえす。
「メイドや他の使用人の中でさ、南部出身の人っているかな?」
「南部出身?ちょっとわからないわね。それがどうかしたの?」
「気にする必要はないのかもしれないんだけど、ひょっとするとってことがあってね。」
「何?気を持たすわね。」
「南部の大貴族って言ったらさ。」
「ああ、パーシー公爵ね。普段は首都に駐在しているけれど、領地は南部の肥沃な土地だものね。あなた、それを疑っているのね。」
「うん、そうじゃ無ければいいなぁとは思っているけれど。」
「そう、うかつに手を出してくるかしら、って言っても、ローランドも私も盗賊の件とかはその線しか考えられなかったのよね。」
「陛下も表向きは手を出さ以ないって言ったでしょ。ってことは裏では何かするってことじゃない。裏から手を出された分は、勝手にしていいって言質も貰っているから、勝手には出来るだろうけど。」
俺は、王子の呪詛解呪の時に、王と話し合った時のことを母さんに話した。
この時、母さんも同席していたからね、話は早い。
「陛下はそう言っていたわね。でも盗賊の件も、今回も、そうそう尻尾を出す相手じゃないわよ。」
「そうだよね。老獪って言葉が服着て歩いているような爺さんだもんなぁ。」
「どんなお爺さんなの?」
ロッティーが聞いてきたが、あまり興味はなさそうだ。
でも何が起こるかわからないから、情報共有は必要だね。
「一見好々爺って感じだね。気の良い爺さんて感じだけど、話してみると意地の悪さがにじみ出てくる感じはする。」
「スケベだから気を付けなさい。昔からね、女性を見る目つきが怪しいって有名だったのよ。私は12歳で家を出たから被害はなかったけど。」
母さん、いくらスケベでもあの爺さんロリではなかろう。
いや分からんか、公爵ともなれば、女性なら好き放題だろうからな。
アブノーマルの方向に向かうかもしれない。
「姉さん、気を付けてね!」
「う、うん。」
などと家族間で会話を交わしていたらずいぶんと時間が経った。
そして昼食の時が過ぎ、正午過ぎ
ぽつぽつと使用人たちが帰ってきた。
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