128.アベルくんとロッティーの気持ち。
128.アベルくんとロッティーの気持ち。
ロッティーは人よりかわいい顔の眉間に皺を寄せ、ふくれっ面を作っている。
「どうしたのさ、姉さん。そんな顔は似合わないよ。」
「そうね、ロッティーは笑顔の方が似合うと思うわ。」
「そんなことない。私だって気分の悪い時だってあるのよ。」
なんだ?初潮か?
「あなた、今変なこと考えたでしょ?」
母さんが鋭い突っ込みを入れる。
「いえ、全然。」
「ほら、アベルと母様はすぐそうやってじゃれあう。私の入る隙がないわ。」
「隙ならたくさんあるよ。母さんとの間なんてガバガバ。」
「なんだかそんなに言われると癪に障るわね。けど、どうしたの?私とアベルの間が原因ではないのでしょ?」
「リサのことが心配なの。あんな事件を起こすはずないのに、取り調べなんて。父様どうかしている。」
「そうね、心配よね。でも、みんなすぐ帰ってくるわよ。ここにいただけで疑われているんだもの。動機がないしね。それにリサたちの事は私たちが良く知っているわ。」
「分かっているのだけど、私は母様やアベルみたいに暢気でいられないの!」
珍しく感情を爆発するわが姉。
やっぱりあの日なんじゃねーの?
「俺だってそんなに暢気じゃないんだよ。ただここで騒いでも仕方がないってわかっているだけで。本当は姉さんだって分かっているはずなんだ。ただいつも一緒のリサがあらぬ疑いを掛けられて、傍から引きはがされたのが気に入らないんだね。」
「ああ、私の愛しい弟は、私のことを手に取るように分かるのね。」
そう言って、ロッティーは俺を抱き寄せ抱きしめる。
「なんだ、そんなことが出来るんだもの。大したことはないわね。」
母さんはそう言ってフフッとおかしそうに笑った。
抱きしめられるままになっている俺。
本当に、ロッティーのブラコンをなんとかせねばならないんじゃないの?
と、思う。
「姉さんは最初からリサを信用していたんでしょ?」
「当り前よ。私が2歳のころから一緒なのよ。彼女の私への忠誠は、疑うべきところがないわ。」
「そうだよね。だからなんでそんなに怒っているのか、それが最初分からなかったんだ。」
「でもそんな私の気持ちをアベルは分かってくれるもの。手放せないわ。ずっと一緒よ。」
この間も俺は抱きしめられている。
母さんはそんな俺を面白がって見ているだけだ。
「手放してくれなきゃ困るんだけどね。」
「なぜアベルは私が気持ちよくアベルと接しているたびにそんなことを言うの?理解できないわ。」
「理解してくれないと困ります。」
「そんな意地悪は今必要ないのよ。こうしてアベルは私の腕の中に居ればいいのだわ。」
いいのだわじゃねぇんだけどな。
「とりあえず落ち着いてくれる?喉乾いちゃったよ。」
「あら、ごめんなさい。そうね、私も乾いたわ。」
俺たちがそんな会話をしていると、母さんが傍に控えていたミーに向かって
「ミー、お茶の用意を。」
と、告げ
それを聞いたミーは
「分かりましにゃ、奥様。」
そう言って厨房へ向かった。
「今日はミーはいるんだね。」
俺が母さんに向かって言うと
「そうね、みんな居なくなると不便だもの、分けてもらったのよ。」
と、母さんが返してきた。
「そういえばさ、母さんて家事出来るの?」
俺は疑問を投げかける。
「で、出来るわよ。冒険者長かったですもの。家事ぐらいできるわよ。」
「へー、さすがだね。料理、掃除、洗濯全般できるんだね?」
「そ、そうよ。あ、当たり前でしょ。」
なんだか母さんは動揺しているようだ。
「僕は父さんに全部やらせていたのかと思ったよ。父さん器用だしね。」
「私もそう思っていたわ。」
ロッティーも同意する。
「ローランドは何させても上手なのよ。自分で進んでやってくれたし。でも私もやったのよ。」
誰もそこまで聞いていない。
「そうか。流石だね。でもさ、こうして生活している分には、家事スキル必要ないものね。」
「そうね、冒険者の頃から比べれば、楽しちゃって悪いと思っちゃうくらいだわ。」
「「へー、そうなんだ。」」
奇しくもロッティーと俺の返事が重なった。
追い詰めると豹変する。
ここくらいにしておくか、と思うアベルであった。
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