127.アベルくんとセイナリア特捜隊。
127.アベルくんとセイナリア特捜隊。
父さんが王城に行って折衝を行い、件の爆弾事件を捜査すべく特捜隊が設立した。
もちろん緊急かつ即席の部隊であるんだけどね。
内訳は、責任者としてローランド・ヴァレンタイン辺境伯。
その執事ヨハン。
ヴァレンタイン辺境伯領騎士団長チャールズ及び団員4名。
団員は10名じゃなかったかと思う向きもいるかもしれないが、他の5名は別邸の護衛だ。
ヴァレンタイン辺境伯領からはこれだけ。
ノヴァリス王国近衛騎士団副団長アレクシス・カヴァリエ及び近衛騎士団員4名。
セイナリア騎士団長バルド・レグナート及びセイナリア騎士団員9名
総員22名という編成になった。
広いセイナリアを網羅するには少なく見えるかもしれないが、でもこんなもんでしょう。
しらんけど。
父さんが集められる最大限の人数がこの人数ともいえるし、王城が譲歩できる人数がこの人数ともいえるのだろう。
父さんはパーシー公爵を見事抑えたような口ぶりだったけど、そりゃ王家としてもバランスはとるわけでね。身内に対しては気を使うんだろうと思っている。
あの陛下の腹の中なんて、探りようがないしね。
宰相の爺ちゃんも狸だし。
主に現場付近の聞き込みになるんだろうから、この人数でも構わないと言える。
聞き込みだけじゃないね。
我が家に近いものと、容疑者が居れば取り調べ。
容疑が深まればその裏付け調査。
地味な雑務が多いんだろうな。
うちの領地の連中と、セイナリア騎士団は聞き込みだろう。
セイナリア騎士団は街に詳しい。
では、近衛騎士団は?
取り調べと裏付け調査だ。
近衛騎士と言う階級という特権が物言うんだ。
下手な貴族すら応じなければならない、その階級にね。
でね、取り調べが既に始まっているんだ。
うちの使用人たちのね。
馬車に爆弾を取り付けるのが簡単に可能なのはうちの使用人に見えるのは仕方ないことだ。
俺としてはみんなが好きだからね、疑いたくはない。
けど、この決定を下したのは父さんだ。
俺がどうこう言える立場じゃないんだ。
取り調べはセイナリア騎士団の詰所で行われている。
流石に、この別邸や王城で行うわけにはいかないからね。
使用人の少ない別邸は、何処か静かだった。
「母さん、取り調べはもう始まっているの?」
俺は今でくつろいでいた母さんに取り調べの事を聞いてみた。
「アベルは興味あるの?でもそのことより、右腕が早くまともに動くようにしなきゃね。」
腕のことをだしにつかい、上手くはぐらかそうとする。
「興味はあるよ。この右腕の原因だからね。それでも使用人たちに疑いを掛けなければならないのは、気が引けるよ。」
「あなたはみんなに優しいものね。それでも調べるべきことは調べなければならない。これは貴族としての示しでもあるわ。」
「分かっているつもりなんだけどね、使用人のみんなの僕らにかけていた態度が嘘には思えないんだ。」
「そうね、メイド達も、アーサーもとてもあんなことをするとは思えない。でも誰かがやった。この中に居なけれ良いわね。私もそう思うわ。」
「ところで姉さんは?」
「リサを送り出してから部屋にこもっているわ。自分のお付きが疑われるのはいい気分じゃないでしょうね。あなたは平気そうね?ローズの事は心配じゃないの?」
「ローズがこんな大それたことをするわけないしね。僕らを殺そうとするなら、今までだっていろんな方法を取れたんじゃない?」
「ヴァレンティア組のメイド達はね。」
「疑うべきは別邸組って事になるのか。」
「分からないわよ。アーサーを含めてそんなことをするとは思えないもの。」
「そうだね。普段の彼らの行いはそんなふうに見えなかった。それを見てきた自分を信じなきゃだね。」
「そうね、人を見極めるのはとても難しいことだけど、信じ続けることも難しいわ。でもそれしか出来ないものね。」
「母様とアベルはいつも仲が良いわね。」
何故か不機嫌そうにロッティーが現れた。
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