126.アベルくんと別邸での静かな夕食。
126.アベルくんと別邸での静かな夕食。
そんな会話をしながら食堂に入ると父さんが既に帰っていた。
ちょっと疲労しているのか、盛んに首を気にしている。
肩こったのかね、まあ、貴族のお歴々とやりあうならそれは分かる。
「父さん、帰っていたんだね。お疲れさま。」
「うん、ちょっと疲れたよ。やっぱり王城での折衝っていうのは、僕の仕事ではないなって思うよ。」
父さんは疲れた顔を笑顔に戻し俺に返事をくれる。
「そんなに大変だった?」
「まあね、先触れなしで王城に行くものじゃないね。でも、捜査の協力は得られるようになったよ。」
「流石だね、父さん。」
脇で話を聞いていた母さんが口を開いた。
「アベル、またローズを泣かせたわね。」
それに婆ちゃんが追随する。
「あら、アベル、今朝の話を聞いていなかったのかしら?」
「婆ちゃん、今日は泊まるの?」
俺は強引に話を変えた。
「そうよ、あなたたちが心配だから。」
優しい婆ちゃんはそれに乗ってくれる。
「アベルごまかすんじゃありません。」
母さんは乗ってはくれないようだ。
厳しい視線を俺に送る。
それを見た父さんは、やれやれという感じで首を振った。
「はい、母さん。今回はね、お互いの将来のことを話してたら、ローズが泣いちゃったんだよ。」
「将来の!どういうこと?」
母さんが大げさに驚く。
「アベル、まさか!」
ロッティーが下衆な勘繰りをしてくる。
まあ、気持ちは分かるが。
「もうこの家から出なって言ったの。俺のお付きなんてやっていると危ないし。それにローズは良い娘だから、僕が成人まで一緒に居たんじゃ、行き遅れちゃうでしょ。その前にこの家を出て、もっと広い世界を見つけたら良いんじゃないかって言ったら、泣いたのさ。」
そして母さんが口を開く。
「そりゃローズは泣くわよ。ねー、ロッティー。」
「そうね、ローズは泣くわ。だってアベルのことが好きだもの。」
ロッティーも知っているよな。そりゃそうだ。
「アベル。何も一夫一婦に縛られる事はないんだぞ?お前の好きなようにお嫁さんはもらっていい。僕とアリアンナは出合い方が貴族世界の普通とは違うから、お互い他には要らないけどね。」
父さんまで。
こりゃ、俺がほだされるパターンじゃないか。
「分かったとりあえずこの話は無し。僕もまだ5歳だしね。ローズもまだ10歳だ。まだ時間はある。」
「そうね、まだ時間はあるわ。あなたの正室が誰になって、側室が誰になって、妾まで囲ってとか、楽しみね。」
「母さん、やめてよ。5歳の僕に言う事じゃないでしょ。」
「あなた、ちゃんとわかって話してんじゃない。」
「そうだけども!まだ5歳!!」
そう言っている最中も、ミーたちは皿を並べ、食事を並べて行く。
エレナが居ない。
まあ、俺の悪口をローズと二人で話しているんだろう。
「さあ、食べようか。」
父さんの合図で皆が食べ始める。
「アベル、珍しく静かじゃない。」
母さんが俺をいじる。
「今喋ると、また母さんたちを怒らせるようなことを言うかもしれないから、静かにしているんだよ。」
「あら、良い心がけね。毎日続けてもらえると助かるわ。」
「うん、だから黙って静かに食べるよ。左で食べないといけないしね。」
「ああ、そうね。ごめんね。気付いてあげれなかった。」
「構わないよ。慣れればいいだけだから。」
「アリアンナ、安心して。状態が良いからすぐよくなるわよ。明日、明後日にはね。」
リーサが完治予定日を告げた。
でも、そりゃありがたいね。
「そう、ちゃんとしたお礼が言えてなかったわね。リーサちゃん、ありがとう。アベルを助けてくれて。」
母さんがそう礼を言うと
「僕からも礼を言うよ。アベルがここで一緒に食事が出来るのは、リーサちゃんのおかげだ。どうもありがとう。お礼はどうしようか?」
と、父さんも礼を言う。
「それならもうアリアンナに言ってあるわよ。」
リーサがそう言うと
「ビスケットって話?それだけじゃ申し訳ないわよ。何かほかに欲しいものない?」
母さんがリーサに尋ねる。
「なんでもいいの?」
「ええ良いわ。」
「じゃ、アベル。」
「「ダメよ!!」」
母さんとロッティーが否定した。
そのあと俺と父さんを蚊帳の外に、騒がしく食事が続いた。
おっと、サブタイ回収してないね。
テヘッ
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